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1929年に発売されたジャン パトゥ「JOY」は、ジャスミンやローズなどがふんだんに使用された、世界でも最も製造費のかかる香水の1つと言われており、フローラルアルデハイドの傑作とされる。
ディオール約20年ぶりの新作フレグランスは、ジャン パトゥ社を買収することで得た「ジョイ(JOY by DIOR)」で、力の入れようを感じる。
ジョイという名称。
ジュエリーのようにキラキラと輝くボトル。若さが溢れ出す印象だ。
ジェニファー・ローレンスのイメージフィルム。青い水から顔を出すジェニファー・ローレンスは大変美しく、イメージにぴったりだ。
どれも素晴らしい出来だ。
しかしながら、このジョイ バイ ディオールは、それら最高のお膳立てに対して、肝心要な香りそのものが期待に応えられなかったと感じている。
トップはシトラス。みずみずしいベルガモットとマンダリンの香り。カシスを加えることで、淡くウォータリーな印象のあるシトラス。このウォータリーなシトラスは、ヴィトンのルジュールスレーヴや、レゾードゥシャネルのビアリッツのような雰囲気のあり、とても嗜好が良い。
ミドルはフローラル。みずみずしいシトラスから一転、暴力的なジャスミンが乱入してくる。このジャスミンが艶っぽく、みずみずしいシトラスと合わさると、いやらしく、そして生臭い。そこからローズピーチの酸味や甘みが加わるものの、いやらしいジャスミンが支配的だ。
ベースはウッディ-ムスキー。さらに力強いサンダルウッドとパウダリーなムスクが加わることで、ジャスミンやローズピーチのいやらしさが助長されてしまい、けばけばしいおばさんような香りに。サンダルウッドが減退すると最後はムスクの香り。
調香したフランソワ・ドゥマシーは、花々とシトラスの明るさを、ウッドやムスクの柔らかさで包み、透明感と煌めきを感じさせる柔らかいタッチの香りに仕上げたとのこと。
ジョイは、女性を幸せにしたい、というディオール創設当初からの願いが込められ、純粋で輝きあふれる幸せに満ちた瞬間を表現したとのこと。
果たしてそうだろうか。
確かにジョイという名称、ボトル、イメージフィルムは、コンセプト通りだと感じる。
残念ながら、香り自体は、トップこそみずみずしく明るいシトラスだったのに対し、ジャスミンが妖艶に香ってからは、どんどんけばけばしい印象に変わる。
それぞれの素材が組み合わさることで相乗効果が発揮されるのではなく、それぞれが好き勝手に香り、それぞれの香りの足を引っ張り合っているようで、純粋、輝きあふれるといったキラキラとしたピンクイメージから程遠いと感じてしまう。
ジョイといい、オーデジバンシイといい、最近のフランソワ・ドゥマシーは冴えないなあ、、、
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