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クチコミ
「今すぐやりたいことがある。理由は簡単だ。それをすると、得も言われぬ心地よさが味わえるからだ。しかしできない。なぜなら・・・。」
オート・ヴォルティージュは、調香師ベルトラン・ドゥショフールがプロデュースする「エクスプロージョンズ・オブ・エモーション(感情の爆発)」の第二弾コレクションとして、2014年に発売された、3つの香りのうちの1つだ。
第一弾として発売された3つの作品の共通テーマは、「自分と相手、2人の関係性による感情の変化」。それに対し、第二弾の3つの作品が表現したものは、「自己の内なる感情の変化」。そういう意味では、この第二弾の方が、よりセンシティヴかつダイレクトに「自分の内面」に問いかける作品群になっているように思う。
オート・ヴォルティージュは、「高度なアクロバット」という意味だ。紫の化粧箱に刻印された中央から光が拡散するような模様は、強烈な感情(あるいは本能)が外側に向かって解き放たれるさまを表現しているように思う。公式サイトにも、「心のタガを外した瞬間の、鳥肌がたつような強烈な歓喜をイメージ」とある。
「心のタガを外す」とは、換言すれば「理性を取り払う」「せまい常識や観念にとらわれず」という意味だろう。つまり、ときには理性を捨てて感情を解き放ち、より強く生の感動を味わおう。そんな外向きなメッセージが感じられる作品だ。
この香りは、とにかくトップがとても印象的だ。
付けたてはほんのりスパイスのきいた、透明感のある苦みが主張する。しかもフルーツの酸味と相まって、メタリックで冷たい印象を感じさせる。ブラックペッパーとザクロのクレジットがあるが、ややライチを思わせるキンとした透明感のある酸味に、オークモスの苦みをきかせて、スパイスで調整した、そんな雰囲気だ。モス系の香りは、昨今EUのアレルゲン物質に指摘された問題もあるため、そのへんをクリアした人工的な調整かなと思う。通常ベース香料は最後まで残るが、ラストまで苦みが持続するミツコのようなシプレーではなく、トップで強く苦みが出て次第に減衰していくので不思議だ。
苦く酸味があり、何かを押さえつけるかのような暗い印象のトップの香り。これが5分ほど続くと、やがて、下から静かにピンク色の穏やかなフローラルが広がってくる。まるで、鉄の扉を開けて、花々の咲く庭園へ出たような。この変化は劇的かつ対照的だ。
それは、ザクロのもつ甘酸っぱさとピオニーやローズの華やかさが感じられる香り。優しく落ち着いたフローラルだと思う。後ろにわずかにジュニパーベリーの森っぽさも感じるけれど、さっきまでの苦みや酸味、暗さは何だったのだろうと思うほど、ゆったりした花々の香りだ。
このミドルのフローラルには、ピオニー(西洋シャクヤク)がクレジットされているが、これは本来、生花から香りを抽出できないものの1つだ。それでも、ラルチザンの新作発表会では、このフレグランスに使用したというピオニーやザクロの香料の試香もあったようで、どんな香料なのかは興味深い。
ミドルのフルーティー・フローラルは4〜5時間ほど続く。やがてそれは、香ばしく甘いウードの香りと溶け合いながら、温かく消えていく。そんなラスト。このウッディなラストが心地よくて好きだ。
こうして見ると、出だしの暗く苦い香りは、まるで、感情や本能を無理矢理抑えつけようとしている「理性」のようにも感じられる。そう考えると、その下から現れたフローラルこそ、抑えきれずに解き放たれた「感情」を表しているのかもしれない。公式サイトにあるような「歓喜」や「爆発」というほど派手ではなく、とても気持ちが落ち着く花々の香りだ。
人の行動は、「生存本能」「感情の快・不快」「それらの制御(思考・理性)」のせめぎ合いで決定される。人が社会的に生きるために、本能や感情を理性でコントロールすることは不可欠だが、現代人のように、あらゆるシーンでモラルやマナーといった社会的理性に縛られすぎると、ときとして感情や生存本能じたいに黄色信号が灯ることもある。このフレグランスはそんな四面楚歌な心に、「アパッショナータ!(感情のおもむくままに!)」そう叫んで応援しているかのようだ。
「俺は今すぐ海辺に行って昼寝をしたい(本能)。だってこんな夏空の下、砂浜で寝そべったら気持ちいいに決まってるからだ(感情)。しかし、できない。だって仕事中だもの!!(理性?)」
そう、現代において感情のおもむくままに行動することは、とても難しいのだ。まさに高難度のアクロバット。でもな、覚えとけよ俺。この場合は「タガを外す」とは言わない。仕事中に窓の外を見て、そんな妄想に負けそうになっている時点で、お前はすでにタガが外れている。←ふぬけ
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