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ディオールのメンズ香水10年ぶりの新作、ソヴァージュ・オード・トワレは、その評判が賛否両論、大きく分かれているフレグランスだ。理由は簡単。あまり予備知識をもっていない方々にはわりと評判がよく、これまでのディオールの香水についてある程度知識のある方には、あまり評判がよろしくない。では、そのそれぞれの理由とは?
ソバージュを好ましく感じられている方の理由は、主に次の3つのようだ。
1つ目は、ジョニー・デップがこの香りのアイコンとして起用され、かっこいいこと。
2つ目は、ディオールの特別な高級フレグランスライン、ラ・コレクシオン・プリヴェをイメージさせる美しいボトルデザイン。
3つ目は、ソヴァージュ(野生)というネーミングとは裏腹に、穏やかで使いやすい「何となくよい香り」であること。
これに対し、がっかりされた方の理由は、主に次の3つのようだ。
1つ目は、名香オー・ソバージュ(野生の水)の名を継いでいるのに、ちっとも野生的には感じられないこと。名前に香りが負けていること。
2つ目は、合成香料ばかりで、香りにディオールらしさ、高級さが感じられないこと。ボトルは、最高級ラインに似た物を使っているのに、香りは淡く弱く、ケミカルアンバーばかりが長く続いて、これまでのディオールの作品にあった明確な「顔」が感じられないこと。
3つ目は、香り以外のところに多額のお金を使っていて本末転倒なところ。ジョニー・デップの起用、ハリウッドなみのショートフィルムの制作、ライ・クーダーの音楽など、広告宣伝費にお金をかけすぎではないかということ。しかも、そのフィルムが、40年以上前の「ヴァニシング・ポイント」などのアメリカン・ニュー・シネマ風で、古く感じること。
どちらも、同じような点が真逆の評価になっているようで興味深い。では、本質である香りは、どんな感じだろうか。
ソヴァージュのトップは、今回特別に作ったとされるベルガモットの香りから始まる。それは、心地よく優しい香りではあるが、酸味・苦みともにうっすらとしていて主張は弱めだ。そこに、エチルマルトールの綿あめっぽい甘さが重なり、さながら女性用のプリヴェのオープニングのよう。それは、穏やかで美しいが、「野生的」とは感じない。
5分もすると、不思議な透明感を保ったまま、うすくペッパーノートの雰囲気、ラベンダーの清涼感、ゼラニウムのクールなフローラル感が見え隠れする。だが、これも全体に淡くて、明確な輪郭はもたない。このへんがミドルだと思う。
やがて、下から潮風の雰囲気をもったやや香ばしい甘さが感じられてくる。エレミやベチバー、アンブロキサンなどのミックスだ。ミドルとラストの違いもわかりにくいが、ちょっと焦げた肌の香りに、甘さをのせたような感じが出てきたらラスト。
ソヴァージュの香りの売りの一つは、このラストに出てくる、貴重なアンバーグリスの香気に似せて作った香料アンブロキサンを用いているということ。これは、女性用のオリエンタル系に使用する樹脂風の合成アンバーの香料ではなく、粉薬っぽい柔らかな甘さに、ややレザー風味をのせたような香り。このアンブロキサンと他の香料をミックスした香りが、かなり長く肌にとどまり、香り続ける。1プッシュでも、1日ずっとアンバー系のそんな雰囲気が残っていて驚く。付ける場所と量には気を付けなければいけない点だ。
全体に、全ての香料の輪郭が曖昧で、何だか気の抜けた雰囲気のままミドルまで展開する印象。ラストにいくにしたがって、男の地肌の匂いにほんのり甘さがのったような香りがずっと長く続く。これは、その男の体臭に寄り添い、それをよりよく感じさせるような香水、という提案だろうか?このところ、イソEスーパーやアンブロキサンなどといった、単純な合成香料をただアルコール希釈しただけのニュータイプの香りも登場していることだし。
だから、酷評する人は酷評するのだろう。もっとガツンと、ディオールらしい新しい時代のマスキュリンを提案してほしかったと。シャネルのブルードゥに似てるとか言われている時点で残念なのは、10年ぶりのディオール・オムの新作に過大な期待を寄せ過ぎたせいだろうか。
広大な乾いた大地。吹き付ける埃っぽい熱風。むきだしの岩と灌木が続く、見渡す限りの地平。その彼方へ続く一本の道。男は車のアクセルをふかし、砂塵を巻き上げてどこまでも走り続ける。吸いこまれそうなターコイズブルーの空。強烈な陽ざしの下、灼けたアスファルトの上を。
野生とは、ただ荒々しいことではない。それは、余計なものを取りはらって、身も心も自然の中へ帰ってゆくこと。そんな声が聞こえるかのような穏やかなマスキュリン、ディオール・ソヴァージュ。
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