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【来日インタビュー】ラグジュアリールームフレグランスブランド「リナーリ」創業者に聞く、ブランドストーリーと国内外市場

【来日インタビュー】ラグジュアリールームフレグランスブランド「リナーリ」創業者に聞く、ブランドストーリーと国内外市場

「素晴らしい空間には至高の香りが不可欠」という想いの元、2003年に創業されたドイツ発のラグジュアリールームフレグランスブランドhttps://linari.jp/。2022年には世界初のフラッグシップストアが東京は表参道にオープンし、香りと光と音楽による心地よいルームフレグランス選びの場を提供しながら、日本市場におけるルームディフューザーの価値を高めている。今回は、3年ぶりの来日となったファウンダーのレイナー・ディエシェ氏に、リナーリが誕生したバックグラウンドや、ヨーロッパと日本のルームフレグランス市場の違い、新作のフレグランス(香水)となる「リナーリ オードパルファム シェード オブ レザー」について、LINARI 表参道にて聞いた。


香水ジャーナリスト YUKIRIN(以下、YUKIRIN):大学でのプロダクトエンジニアリングや建築の勉強、そしてモデルとしての活躍がおありですが、「素晴らしい空間には至高の香りが不可欠」や「ルームフレグランスには香りそのものだけでなくそれを収納するパッケージのデザイン性も重要」と感じたきっかけは?

リナーリ創業者レイナー・ディエシェ氏(以下、レイナー):私はエンジニアリングがバックグラウンドだが、デザインやフレグランスにとても興味を持っていた。店舗を経営した経験を経て、何が足りないのかを考えていた時、空間には光やパッケージだけでなく、フレグランスも必要だと考えた。20年前は、ヨーロッパにおいてもルームフレグランスのマーケットは大きなものではなかったので、チャレンジしようと考えた。プロダクトエンジニアリングに関するテクニカルな勉強はしてきたので、その発想と技術を組み合わせたらいいのではないかと思った。商品開発には、プロダクトエンジニアリングの勉強が役に立った。

YUKIRIN:ここ3年ほどの間に、日本でも香水やルームフレグランスへの熱が急加速しているが、10年程前は日本ではフレグランス市場が小さく、ルームフレグランスへの興味や注目度も非常に低かったが、ヨーロッパのルームフレグランス市場はどうだったか?また、リナーリを始めるにあたり、高価格帯でのルームフレグランスを展開することについて、創業当時から勝算があったか?

レイナー:確かにヨーロッパのルームフレグランス市場は大きいが、実はルームフレグランスに関しては伝統的なものではない。イタリアだったら修道院でのポプリづくりなどがブランド化したなどの歴史もあるが、特にルームディフューザーは違う。インテリアに香りを取り入れる発想自体があまりなく、ヨーロッパでも20年前~10年前くらいまではそこまで大きな市場ではなかった。今となっては人気のアイテムになったが、スティックを刺すルームディフューザーに関しては、ヨーロッパ発祥のものではあるのだが、世間ではキャンドルの方が圧倒的に支持されており、市場も大きく馴染み深かったと思う。スティックという意味では、お香を使う国の方がディフューザーに近しいものを感じやすいのかもしれない。創業当時は考えていなかったが、伝統的という意味においてはアジアの方が近いのかも?リナーリが成功した理由も、そうではないかと思う。日本は香水を使う文化が広く一般的とはなっていなかったかもしれないが、ディフューザーには引きがあったと感じる。自分自身もラグジュアリーが好きだし、価値観がそうだからこそラグジュアリーなディフューザーを作りやすかった。自分も使いたかったものを商品にしたというところだ。

YUKIRIN:ルームフレグランスの種類としてキャンドルもあるが、スティックタイプのロングディフューザーにこだわった理由はあるか?

レイナー:確かにキャンドルも良いし、リナーリでもキャンドルを作っているが、ロングディフューザーでブランドを確立したかった。今も全体的にはディフューザーの方が売り上げも伸びている。ディフューザーは火を使わないので、家庭に取り入れやすい。そのまま置いていただくだけでいいのが魅力だ。

YUKIRIN:リナーリでは、どの香りも廃盤にしていないと聞いたが、最初に創られた製品と香りはどれか?どんなこだわりがあったか?

