
1999年に誕生した@cosme。日本のビューティシーンとともに歩んできた@cosmeは、2019年12月3日(火)、20周年を迎えます。独自のこだわりを持つ「@cosmeベストコスメアワード」の変遷について、設立当時のメンバーであり、生みの親でもある、弊社取締役の山田メユミにインタビューしました。
@cosmeのはじまりは、趣味で始めたメルマガ

――今年20周年を迎える@cosmeですが、スタートのきっかけを教えて下さい。
@cosmeを立ち上げる前、私は化粧品会社の商品開発部で働いていました。
当時はちょうどiモードサービスがスタートする直前で、まだまだインターネットが世のなかに普及していない時代。商品を開発しても、自分のお小遣いのなかから実際に商品を買ってくれたユーザーさんに出会うのはとても難しく、生活者のリアルな声が聞こえないことにもやもやしていたんです。
ちょうどそのころ、趣味で個人のメルマガを始めました。化粧品会社に勤めているけれど、一切の利害関係がないことをオープンにしながら、「試してみてこれが良かったよ!」「こんな人に合うと思うよ」という情報を発信したのです。そのうち、購読者の方々から予想外に大きな反響をいただくようになりました。
どんどん増えていく購読者からの生の声。それらをインターネット上で集約できないだろうか…と思って生まれたのが、@cosmeです。これからインターネットが浸透していくなかで、間違いなく生活者の声が届きやすく支持されると確信しましたね。
最初はクチコミに対してネガティブなイメージを持たれていた

「いちばん初めは、メルマガ購読者のなかから協力してくださった約10名の女性と一緒に初代@cosme編集部を作りました」
記念すべき第1回目の「@cosmeベストコスメアワード」が発表されたのは、創設してから1年後の2000年。当時のタイトルは「@cosmeメンバーが選ぶ! 2000年ベストコスメランキング」。企画のひとつとしてスタートしました。
@cosmeに寄せられたクチコミの統計を集計し、今年のベストコスメはこれ! というコンテンツで発表しました。ユーザーさんたちにはもちろん、化粧品業界のみなさんに対しても、インターネットやクチコミの重要性をお伝えしたかったんです。
ただ、当時はオフィシャルサイトを持たないブランドさんも多かった時代。インターネットそのものやクチコミサイトに対してネガティブなイメージを持たれることが多く、「@cosmeにうちの商品情報を掲載したくない!」というブランドさんもいらっしゃいましたね。
そこで、クチコミで匿名性ではあるけれど、投稿をきちんと一件一件ガイドラインに沿って管理したうえでランキングをつくっている、という@cosmeのポリシーをしっかりと説明しました。
いかに中立で公正なサイトであるかを各ブランドさんにお伝えすることで、@cosmeの存在を少しずつ認知していただき、新製品の情報をいただいたり、発表会に呼んでいただいたりすることが増えていきましたね。
それでも、外資系ブランドを含めて、ほぼすべての会社から情報をいただけるようになるまでには10年かかりました。
ベストコスメの選定方法は社内でも非公開

「@cosmeベストコスメアワード」をつくるうえで我々がもっとも意識したのは、生活者中心のランキングであること。
美容のプロから見て素晴らしい商品があったとしても、それがコストパフォーマンス的に見てどうなのか、携帯性はどうかなど…@cosmeはあくまでも自らのお財布から購入しリアルに使う生活者視点でベストコスメを選定しています。
また、@cosmeのベストコスメアワードを設立して以来、会社としての私意は一切なしで選定するということを徹底してやってきました。@cosmeの中立なランキングは、厳正した様々なノウハウの積み上げで出た結果です。
そのため、ベストコスメの選定は社内でも一線を引いています。選定方法や選定条件は毎回見直され、ランキングを導き出すロジックを知るのは、社内でもごくわずかな社員のみ。誓約書にサインをして、秘密を洩らさないという約束をしてから初めて、どういうロジックで集計しているかを知ることができます。
きっかけはクチコミ! @cosmeで生まれたヒット商品
――いままでのベストコスメのなかで、思い出に残っているコスメはありますか?
もうひとつ、ヘアオイルの『大島椿(ツバキ油)』も欠かせません。『大島椿(ツバキ油)』といえば、おばあちゃんの鏡台にあったようなちょっとレトロな商品で、当時はそこまで認知度が高くありませんでした。
そんななか、@cosme内では「お風呂のなかでパックするといいよ」というクチコミが寄せられるように。そこから「髪がツヤツヤになった」「髪が元気になった!」など、べた褒めする声がどんどん増えて、ひとつのムーブメントになり、2001年にはベストコスメのヘアケア部門1位を受賞しました。
クチコミがあるからこその商品に出会えるのは、ネットならでは。生活者主導のマーケティングを体感した経験として、このふたつの商品はとくに思い出深いですね。
リアルな生活者視点でのベスコスを貫く

――今後の「@cosmeベストコスメアワード」に期待することは何ですか?
やはり、リアルな生活者視点によって構成されているベストコスメというのは、プラットフォームである@cosmeだからこそやる意味があると思うので、そこはこれからも譲らずに続いていけたらと思います。
とはいえ、ユーザーさんにはいろいろな属性の方がいらっしゃるので、もっときめ細やかに何がいいのかをお伝えしていけるように、さらに追及していきたいです。AIをはじめ、テクノロジーでうまく解決できたらいいですね。

また、ベストコスメのなかで印象に残っている商品に、資生堂の『ファンデーションブラシ 131』があるのですが、ブラシってある意味サポート的なサブアイテムですよね。
ファンデーションやスキンケアなど主役のものがベスコスに選ばれるのは当たり前なのですが、サブアイテムが高い支持を得てベストコスメに選ばれるというのは、私たちから見てもとても驚きでした。
このブラシに集まった「手持ちのファンデーションの仕上がりが一段あがる」「上質な肌にキレイに仕上がる」などのクチコミからそのときどきのユーザーさんの関心や悩みが見えてくるのが、生活者視点のランキングのおもしろさだな、と。
これからも、リアルな目線からのアイテムがフィーチャーされるような「@cosmeベストコスメアワード」であってほしいなと思います。
取材・文/根笹美由紀
撮影/Leo Youlagi
(アットコスメ編集部)