MDCI Parfums(海外 フランス) / Cio Cio San 口コミ

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doggyhonzawaさん
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4購入品

2021/11/20 12:44:06

Cio Cio San。「しおしおさん」ではない。チョウチョウサンと読む。町長さんではない。「蝶々さん」だ。蝶々さんと言えば超有名オペラ「蝶々夫人」の主役、海外では最も知られている日本人ヒロイン「マダム・バタフライ」のことだ。

MDCIパルファムから2015年にリリースされたこの香水には、この悲劇のヒロインの名が冠されている。

浅学にして「蝶々夫人」の名は聞いたことがあっても詳細を知らなかったので、この有名なオペラ作品について調べまくったところ、とても驚き、最後には思わず涙までしてしまった。

ときは明治の長崎。士族の娘として生まれた蝶々さんは、親族や身請け人の死が相次ぎ、若干15才で芸者となっていた。そこでアメリカ海軍兵のピンカートンと出会い、見初められ、結婚の運びとなる。ピンカートンは日本にいる間の現地妻として「一時の愛」とうそぶくが、全身全霊で思いを寄せてくる蝶々さんの真剣な愛に気付きはじめる。

おりしも任期を終えたピンカートンは「コマドリが巣を作る頃には帰ってくる」と言い残して単身アメリカに帰る。周囲は「騙されたのだ」といぶかしむが、蝶々さんは「あの人は必ず帰ってくる」と信じて疑わない。やがて月日が流れ、港にアメリカ軍艦寄港の祝砲が鳴り響く。待ちに待った何年ぶりかの再会。蝶々さんの心は今にも張り裂けんばかりの喜びに包まれる。だが、ピンカートンはアメリカ人の妻を連れて訪れたのだった…。

よくある「あたし待つわ」的悲劇もの。なのかもしれない。けれど、何年も夫の帰りを信じて待ち続け、ときに心配して他の縁談を進める者たちへ怒りさえ向ける蝶々さんの一途さには次第に胸が熱くなる。これがイタリアのオペラ作家、ジャコモ・プッチーニが書き上げた舞台のあらすじだ。劇中第二幕、蝶々さんがピンカートンとの別れの際、「あの人は必ず帰ってくるわ」と歌うアリア「ある晴れた日に」は、心を揺さぶる切ない叙情歌。名曲中の名曲と言われ、あの伝説のオペラ歌手、マリア・カラスの18番にもなったという。

知らぬというのは本当にこわいことだ。そう思いながらMDCIのチョウチョウサンの香りを改めて嗅ぐ。

チョウチョウサンをスプレーすると、はじめに感じられるのはみずみずしいライチの香りだ。まだ幼いながら武士の末裔として凛とした姿勢を崩さぬ蝶々さんの着物姿。その異文化の魅力に心奪われ、たちまち惹かれていくピンカートン。2人のあふれんばかりの思いが、ジューシーなライチの香りで表現されている。

5分ほどすると、ほんのり煮詰めたような甘さと苦味が出てくる。これは柑橘の苦味だ。クレジットによるとユズのようだが、鼻でわかるほど明確ではない。そしてサクラ香水でよく使われる苦味。クマリンをスッとビタースイートにしたような。これらがべっこう飴のようなロースティーな茶の香りとともに出てくる。それでも、トップから感じたライトでフルーティーな気配は変わらない。ユズとサクラとほうじ茶ライクな香りのミックス。蝶々さんとピンカートンが日本で過ごした、短くも幸せな結婚生活がスイートに描かれているようなミドル。そしてチョウチョウサンのミドルはそのまま減衰してゆく。

濃厚な作品が多いMDCIパルファムにあって、このチョウチョウサンは、比較的香り立ちが柔らかく、スイートでフルーティーフローラルな香りが8時間ほど続く作品。次第にジンジャーの温かみが加わって、サクラの香りにロースティーな茶、クール&スパイシーなウッディを取り合わせたような和風イメージの香りでドライダウン。購入は本国MDCIのサイトより可能。

オペラ「蝶々夫人」第3幕。ピンカートンの乗った軍艦が祝砲を上げて長崎に寄港する。ひと晩中、寝ずに夫の帰りを待っていた蝶々さん。しかし夫は蝶々さんが一人で子どもを産んでいたことを知り、激しく自責の念にかられ、彼女の前に姿を見せることができない。仕方なくアメリカ人妻が蝶々さんの元を訪れ、その子を引き取りたいと申し出る。

そのとき、蝶々さんは全てを悟った。これまでたたんでいた心の羽根はずたずたに切り裂かれた。そして自身の愛を全うするために、傍らの幼子に目隠しをし、父親から受け継いだ武士の短刀を自身の喉元に当てた。

チョウチョウサンの柔らかく甘い香りは、夫の帰りを信じて待ち続けていたあどけない少女の横顔に重なる。ピンカートンが出港する際、蝶々さんが「私は蝶になってあの人の軍艦を追いかけたい」と歌うくだりがあるという。

チョウチョウさんの香りが、柔らかなサクラと木の香りになって消えてゆく。2人で見た桜を思いながら、長崎の海を見渡せる丘で、思い人を待つ一人の女がたたずんでいる。


ある晴れた日に。

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