生理用品も人生も、もっと自由に選びたい。生理をオープンに語れる時代へ

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生理用品も人生も、もっと自由に選びたい。生理をオープンに語れる時代へ
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「胸が小さいのがコンプレックス」――そんな女性を「シンデレラバスト」という言葉と可憐なランジェリーで解放してくれたハヤカワ五味さん。大学生のときに下着ブランド「feast」を立ち上げ、起業家として注目されるようになりました。

小さな違和感を見過ごさず、世の中に問題提起してきたハヤカワさんの次なる挑戦は“生理のカルチャー”を変えること。なぜこのプロジェクトを始めたのか、想いを伺いました。

「かわいくて元気」な生理用品の謎

「illuminate」の活動にワクワクしている@cosmeメンバーさんも多いと思います。まずはどうして生理用品の企画開発をしようと思われたのか、きっかけを教えていただけますか。

「以前から“生理用品を変えたい”というイメージはあったんです。私にはパッケージがかわいすぎると感じられたし、外出時にナプキンをたくさん持ち歩くのがしんどくて…。

具体化したのは1年前。2018年春に大学(多摩美術大学グラフィックデザイン学科)を卒業したのですが、卒業制作で生理用品を作った子が同学年にいて。それが今の「illuminate」のデザイナーです。友人経由で彼女の作品を製品化したいという相談を受けたのが、このプロジェクトの始まりでした」

――どんなデザインの生理用品だったんですか?

「今の日本の生理用品にはない、すごくシンプルでジェンダーレスなデザインです。

たとえばマスクのパッケージって、女性らしさを過剰に表現したりしませんよね。『風邪でも元気』みたいなコピーとかつけないし。でもなぜか生理用品には、元気さやかわいらしさが強調される。

それが好きな人がいる一方で、そういうデザインだと買いづらい…たとえばFtM(女性から男性へ性別移行を望む人)の人もいると思っていて。そうした人のためにも、もっと多様性のある新しい生理用品を作りたいと思ったんです」

#NoBagForMe 。行為が価値観をつくるから

――5月13日には生理用品を生産しているユニ・チャームさんと「#NoBagForMe(紙袋いりません)」という生理用品のパッケージ開発プロジェクトをスタートされましたね。

「はい、オリジナルパッケージのタンポンを年内に売り出せるように進めています。目標はハッシュタグの通り、買うときに紙袋に入れられることのないパッケージです。

私は“行為が価値観を作る”と思っています。生理用品を紙袋に入れられると、人に見せてはいけないものという気持ちにさせられる。そんなのおかしいし、エコでもないですよね」

国外には多種多様な生理用品が

現在は布ナプキンなど自社製品の開発を進めつつ、大手メーカーと協力しながら画一的な生理用品のパッケージを変えること、ナプキン以外の生理用品の選択肢を増やすことに取り組んでいるというハヤカワさん。

アメリカなど国外ではタンポンや月経カップの使用率が高いのに、日本はナプキンの使用率が9割で、タンポンの使用率は1割を切っているそう。生理用品が多様化すれば、生活の質はもっと上がると話します。

アメリカのタンポン

アメリカのタンポン

「日本の生理用品の多くは医療品扱いなので、ルールが厳しいんです。国外はそのハードルが低いから、新しいプロダクトが出てきやすいのかもしれません」

そう言ってハヤカワさんが見せてくれたのは、日本製とはかなり印象がちがう国外の生理用品です。

中国のナプキン

中国のナプキン

「これ、すごくいいんですよ。中国の100円均一ショップMINISOのものなんですけど、極薄で持ち運びやすく、デザインもかわいいんです」

――こちらのブルーのもかわいいですね! ウェットティッシュのようなシンプルなデザインですね。

台湾のナプキン

台湾のナプキン

「これは台湾のナプキン。メンソール入りでスースーするそうです。アジアにはメンソール入りがけっこうあるらしくて、使った友達はすごくいいと言っていました」

月経カップ、どう選んだらいい?

