ヘルスケア
2019/05/18

男性ホルモンは女性にとっても大切!『テストステロン』とは?

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「テストステロン」は男性ホルモンの王様です。いわゆる男らしいたくましい体や、積極性や冒険心などを作っています。実は女性も卵巣からテストステロンを分泌しています。そして女性ホルモンはそのテストステロンを原料にして創られているのです。特に、閉経後に女性ホルモンが激減した女性にとっては「テストステロンが元気を支えるのに重要」と注目が高まっています。今回は、男性医学の権威である熊本悦明先生に、女性にとってのテストステロンについて教えてもらいました。

テストステロンは元気ホルモン

『男性ホルモン』『女性ホルモン』という呼び名が誤解を招くのですが、男女共に両方を持ち合わせています。それぞれの大きな特徴はこんな感じです。

女性ホルモン

生活を守る内向きの役割/子供を産み育てるために必要な『愛情ホルモン』

男性ホルモン

外向きの役割/子供を養う食べ物を集め、住まいを創り、襲いかかる外敵を排除するといった生活力を支える『元気ホルモン』。

女性は女性ホルモンが多いのは当然ですが、外向きの男性ホルモンもある程度は持たなければ子供は育てられません。男女では量や比率は違ううえに、個人差があります。目には見えませんが、体内の性ホルモンのバランスが、心身にさまざまな影響を与えているのです。

アメリカでバリバリ活躍しているキャリアウーマンのテストステロン値を調べたところ、専業主婦よりも高いことが分かりました。また、女性に男性ホルモンを投与した後に、お化け屋敷に行ったら、通常より驚き方が弱くなったというおもしろい研究もあります。他にも、テストステロン値の高い女の子は、幼少期から積極的でアグレッシブといった報告はたくさんあります。女性の元気さにはテストステロンが関係しているのは間違いないと言えそうです。

女性の好調も、テストステロンが関与

あまり知られていませんが、女性の排卵日は絶好調という事実があります。妊活中の方なら、その前後2、3日が勝負日なのは常識かもしれません。卵胞期の約1週間後には、女性ホルモンがピークになり排卵日を迎えますが、女性ホルモンの原料であるテストステロンも同時にピークを迎えています。女性ホルモン作用で肌や髪の調子がよく、優しく穏やかな女性らしさに加えて、男性ホルモン作用で行動力がみなぎっています。試験や大切なイベントをこの日にぶつけると上手くいく確率はアップするはずです。さらに、最近では不妊治療にもテストステロンが使われています。卵子のまわりに顆粒細胞層があり、そこでテストステロンを原料に女性ホルモンが作られて、卵子の成熟を促すという仕組みです。この外来は予約がとれないほど人気になっています。

女性更年期とテストステロン

性ホルモンは加齢や強いストレスの影響で減っていきます。女性の場合は、閉経でガックと女性ホルモンが減りますが、同時にテストステロンも減少していきます。元々、女性のテストステロンは男性の5~10分の1程度。それすらキープできなくなってしまう方は、とりわけ元気が奪われます。

私の外来にも更年期でお悩みの女性が、しばしば訪れます。テストステロン値を調べて、かなり低下している方にはテストステロン補充を行います。すると、「何もする気が起きなかったのに、仕事に前向きに取り組めるようになった」「パーティで一晩中踊れるようになった」など、みなさんみるみると元気を取り戻されています。

「女性のテストステロン補充治療」の誤解

しかし、一般的な産婦人科の先生は、「女性の更年期症状改善にテストステロン補充には男性化の副作用が強く出る」と、反対されている方がほとんど。その治療報告をよく見ると、男性ホルモンの極端に低い類宦官症という病気の男性への治療と同じような多量のテストステロンを投与していることが分かります。それでは男性化するのも当たり前。女性には女性に合わせた投与量での慎重な治療が鉄則です。治療をはじめると皮脂の分泌が活性化するので、稀にニキビが出ることがありますが、他の副作用は報告されていません。

女性泌尿器科医師も実践する「テストステロン補充」

私の友人の泌尿器科医の関口由紀先生が、ご自身の更年期障害をテストステロン補充で克服したエピソ―ドをご紹介しましょう。関口先生は外来で、性欲減退に悩む女性、性同一性障害で女性から男性に性別別変更した「FTM (female to male)」の方にテストステロン補充を行っています。多忙な日で更年期うつに悩まされるようになったと言います。ですが、乳房がんサバイバーであることから、女性ホルモン療法はリスクが高いためNG。そんな時に、長年クリニックでテストステロン補充をしている同年代のFTMの方と、自分の体内性ホルモン環境は同じではないかと思ったのをきっかけにテストステロン補充を開始。すると、それまで何年も抗うつ剤では改善しなかった更年期うつが約2ヶ月で全て消失。以前から行っている週2回筋トレではトレーナーが驚く程、筋肉量が増量。全身倦怠感もなくなりました。「女性でも、更年期からはテストステロンです」と仰っています。

人生100年時代の攻めの健康法

女性特有の泌尿器科系の疾患にも、女性ホルモン減少だけではなくテストステロン欠乏が関わっているのです。関口先生の外来では性機能障害、更年期障害などで、「生きる意欲が減退」、「持続する全身倦怠感」、「性機能が悪化」の3つの症状が女性ホルモン補充治療で改善が見られない場合に、細かなカウンセリングやホルモンチェックを行い、必要だと判断すればテストステロン補充を行っています。試された患者さんは、その効果を実感されています。今後、閉経後の女性へのテストステロン補充治療の有効性は、今後より明らかになっていくでしょう。更年期以降の元気のない女性にテストステロン補充が大いなる福音になることが、もっと世の中に知られるようなるといいですね。

お話をお伺いしたのは

熊本悦明先生

熊本悦明先生

1929年、東京生まれ。東京大学医学部卒業後、カリフォルニア大学ロサンゼルス校に留学。札幌医科大学医学部秘尿器科学講座主任教授を務め、わが国の男性医学のパイオニアとして研究を重ねる。札幌医大名誉教授の後、財団法人・性の健康医学財団会頭。日本メンズヘルスクリニック東京名誉院長。満90歳近い現在もわが国の男性医学のパイオニアとして研究を重ね、日本の男性医学の父とも呼ばれている。現在、東京丸の内の「メンズヘルス東京」で、名誉院長として中高年男女のフレイル治療・生活活力増強に、精力的に診療を続けている。
著書「『男はなぜ女より短命か ?』( 実業之日本社 )、『さあ立ち上がれ男たちよ! 』(幻冬舎新書、『熟年期障害』(祥伝社新書)

取材・文 熊本美加

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