ゲラン / マドモワゼルゲラン 口コミ

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doggyhonzawaさん
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5購入品

2021/12/18 12:54:49

「ボンジュール、マドモアゼル!」かつてフランス映画でよく耳にした言葉。カフェのギャルソンあたりがニッコリ笑顔とともに若い女性に声を掛けるシーン。ところがこの言葉、最近ではあまり聞くことが少ないという。それはなぜか?

「マドモアゼル」の意味は「お嬢さん」。フランスでは独身女性に対して使う言葉として知られるが、今や誰が未婚か既婚か言い切れない時代。そこで、若そうだからと前述の挨拶をするとフランス女性は憤慨することが多いそう。それは「半人前」扱いで侮蔑されているといった捉え方からくるようだ。そうした経緯もあってフランスでは、2012年に「マドモアゼル表記は性差別にあたる」として行政文書に書くことを禁止した。つまり、性別欄の記入は「マダム」で統一されたということだ。

そんな中、2014年にあえて「マドモアゼル」をネーミングに用いたのが、マドモアゼル・ゲランという香水。もちろん日常的には使ってよい言葉だが、これは「対ココマド戦」も表明した、ある意味強気なネーミングだ。実際は、ゲラン5代目調香師ティエリー・ワッサーが作ったラプティットローブノワール2(以下LPRN2、2012年)と香りがほぼ同じようで、ボトルと名前を変えて復刻したという位置づけの作品。125mlで3万7千円ほど。流石に店舗限定名香シリーズ、価格はお嬢さんならぬ「お冗談?」というくらいまあ高額。

では「ゲランのお嬢さん」、香りの方はいったいどんな感じなのか?

マドモアゼルゲランをスプレーすると、まず飛んでくるのは、レモンの酸味と青くて苦いグリーンな草の香り、ガルバナムだ。ここはシャネル19番の向こうを張ったようだ。グリーンでビターな香りは、どんどん強くなる。ヴァイオレットリーフの土っぽいシャープさも絡んでいるようだ。つけて5分はこの2つ、爽やかさと辛辣な苦味が強く主張する。さながら上目遣いで大人達に一瞥をくれるハイティーンの女の子のように批判的な開幕。それは初対面の者に対する容赦ない警戒。

少しすると、そのシトラス&ガルバナムの影に、甘く暗いチェリーやレッドベリーの香りがうずうずしている気配が感じられてくる。相手の出方と隙をうかがう混沌とした雰囲気。牽制のジャブを放つような鋭さがある。けれど、ジャブを出せば出すほど、自身の警戒がほどけてゆく。次第に少女らしい優しさや可愛らしさが時折そっと顔をのぞかせる。それはマシュマロのような甘さ、ふわふわとした柔らかいパウダリーな香り。それらが硬く閉ざしたガードの奥から静かに香り出してくる。

そして肌にのせて30分後、鋭いグリーンと苦味は風と共に去り、そこにはうつむいたシャイな少女が出現する。真っ赤なストロベリーキャンディとピンクマシュマロの香り。毒々しい色をつけた甘い甘い砂糖菓子の匂いが立ちこめる。それはフリルのついたスカートと赤い靴をはいた、わがままいっぱいのリトルガールの香り。

この甘くキャンディチックなミドルが割と長く続く。

付けて1時間ほどすると、いちごキャンディ&マシュマロな香りに、クリームシフォン様の香りが重なってくる。ほんのりヴァニラクリームの香りが、全体の甘さをまろやかに包み込んでくる。そこに粉雪のようなパウダーシュガーが、これでもかとたっぷりのせられている。まるで身体をすりつけて甘えてくる猫の柔らかな毛並のように、なめらかで温かい香りになる。このあたりのラストは目を見張るスイートパウダリーだ。

最後はふくよかで美しいパウダリー香のまま、甘く狂おしく、付けてから6〜8時間で終息する。

まとめると。

マドモアゼルゲランは、トップの爽やかさと強烈なグリーンの苦味で思春期の鋭さや辛辣さを表し、ミドルのベリー&マシュマロのグルマンタッチで、揺れ動きながらも笑顔と女性らしい甘さを獲得したかのようなイメージ展開をする。そこからラストに向けてアイリスのパウダリーとマシュマロの甘さが広がり、完成された女性の美しさや柔らかさを見せる。

この香水は名前とは裏腹に、とても変化に富んだ中上級者向けのフレグランスだと思う。特にトップの多層的な複雑さは、香水初心者の方やマドモアゼル世代が苦手と感じる部類な気がする。これは、口をとがらせた少女から目力の強い女性へ、そして微笑の似合う優しい淑女へと美しく変身し続けてきたマダムにこそ似合う香りだ。

かつてLPRN2と呼ばれた香りは、時を経て真にふさわしい名を携えて帰ってきた。ゲランマドモアゼル。それはきっとマドモアゼルに向けた香りではない。実際は言えなくても、つい「ボンジュール・マドモアゼル!」と声を掛けたくなるような

颯爽として美しく、いつまでも可愛らしい、大人マダムのための香りだ。

  • ピンクマシュマロ by doggyhonzawaさん
  • マドモアゼルゲラン by doggyhonzawaさん
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