レイナー:「AVORIO(アボリオ)」と「RUBINO(ルビーノ)」が最初に創った香りで、20年経った今でもベストセラーなんだ。当時はフルーツの香りのルームフレグランスが市場に少なく、作りたいと思った。最初から「まるで香水のような香りのクオリティ」でルームディフューザーを創りたかったので、香水を作っているパフューマーに依頼した。今でもリナーリの強みは、商品のビジュアルではあるが、50%の成功は香りのクオリティだと思う。いくらボトルデザイン素晴らしくても、香りが良くなければ支持されない。そこに強いこだわりをもっているし、一度香りを試したら必ずお客様は戻ってきてくださる。香りは無意識で脳に届き、生活の大事な一部だ。香水は肌につけている時間だけだが、ルームフレグランスは部屋に置いてからずっと香り続けるので、香りを感じるスパンが長い。できるだけ長く楽しんで欲しいので、新しい香りを発売するときは、ロングラスティング、長いスパンで香りを楽しめるように考えている。ルームフレグランスは気に入ったら、ずっと使い続ける人も多い。香水ほど頻繁に変えず、何なら20年も香りを変えない人もいるほど、暮らしに溶け込んでいると言える。

YUKIRIN:起用した各パフューマーはどのように選んでいるか?

レイナー:実は、複雑な構成をするパフューマーを選んでいる。自分がシンプルより複雑な香りが好きだから。パフューマーたちにはそれぞれ特徴があるが、創りたい香りに誰が一番マッチしているか考え、自身の広いネットワークを活かして依頼している。パフューマーによっては、香料の組み合わせを増やしていくタイプと、減らしていって違う方向に持っていくタイプがあるが、自分にアイデアが生まれて香りの特徴が決まったら、パフューマーのタイプを考えて候補を絞っていく。しかし、すぐ見つかる時もあれば、一向に見つからない時もある。そうして、結局完成に至らず眠ったままの香りもある。できるだけ眠らせないために、複数の香りのプロジェクトを同時進行するようにしている。

YUKIRIN:なぜ世界初の旗艦店を、本国(ドイツ)でなく日本でオープンすることになったか?

レイナー:日本は大事な市場であり、リナーリの中で最も成功していると言っても過言ではない。東京にいつか店舗を出したいと思っていたし、夢でもあった。リナーリが日本に上陸してから、多くのお客様に愛されてきた。日本のお客様は、高い品質へのこだわりや、細かな点を評価する人が多く、微細なポイントにもこだわりをもっている。ミニマムというコンセプトが、日本人の好みと合っているのかもしれない。日本のマーケットのおかげで、リナーリがブランドとして成長しているとすら言えるだろう。日本で成功すれば、世界でも成功するのではないか。

YUKIRIN:海外では香りの構成より、その香りを嗅いでどう感じたかの感想を重視するが、日本では、何の香りが使われ、どう構成されているかのロジックを気にする人が多い。これは真面目な日本人らしいアプローチだがどう思うか?

レイナー:確かに、ヨーロッパでは香りをどう感じるかが重視されているが、最近はどんな香料を使っているかなどの成分にこだわる人が増えており、そういう意味では日本と近くなっていると思う。

YUKIRI:フラッグシップストアのコンセプトやこだわりのポイントは?

レイナー:コンセプトは、目に見えないものだからこその「香りと空間と音楽のマッチング」、シナスタジア(=共感覚)だ。お客様には、良い香りと音楽の在る居心地の良い空間で過ごしていただきたい。現在店内で流しているクリスマスソングも私自身がピックアップしたプレイリストだ。いつも、音楽と香りを結び付けて考えている。ライトと音楽と香りが、この世界観を作っている。ウェーブ型の陳列台はフレグランスを見やすく、居心地の良さを考えた。ついつい長居してしまうような店舗でありながら、シンプルでミニマリストな環境を作った。

YUKIRIN:日本での人気の香りと、本国での人気の香りに違いはあるか?

