![Chapter.3 宇宙にインスパイアされた斬新なデザイン![@cosme NIPPON PROJECT]](http://cache-cdn.cosme.net/media/cur-contents/file/image/201802/85046d3d27a941c8fa6d44508356371d.png)



ニールワンの承認がおりた瞬間から、急ピッチで発売に向けた作業が始まったポーラ。製品の“顔”ともいうべきデザインを担当したのが、デザイナーの渡辺有史さんでした。

「2016年のゴールデンウィーク頃、内々にニールワンの承認がおりるかもしれないという話がありました。仮におりたとして発売が2017年1月ですから、デザイン完成まで正味1ヶ月半しかない。非常に時間がないプロジェクトでした」(渡辺さん)

(デザイン研究室 チーフデザイナーの渡辺有史さん)
実はこのリンクルショット、2012年にも1度、製品化に向けたプロジェクトが進行していたそう。「その時にベースとなるデザインは存在していたんです」と、渡辺さん。

(2012年に作成された、幻の初期デザイン)
「承認がおり、発売が本決まりになって“さて、デザインはどうするか”という話になりました。“シワ対策の医薬部外品”というポーラにとっても画期的な製品ですし、デザインも2017年にふさわしいものに作り直すべきではないかと」(渡辺さん)

この重要なミッションが、渡辺さんのチームに託されたわけです。


(参考にした歴史上の著名人のサイン)
「もうひとつ、インスピレーションの源は“Discovery(発見)”です」と、渡辺さん。
「研究部門が行った膨大な成分の探索や、医薬部外品承認への挑戦は、まるで広大な宇宙で星を探すような作業に似ているなと。その過程のドラマや感動を表現したいと思いました。“未知なる世界への挑戦”を表現するカラーとして、はじめは宇宙の深いブルーや輝く星々のゴールド、シルバーを基調にしたデザインを考えました」(渡辺さん)


深いブルー、ゴールド、シルバーを主役とした単色のデザイン案で、初回の社内プレゼンに挑んだ渡辺さん。結果はというと…?
「反応はイマイチでしたね。“気持ちはわかるけど少々古いよ”みたいな。平たく言うと全部ボツの状態でした」(渡辺さん)

(初回プレゼン用の、単色カラーのデザイン案)
承認がおりた以上、製品の発売は決定事項! デザイン完成の期限は、容赦なく迫ってきます。「いやもう、本当にどうしようと…。ここから先は、配色もロゴも思いつくことは何でも試した感じですね。そんな試行錯誤の中で生まれたのが、ブルーとゴールドを組み合わせた2トーンのデザインです」(渡辺さん)

(最終プレゼンで提案した2トーンのデザイン案)
この2トーン案、デザイン部門内では好評だったとか。しかし、ポーラの化粧品としては、過去に例のないカラー配置。“本当にこれでいいのか”という議論の末、「中味もかつてない製品ですから、斬新なデザインに挑戦してみようということになりました」(渡辺さん)


同時進行で筆記体のロゴも、改めて検討します。
「著名人のサインを参考に、オリジナルで何百というロゴを書き起こしました。そのなかで“1周回ってやはりこれが良い”と思ったロゴが下の写真です」(渡辺さん)


(上:筆記体ロゴの初期デザイン案。下:決定したリンクルショットのロゴ)
イメージの源泉になったのは、往年の名女優グレース・ケリーのサイン。
「丸みを帯びて、愛嬌と親しみやすさがあって、そこに信頼感が生まれるのではと。サインって右利きの人が感情を込めて書くと、少々右上がりになるんですね。ロゴの配置も右肩上がりのものを加えました」(渡辺さん)。

ロゴのカラーに選んだのは、鮮やかなオレンジです。
「宇宙に関するリサーチをしていたとき、たまたま宇宙飛行士が、鮮やかなオレンジのユニフォームを着ている写真を見つけたんです。船外活動用の宇宙服は白ですが、出発と帰還のさいには、このオレンジのユニフォームを着用するそうです」(渡辺さん)

(デザインのイメージソースとして、渡辺さんが収集した資料)
「“宇宙に旅立つ時に着る色=挑戦する色”ということで、まさにリンクルショットにふさわしいのではと。ロゴだけでなく、製品の外箱にもキーカラーとしてオレンジを採用しました」(渡辺さん)


化粧品のデザインは、“見た目の美しさ”だけでなく“使いやすい”ことも重要です。「リンクルショットのボトルとキャップは、契約書にサインする“ペンとペンスタンド”をイメージしています。この形、使用後に立てかけておけるんですね」(渡辺さん)

内容物が直接肌に塗りやすいよう、チューブの先端は二股の、独自の形式を採用しています。シワを押し広げ、深い部分まで塗布しやすい先端を探すため、いくつものサンプルを試した結果、この二股形状が選ばれました。


満を持して迎えた2度目のプレゼン、社内では高評価を得ます。
「カラーやロゴを含め、“未踏の地発見、挑戦のオレンジ”というストーリーが、伝わりやすかったのだと思います」と、渡辺さん。パッケージデザインが決定して安堵する一方で、渡辺さんの中には“本当にこれでいいのか”という思いがありました。

「社内でデザインが評価されても、それがお客様にどう受け止められるかは、また別の話です。ここに至るまでに15年の苦労があったわけですから、“デザインで何かあったら責任は重大”」と、渡辺さん。発売まで不安な日々が続いたといいます。




(2017年1月1日には、主要各紙に一面広告を掲載)
「僕も正月で旅行していて、空港から電車に乗ったら、駅や電車がリンクルショット一色だった。感無量で、思わず近くにいた妻に“これ僕がやったんだよ”って。そんなこと言ったのは、研究者生活で初めてでした(笑)」(檜谷さん)


(JR山手線車両の車内広告)
1月1日には、全国の百貨店やポーラの直営店に、リンクルショットを求める行列ができました。センセーショナルなデビューから約1年半、現在までの間に累計販売数は111万本突破!延べ56万人が体験し、2017年〜2018年2月までの間にベストコスメ40冠という快挙を成し遂げます。

15年間にも及ぶ、担当者たちの熱い想いと努力が結集した、リンクルショット メディカル セラム。多くの女性に愛されベストセラーに成長した名作は、2018年からは価格を10%下げ、¥13,500(税抜)で販売されています。