ペンハリガン / ザ・ルースレス・カウンテス・ドロシア(ポートレート) 口コミ

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doggyhonzawaさん
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2020/2/1 16:42:38

こぼれ落ちている。

ティーポットから紅茶がカップに注がれる様子を見て、ドロシア伯爵夫人はそんなふうに感じた。彼女はティーを注ぐメイドの様子を冷ややかに見つめている。メイドは緊張した面持ちで夫人の前にカップを差し出す。その瞬間、夫人がメイドの横顔を見て言った。

「貴女、昨夜ボーレガードとすれ違いざま、首筋にキスされていたメイドね?」

婦人の突然の言葉に、メイドはビクリとして動きが止まる。紅茶がカップの中で揺れる。あわてふためいて何か言おうとするメイドの声を手の平で遮ると、夫人は呼び鈴を鳴らして女中頭のハウスキーパーを呼んだ。

「この娘、おいとまが欲しいそうよ。代わりのメイドにスコーンを運ばせなさい。」

彼女はザ・ルースレス・カウンテス・ドロシア(冷酷な伯爵夫人ドロシア)。ペンハリガンのポートレートシリーズから2017年にリリースされたオーデパルファムの名だ。75mlで35200円。

ポートレートシリーズは、広大なカントリーハウスで繰り広げられるイギリス貴族の架空の物語をベースにしたハイエンドな香水の作品群。その中でドロシア伯爵夫人は、物語の中心人物であるジョージ卿の母という設定。一族の家長として君臨する聡明かつ気高い完璧な女性、ドロシア。彼女は身内のスキャンダルの全てを知りつくし、憂慮している。しかしその一方で、自分は若きフランス人男性ボーレガードを友人と称して屋敷に招き入れ、特別懇意にしているという噂も。

そんなドロシア伯爵夫人のキャラクターはフクロウ。ふだんはじっとして動かないが、いったん獲物を見付けると決して逃さないどう猛な猛禽類。ではこの強烈な個性を秘めた女性の香りとは、いったいどんなものなのか?

ドロシアのトップは、穏やかで透明感ある洋酒の香りで始まる。ほのかに甘くスッキリ広がるシェリー酒の香り。同時に出てくるのは、ティーを思わせるベルガモット、そして温かみあるシナモンとジンジャーの美味しそうな香り。さながら英国のアフタヌーンティーの時間を思わせる。アールグレイの爽やかな香気、香ばしい焼きたてのスコーンの香り、そこにスパイスがほんのり混じったような。

次第にジンジャーとシナモンの風味が強くなってきてミドル。ミドルになると、ベルガモットの酸味やコクが消失する代わりに、より一層スコーンやビスケットを思わせるクリーミーな雰囲気が出てくる。わずかにスモーキーな良質のヴァニラ香だ。ドロシア夫人はことのほかスコーンが好きだという。英国式のアフタヌーンティーの様式の中で、特にティーとスコーンの組み合わせはクリームティーと呼ばれ、スコーンにはジャムと濃厚なクロテッドクリームが添えられる。そのヴァニラクリームの感じだ。彼女は広大な邸宅の中を悠然と散歩しながら、何十人もの使用人たちの様子をつぶさに見て取り、誰が誰と何をしているか見逃さない。「スコーンはいかが?」と優しく相手の懐に入っては、全ての情報を把握するのだ。だからメイドたちは夫人の気配を感じると蜘蛛の子を散らすように姿を隠すという。

そんなほんのりスパイシーなスコーンのような香りに、わずかに甘く軽やかなウッディムスクが感じられてくるとラスト。カシミアムスクと呼ばれるカシュメランの引き波だ。持続時間は4〜5時間程度。穏やかでエレガントなティータイムの終焉を迎える。

展開で見ると、ドロシア伯爵夫人は清涼感あるシェリー酒の香気から始まって、ティー&ジンジャービスケットのような香りへ移り、ラストはヴァニラと甘いウッディムスクで幕を引くセミオリエンタルな香調の香水だ。フクロウのようにとても静かで落ち着いたイントロ。けれど、常にどこかロースティーな影がちらつく香りだと思う。冷酷というほどではないけれど、冴えた知的な女性を思わせるクールさが感じられる香りだ。

すでに日は落ちていた。遙かな丘の向こうに日の名残りが感じられた。ひとしきり邸宅を巡り、情報収集を終えたドロシア婦人は、ホールに戻って巨大なウォールミラーに自身の姿を映した。そして思った。

こぼれ落ちている。 顔も、身体も、全身から若さが。

かつて、あまたの諸侯に言い寄られるほどの美貌を宿していた自分が、加齢と共に落ちている。その残滓のような姿がそこにはあった。

でも だからこそ

こぼれ落ちてゆく若さと引き替えに、自分はその何倍も手にしてきたのだ。地位も名誉も財産も。そしてあの男も…。ドロシア夫人の目だけが、暗闇で全てを見通す猛禽のナイトアイズのように光っている。

そのとき、来客を知らせる執事の足音が近付いてくるのが聞こえた。夫人の口元が微笑む。

私のお気に入りのスコーンが、今夜も会いに来たのね。

  • 冷酷なるドロシア伯爵夫人 by doggyhonzawaさん
  • ルースレスカウンテスドロシア by doggyhonzawaさん
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