レイナー:実は、最近はそんなに違いがなくなってきたんだ。「ESTATE(エスタータ)」、「OCEANO(オセアノ)」など日本で人気の香りは、世界でもトップセールスに入っている。フルーツっぽい香り、例えば「AMARENA (アマレナ)」などはアジアで成功しやすいし、紅茶の香りは日本でもヨーロッパで人気が出てきている。ヨーロッパでは、香りをジェンダーで選ぶ傾向が意外とまだあり、ルームフレグランスの決定権は70%が女性だと言われている。しかし日本では、家族やパートナーも好きな香りか相談をしてから買う傾向がある。紅茶の香りはジェンダーを超えて選ばれやすく、嫌いな人が少ないから取り入れやすいようだ。

YUKIRIN:店内にある体験型の「香り」と「音楽」の"傘"「フレグランス シェード」では、シェード内に流れる音楽のセレクトはレイナー氏がセレクトしているとのことだが、曲選びはどのように決めているか?

レイナー:説明が難しいが、見えないものだからこそ、自分自身が想像していることや感じていることを音楽のセレクトに投影している。香水と同じで、音楽も好き嫌いがあると思うが、自分が香りに関して感じていることを表現できる音楽を選んでいるつもりだ。あとは、過去に感じた思い出を音楽で表現していることも多い。香りの好き嫌いは、音楽の好き嫌いと同じくらい個人差がある。個人的にはチルアウトミュージックが好きだ。ルームフレグランスは家に戻ってリラックスしている時にあるものだから、フレグランスを楽しめる環境にあう音楽を選んでいるよ。

YUKIRIN:毎年冬季限定で発売する香り「NATALE(ナターレ)」シリーズから、今年、表参道限定で新登場した「ナターレ ガーデンキャンドル」についてはどうか。(ちなみに私はナターレの香りが一番好き)

レイナー:最近は、大きなキャンドルを使う方が増えた。小さいサイズより存在感があり、香りの濃さが強く感じられるからだ。キャンドルは店頭で販売する際は焚いていないが、大きいとよく香るので、お客様が購入したい気分になりやすく、選ぶ基準になりやすい。通常だとワックスを使うが、香りをつけることによって実は燃えにくくなる。香り成分が強すぎると燃え方がきれいにならない問題があるし、ちょうどいいバランスを見つけるのが難しい。そのバランスがいいのが良いキャンドルと言える。非常にテクニカルだ。芯が正しい位置であるかが大事で、表面が全体的に香るようにせねばならない。熱くなり過ぎないようにとかね。2年前くらいから、大きいキャンドルを使う傾向が市場に増えた。家具と同じ感覚で、インテリアのオブジェとして支持されている。ドイツのクリスマスはフェスタ並みで華やかだが、キャンドルに関しては香りを強くしすぎないようにバランスをとっている。「ナターレ」は、シーズンだけの商品とはいえ使うほど好きになる人が多いように感じる。お客様自身もクリスマスの気分なので、オレンジやナッツを感じる香りを楽しく感じるのだろう。クリスマスと紐づけた香りを、ボトルにつめてお届けするようにしている。

《NATALE -ナターレ》

「ルームディフューザー」500ml 税込 21,780円
「ルームスプレー」100 ml 税込 9,680円
「フレグランスキャンドル」1000g 税込 20,900円(LINARI 表参道 限定発売)

トップノート:オレンジ、アーモンド、アルデヒド
ミドルノート:ライラック、カーネーション、フリージア、ジャスミン
ベースノート:バニラ、シナモン、ムスク


YUKIRIN:新作のオードパルファム「シェード オブ レザー」についてはどうか。

レイナー:レザーノートのオードパルファムを創りたかった。自分は強いレザーノートは苦手で、女性も纏えるようなレザーの香りにしようと考えた。ジェンダーフリーには創っているが、どちらかというとややメンズライクな香りだとは思う。

