ゲラン / シャマード プール オム 口コミ

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★キャプテンD★さん
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5購入品

2021/3/15 23:13:39

恋に落ちるという言葉、、、とても的を得ていると思う。

そう、相手より先に恋をすると、相手の一挙手一投足にひれ伏せなければならない。そうなるともう身動きが取れない。自制心を失うくらい、相手のことが気になる。仕事も映画も本も音楽も、身体を動かしてみても、たぶん好きな香りに包まれていても、考えてしまうのはその恋する相手のことばかり。
この落ち着きを失った心の動きこそ、まさに恋に落ちてしまった状態だと思う。

ジャン・ポール ゲランが創り出したシャマード プール オム(1999年)は、シャマード(1969年)の返事として、恋に落ちた男性の深く熱いエモーションを描いた香りで、愛の瞬間への陶酔と心の降伏をテーマにしている。

恋に落ちた男性の、胸がどきどきするような歓びと魅力を表現した香りとは、どんな香りなのだろうか。

トップはアロマティック・スパイシー。
スプレーすると、まず鋭いブラックペッパー、さらにアロマティック感の強いベルガモットが香る。ゲランのフレグランスにはベルガモットが多用されるが、スプレーした瞬間に、ああゲランの香りだとわかるくらい、とても情緒がある。
そして、このベルガモットと、奥からうっすらと香ってくるバイオレットの金属音との組み合わせが、クラシカルな雰囲気を醸し出している。
ゲランらしい落ち着きのあるオープニングに、ペーパーがフレッシュな男らしさを添えているようなイメージ。

ミドルはフローラル・グリーン。
男らしいクラシカルな香りから、ヒヤシンスのフローラルの甘さが一気に広がる。このヒヤシンスはとてもみずみずしく、パッと花開くような香り立ちがとても素敵だと思う。
そんなヒヤシンスのみずみずしい甘さを、バイオレットの硬さで締めることで、メンズらしい落ち着きのある香りに仕上げている。さらに、鼻先に香るペッパーやナツメグのスパイスが、少しだけ荒々しさを付与しているような香り。

ベースはウッディ・レザリー。
みずみずしさが収まったヒヤシンスの蜜感と、バイオレットやナツメグの苦みを残しながら、アロマティックなベチバーや、暗いセダーウッドが落ち着きを与える。このレザーの湿り気とグリーンの残香が、粘土のようなクラシカルな印象を持たせながら、そのままドライダウンしていく。

とても丁寧に作り込まれたメンズフレグランスで、ヒヤシンスのみずみずしい甘さとウッディやレザーの余韻がとても心地よい。奇をてらっていないため、ややキャラクターに欠けるが、落ち着いた印象を与える香りだと感じる。

持続時間は、ミドルの締まったフローラルが2時間弱、ピリッとスパイスを効かせたようなウッディ・レザリーの香りは6時間以上続く。
あまり季節感は問わない繊細な香りではあるが、ヒヤシンスがはっきり香るため、もっとも似合うのはやはり春だと思う。
紙だとスパイシーの粗っぽさやウッディの硬さが強く、よりメンズ感が表に出るが、肌に乗せた方がヒヤシンスの甘さが広がり、ウッディやレザーが滑らかに感じる。

シャマードと同様に、このプールオムもキーとなる香りはヒヤシンスだ。
ヒヤシンスは色によって花言葉が変わるらしい。プールオムの香りのイメージは紫色のヒヤシンスで、紫の花言葉は「初恋のひたむきさ、悲哀」とのこと。
みずみずしく仄かに甘いヒヤシンスに、フレッシュなスパイシーを添えることで、恋に落ちた瞬間の初々しいイメージが創り出されている。

でも、香り全体を見るとバイオレットやウッディで要所を締めているため、どこかしら冷静で醒めたような雰囲気も強い。
若い頃のようなアクセル全開で恋に落ちていくのではなく、アクセルを踏みながらさっとブレーキを踏めるような余裕を感じる。
そして気付く。シャマード プールオムは、まるで恋に落ちている姿を演じているような、成熟した男性の香りではないかと。

もし、恋に落ちてしまい、その相手と会う時に、このシャマード プールオムを選ぶことができるだろうか。
いや、きっと、もっとセクシーな香りを選んでしまうのではないか。

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