Chapter.4 江戸時代から続く職人技!秘伝の紅作りをご紹介[@cosme NIPPON PROJECT]

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Chapter.4 江戸時代から続く職人技!秘伝の紅作りをご紹介[@cosme NIPPON PROJECT]
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(伊勢半本店 紅職人 佐々木宗臣さん)

紅花を乾燥させた紅餅は、職人の手によって、化粧品や食紅、絵の具などに姿を変えます。
「紅餅から紅を作る製法は、紅屋ごとに代々秘伝とされてきました。外部の人間に伝わらないようあえて書き記さず、人から人へと伝わってきたものです。初代半右衛門が確立した伊勢半独自の製法も、創業家である澤田家当主によって代々受け継がれてきました」(阿部さん)。

昭和に入ってから、6代目の澤田亀之助が他の紅屋の製法を調べたところ、詳しいことを記した文献は見つからず、京都の老舗紅屋をたずねても製法が残されていないことが判明しました。「“このまま紅の伝統的な製法を絶やしてはいけない”という強い思いから、亀之助は伊勢半の中で職人を育成することを決意したのでしょう」(阿部さん)

こうして伝統の技を受け継いだ職人が、現在伊勢半には2名所属しています。その1人が写真の佐々木宗臣さんです。

「紅作りは、独特の感覚が必要とされる作業です。紅餅を溶かした水にアルカリや酸を加えるタイミング、温度や量など 経験とカンに頼る部分が多く“見て覚える”“やって覚える”しかありません」と、佐々木さん。作業は紅を抽出するところから、全て手作業で行います。乾燥した紅餅を水に浸し、アルカリと酸を加えて、まずは紅液を抽出し、そこに“ゾク”と言われる麻の束を浸して、“赤の色素”を取り出します。

(©Ryoichi Toyama)

「最も緊張するのが、このゾクに色素を吸着させる作業ですね。紅花農家ごとに紅餅は個性があるので、毎回手の感覚に集中しなければなりません」(佐々木さん)。インタビュー中に、何度も“手の感覚”“手が覚えている”という言葉を口にした佐々木さん。その指先は、紅色に染まっていました。

ゾクから絞り出した紅液をせいろに流し入れ、余分な水分を切ると泥状の紅が完成します。この紅をうつわに刷く(塗る)のも、職人技の見せどころ。「紅を刷くのは1度限り。筆で器にくるっと刷いたら、竹串で気泡を取りながらムラなく整えていきます」(佐々木さん)。見事な手さばきで、均一に塗られた紅。塗り終わった直後は赤ですが、乾燥していくうちに、みるみる不思議な玉虫色の光沢が現れます。

時には有名な陶芸作家の器に紅を刷くこともあるという佐々木さん。「緊張しませんか?」と聞いてみると、「もちろん1点ものの作品は緊張します。それよりひとつひとつの器に刷いた紅がきちんと玉虫色に発色するか、毎回気が気じゃないですね。美しい玉虫色に変わると“ああ良かった”と思う。これが仕事をしていて最も嬉しい瞬間です」と、職人らしい返答が。伊勢半の小町紅は全て、このようにひとつひとつ職人の手によって、丹念に仕上げられているのです。

自社で紅職人を育成する一方、伊勢半は日本各地の若手伝統工芸家を応援する活動にも力を入れています。2011年には、“明治伊万里”の復刻に尽力する若手女性作家の作品、2013年は九谷焼の技に新風を吹きこむ3名の作家の作品に紅を刷き、紅ミュージアムでの展示及び特別販売を行いました。2016年は有田焼の若手作家をフューチャーしています。有田らしい古典模様を独自の世界観に取り込み作品を生み出す、たなかふみえ氏(画像左)。光に透けるほどの優美な影彫りで花や生き物を青白磁浮かび上がらせる、川崎精一氏(画像右)。

(©Ryoichi Toyama)

また2005年には、表参道の骨董通り沿いに、「伊勢半本店 紅資料館」を開設。翌年、「伊勢半本店 紅ミュージアム」に改称。常設展では紅作りの伝統的な技法や、伊勢半が所有する化粧道具を展示しています。また企画展では、江戸の化粧文化を伝える展示や江戸の伝統工芸、近代メイクの展示も。日本の化粧文化に触れ、実際に“小町紅”を試して購入できる場所として、日々多くの方が訪れています。

(©Ryoichi Toyama)

江戸時代に創業し近代日本の“化粧史”とともに歩んできた伊勢半は、8年後に“創業200年”を迎えます。伝統と革新を体現する化粧品会社として、新たな歴史を刻んでいくに違いありません。

【阿部恵美子(あべ えみこ)】
伊勢半本店 本紅事業部 企画・販売課所属。大学博物館等の勤務を経て、2014年に「伊勢半本店 紅ミュージアム」のスタッフとして入社。時代を越え女性を輝かせる「紅」の魅力や文化を広く発信するべく、2016年より広報PR業務に携わる。


【佐々木宗臣(ささき むねおみ)】
伊勢半本店 本紅生産部所属。伊勢半本店に入社後、2009年より紅職人として紅づくりに従事。手先の器用さと持ち前の探究心を発揮し、江戸時代から続く紅の製法を受け継ぎ、守り、更なるよい紅を作り出すために日々研鑽を積んでいる。

※活ノ勢半、活ノ勢半本店は「伊勢半グループ」に所属し、 伊勢半は「化粧品事業」、伊勢半本店は「紅事業」を行っています。


撮影/斎藤大地
取材・文/宇野ナミコ

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