YUKIRIN:トップはカルダモンやサフランのスパイシーさがあるが、どこかに甘さも感じる。そして森で風が吹き抜けるような感覚も感じる。

レイナー:それはアラビアンジャスミンの甘さだね。何か余韻がヴェールとなって後に残るような香りになっていると思う。実は、日本に来る前に歯医者に行った時、この香りを纏っていたらその場にいた女性たち全員から「素晴らしい香り」と褒められた。特に通り過ぎたり去っていく時に、良い香りと感じてもらえたようだ。この香りを纏って欲しい男性に、女性からギフトとして贈るのもおすすめだ。

2022年11月19日(土)先行発売(LINARI 表参道・公式オンラインショップ)
2022年11月23日(水)一般発売
『リナーリ オードパルファム シェード オブ レザー』

(100mL、税込22,990円)
パフューマー:ジェローム・ディ・マリノ (J?r?me di Marino)
トップノート:カルダモン、サフラン
ハートノート:レザー、アラビアンジャスミン、シダーウッド
ベースノート:アンバー、パチョリ、モス、アニマルノート

YUKIRIN:2003年の創業以来、来年はブランド創立20周年になるが、20周年に込めたメッセージや、日本のファンにメッセージはあるか。

レイナー:さらに20年、リナーリができるようにしたいね(笑)。20年経った今も、伸び続けている実績があるので、やっとブランドとして大人になってきたのかもしれない。古いブランドに比べれば20年と歴史は浅いが、ブランドとして成り立って、ようやく認めていただけるようになってきたと感じている。日本にはいつもインスパイアされていて、新しいプロダクトにも反映されるかもしれない。内容はまだ秘密だけどね(笑)。



★LINARI 表参道


東京都渋谷区神宮前4-15-4 YC表参道第3ビル1F
営業時間 11:30~19:30
※年末年始の休業日は店舗へお問い合わせください
電話:03-6438-9625
公式サイト⇒ https://linari.jp/
公式Twitter ⇒ https://twitter.com/LINARI_omosan

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★YUKIRIN 公式Instagram
毎月第一土曜日の22時からは、フレグランス専門インスタライブを配信中。
https://www.instagram.com/fabgearyukirin3/


★YUKIRINのWikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/YUKIRIN

★連載:WWD 香水ジャーナリスト連載
https://www.wwdjapan.com/author/yukirin

★連載:FASHION SNAP「WEAR PERFUME」
https://www.fashionsnap.com/article/wear-perfume-osmanthus/

★連載:ウェブマガジンCheRish brun.「フレグランス短編小説集 魔法の香り手帖」
https://cherishweb.me/author/yukirin

★YUKIRINが香りのディレクションに携わった、ナチュラルケアシリーズ『Moii』
https://www.lebel.co.jp/products/series/moii/

★ナチュラル&オーガニックコスメの連載はこちら
集英社OurAge「ナチュラル美容ニュース」

https://ourage.jp/column/writers/writer/yukirin/

★YUKIRINがプロデュースする、ナチュラル&オーガニック美容プロジェクト
『GREEN BEAUTY SESSION』

https://www.instagram.com/greenbeautysession/

★YUKIRINの公式ページ
http://www.fab-gear-yukirin.com/


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コメント(2件)

  • コメントありがとうございます^^ リナーリはラグジュアリーディフューザーという、新たなカテゴリをヨーロッパで成功させた経緯が今回レイナー氏から伺えて、私自身も非常に勉強となったインタビューでした。世界初のフラッグシップストアは、ディフューザーだけでなく香水やキャンドル、フレグランスソープなども置いてあり楽しいですよ。ぜひ機会ございましたらお訪ねくださいませ♪

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    2022/11/28 20:56

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  • LINARIはルームフレグランスという枠踏みを超えたラグジュアリーな香りですよね。
    世界初のフラッグシップストアが東京にオープンしたことは全く知りませんでしたが、一日本人として非常に嬉しいことですね。
    創業者レイナーさんのルームフレグランスや香りに対しての思いや制作に関するお話が聞けてとても興味深い記事で楽しく拝読させていただきました。ありがとうございます!

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    • 更新する

    2022/11/25 23:28

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