――そしてこちらは、話題の月経カップですね。こんなにたくさんの種類を見るのは初めてです。

「厚みもステム(先端の持ち手の部分)も、色々種類があるんですよね。厚みは、どちらかというと薄めよりも普通くらいの方が使いやすいと思います。薄いと体の中で開きづらいので。初心者は、ステムにタンポンのように紐をつけられるタイプのほうが安心かもしれません。

私は月経カップユーザーなんですが、とても快適ですよ。最初はちょっと怖かったのですが、慣れるとまったく違和感がなくて。入れているのを忘れないよう、気をつけないといけないくらいです」

エヴァカップ

Anigan (アニガン)

本体価格 4,450円

見ていると楽しくなってくる、色とりどりの生理用品。「illuminate」もまずはセレクトショップの形態で、様々な生理用品を比較できる場をつくりたいとハヤカワさん。

「こんなにたくさんの生理用品があるのに、日常では触れる機会がほとんどないので。ショップでユーザーの好みの傾向がわかれば、製品づくりにも活かせます。ショップで使い方の講習会もやっていきたいですね」

自分らしい美しさを楽しめばいい

女性のコンプレックスを武器に変え、悩みを魅力として輝かせるアイテムを生み出してきたハヤカワさん。リーダーシップのある強い女性のように見えますが、出発点のひとつは自分自身のコンプレックスにあったといいます。

「未だに自分の顔が好きかと言われると…系統としては好みのタイプじゃないんです。私はいわゆる“ブルベ冬”。ふんわりかわいらしい“イエベ春”とはほど遠いのに、昔はそこを参考にしていました。奥二重なのに二重になりたくて、アイプチしていたこともありました。アイテープを使って、それが浮いちゃったりしていましたね」

――心境の変化はどこから?

「お付き合いしていた人に『俺はそのままでかわいいと思っているんだから。好きな人の価値観を疑うことになるとは思わないの?』と言われて、たしかになぁと。美しさはとらえ方次第なんだと気がつきました。

主に雑誌が美しさの基準となっていたころとちがい、今は情報の数や選択肢が増えてきています。選択肢が増えれば価値観も変わるから、無理に自分を適応させなくていい。自分にあう、自分らしいメイクや肩の力が抜けたおしゃれを楽しみたい。コンプレックスを美しさに変えるような仕事をしたいと思うようになりました」

自分で選んでチャレンジする時代に

――最後に。令和が始まり、これからどんな社会にしていきたいと考えますか?

「最近は『何を選んだらいいかわからない』という人が多いと思っていて。でもそれって、いいことだと思うんです。

今までって“女性はこうあるべき”とか“女性はこういうキャリアを積むべき”とか、結構レールが敷かれていた。だから選ばなくてよかったし、選べなかったとも言えます。

それが今では選べるようになったし、選ばなくてはならなくなった。選べるようになった時代だからこそ、知識を持って自主的に選ぶ。たとえば生理用品でもいい、自分で選んでチャレンジしてみる。それで良かったという体験を持つ女性が、もっと増えたらいいなと思います。

選択肢が増えて、かつ、納得して選択できるような知識をみんなが持てる社会になったらいいなと」

選択肢が増えると迷うこともあるけれど、それは自由の証でもあります。多様な選択肢から生理用品を選ぶ自由も、今の私たちには必要なこと。

「自分で納得して選び、その選択を楽しむ」という体験を積み重ねた先に、ハヤカワさんの目指す新しい世界があるのだと感じました。

ハヤカワ五味さん

ハヤカワ五味さん

1995年東京生まれ、多摩美大卒業。課題解決型アパレルブランドを運営する株式会社ウツワ代表取締役。 大学入学後にランジェリーブランド《feast》2017年にはワンピースの《ダブルチャカ》を立ち上げ、Eコマースを主として販売を続ける。2018年にはラフォーレ原宿に直営店舗《LAVISHOP》を出店。

取材・文:田邉愛理
撮影:@cosme編集部

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