江原道のモノづくりのキーパーソンといっても過言ではない人。それはブランドディレクターであり、江原道のエステティシャンでもある瀬戸口めぐみさんだ。麻布十番の本社にあるエステサロンには女優、タレント、モデルなどがお忍びで通いにくるという、ゴッドハンドの持ち主。
「江原道の商品を使ってフェイシャルトリートメントをしてほしい、と女優さんたちからオファーが相次ぎ、エステティックサロンの本格開業にともない声をかけられました。
当時はエステというと“痩身”をイメージする人が多かったのですが、癒やしやリラクゼーションを目的とし、肌のコンディションを上げていく場にしたかったんです。この考えに共感してくださったのが女優さんたち。トリートメントをしながら、たくさんのご意見をいただきました」。
このエステでの経験が江原道のモノづくりの原点になっている、と話す瀬戸口さん。
「女優さんの肌はとても正直なんです。舞台や映画に出演しているときは緊張しているけれど、終わったとたんに肌が“脱力”するんですよね。
精根尽き果てるというか…すると、化粧水も使えないほどダメージが出てしまうことも。それでサロンに駆け込んでくるんです。セルフケアで肌に寄り添うことはできないか、環境変化に強い肌づくりをサポートできる化粧品はつくれないか、と考えるようになりました」と瀬戸口さん。
サロンにくる女優さんの肌に触れ、会話をする。ときには、“こんな商品をつくってほしい”というリクエストを聞いたり…「なかでも“長時間つけていても肌荒れしないファンデーションがほしい”という声が圧倒的に多かったですね。これらの意見が本当に役立ちました。江原道の商品は役者さんたちの声から生まれたといっても過言ではないんですよ」。
「理想の肌ってどんな肌だろう、と常々考えているのですが、エステ後のふっくらとした素肌が一番美しいんです。キメの細かさや肌の柔らかさ、透明感など、普段より肌が1トーン明るくなる。それこそ“素の肌”なんですけど、なかなかそうもいってられないのが現実。ならば、そのすべてをファンデーションで表現できればと思い、つくりはじめました」(瀬戸口さん)
「ファンデーションといえば、メイクと思われる方が多いですよね。ですが、江原道のファンデーションは、肌のコンディションをキープするためのもの。どちらかといえばスキンケアの考え方に近いんです。だから、処方にはこだわりました」と語る瀬戸口さん。
江原道ではファンデーションを開発するときの3つの約束事がある。【崩れにくい】【肌へのやさしさ】【仕上りの美しさ】。
「評判の良いファンデーションでも、崩れたり、ヨレたりしてしまっては元も子もありません。崩れる理由ですか?それは肌にフィットしていないから。ファンデーションづくりの骨子となる素材選びは大事なんです」(瀬戸口さん)。
3つの約束事をかなえるべくたどり着いたのは、肌に負担をかけない「素材選び」と「光」を味方にする技術だった。
数ある素材の中から目をつけたのは、肌の上に光の層をつくるRGBパウダー。「この原料は以前からあったようなのですが、当時はそこまで話題になっていませんでした」と瀬戸口さん。あえてこのパウダーを採用したのはナゼ?
「カメラの性能が良くなり、女優さんの肌が鮮明に映るようになってきた頃、ヘアメイクさんの間では『シミやそばかすをいかに隠すか』が課題になっていました。隠そうとすればするほど厚塗りになってしまう、と困っていたんですよね」。
そこで考えたのが逆転の発想。「隠すことばかり考えるから厚塗りになってしまう。ならば、隠すのではなく反射させてしまおうと考え、光を味方につけることにしたんです」(瀬戸口さん)
このヒントになったのは、撮影現場にあったストロボだったという。
「女優さんの肌を照らすストロボは、当て方次第で肌の映りが全く違って見えるんです。肌の上に光の層を放つヴェールをまとえば、シミや毛穴を隠さずしてきれいな肌を表現することができる。これを使わない手はないと思いました」(瀬戸口さん)
こんなところにモノづくりのヒントがあったとは!
小さなときから撮影現場が身近にあった瀬戸口さん。「姉が女優だったこともあり、撮影現場にも連れていってもらってました。キラキラと輝く人たちのお手伝いがしたい、そして女優さんたちの肌を支えるお手伝いをしたい」と。
映画に懸ける個人の想いは、やがて会社の想いへ。1996年、初の化粧品タイアップとして映画のエンドロールに名を刻んでから22年。その数は今、国内外合わせて745作品(2018年4月現在)を超えるという。江原道はこれからも映画界を支え続けていく。