ビューティメソッド
2019/06/27

[大人女子道 おきものはじめ]7月は藍色 ―エディター&ライター、山崎陽子さん―

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着物の奥深さや和の“粋”は、大人の女性にこそ知ってほしい素敵な特権。はたしてその魅力にはいったい何が隠されているのか?美しく装う女性たちに教えをこう、“おきものいろは”連載。第4回は四季折々の美を映す和の彩りから「藍色」をテーマに、先月に続き新刊『きものが着たくなったなら』の著者、山崎陽子さんに伺います。

INDEX

爽やかな緑に藍が心地よく映える、たおやかな越後上布の夏着物。琉球藍で染めた蕁麻(いらくさ)と大麻の帯に、笹浪組みの帯締めを合わせて

その人それぞれの“藍”に出合う

藍の深い色合いに、精緻な越後上布ならではの気品漂う涼やかさ。山崎さんも「着る喜びと、見る人に涼を届ける心遣いがある」と著書で伝える夏のおきもの。手持ちから選んでいただいたのは、思いがけずの巡り合わせに「胸が苦しくなるほどのときめきを覚えた」というとっておきの1枚だ。

「越後上布は憧れるだけで一生着ることはないだろうと思っていました。それが、貴重な反物だから『せっかくだったら着てくれる人に』と持ち主の方から譲っていただいたんです。見た瞬間、心が震えて。ああ、着物の愉悦とはこういうものかと知りました。合わせているのは、藍染麻の帯が欲しくて染織家の西川はるえさんにオーダーしたもの。色合いや縞の入り方までイメージ通りに仕上げてくださって、彼女が『夏のほとり』という名前をつけてくれたんです」

“ネイビー”は制服や紺のブレザーなどを通して誰しもが親しんでいるカラーだが、“藍”とはいわゆるネイビーにとどまらない「もっと幅広い色」だと山崎さん。

「天然の藍は産地や素材によって色の出方が変わるんです。徳島の阿波藍で染めた久留米絣を持っていますが、それと琉球藍ではまた別の魅力がある。あとは染め具合。淡い水色の甕覗き(かめのぞき)も素敵だし、浅葱色(あさぎいろ)や濃藍(こいあい)も魅力的。染めの段階でそれぞれ色名があるくらいだから、それだけ昔の人もこだわっていたんじゃないかと思います。きっと『この絞りならこんな藍色に染めたいな』とか言って…。紺をすぐに思い浮かべる“ネイビー”とは違って、“藍”にはその人それぞれに似合う色合いがあるのではないでしょうか。どの“藍”にも惹かれますが、ジャパンブルーと言われる濃い色が私はやっぱり好きです」

素材で表情を変える夏の“藍”

一年を通して藍色の着物に親しんでいるが、夏はまた格別だそう。

「絹や木綿など素材が異なると、同じ“藍”でも表情が変わります。夏はそれに絽や紗、麻生地、葛やシナ、芭蕉布などいろんな繊維が着られるようになるから、好きな季節なんです。藍色の出方もさまざまで奥深い。さすがに気温が30度を越えると着物は暑くて大変ですけど、できるだけ紐の数を減らしたり、ゆったり着こなしたりと工夫して、なるべく涼しく楽しむようにしています」

上は山崎さんがコレクションしている藍で染められた江戸時代の古布。下の左は縁あって手元にやってきた松原利男さんによる綿の長坂中形(藍染浴衣の染め技法)。右は著名なきものコレクターであった菊池信子さんの形見分け会で出合った麻の絞りの浴衣

着物が教えてくれる装う喜び

一枚の布と向き合う豊かな時間。着物と出合ったからこそ経験できたことは数多いと山崎さん。

「年齢を重ねると、“諦めの境地”みたいなものの濃度が濃くなっていきがちですよね。着るものも楽な方に、楽な方にと流れて、ヒールは履かない、ウエストはゴムで、体型をカバーするシルエットがメインに…。おしゃれに対する貪欲さがなくなって、見た目もそこそこでいいやとなってくる。そんな心持ちになるのが50代半ばでしょうか。私は洋服のおしゃれのモチベーションが下がったその時期に着物と出合い、再び装うことが楽しくなったんです。もちろん、お手入れだったりとか面倒くささはあるんですよ。でも、定期的に袖を通せば虫干しなんてしなくても大丈夫。それこそ、お手入れ自体が気分をリフレッシュする時間にもなるんです。Tシャツをサッと洗濯機で洗うのとは違う手間暇。愛情を持って布に向かうのも、いい時間だなと思います」

“外し”を遊ぶおきものの醍醐味

「コーディネートを振り返ると、おきもの1〜2年目は本当に無難でした。何かを利かせると言うより、馴染ませて、馴染ませて、という感じ。今はただ馴染ませるだけでは『うーん、つまらない』となる(笑)。洋服と同じような合わせ方より、どこかで外していくことがやっぱり着物の醍醐味かしらと思うようになりました。バッグもお茶席などルールがある場合は別ですが、和装のものだけにこだわる必要もないですよね。インスタグラムを見ていると、羽織りの裏地や帯揚げにエルメスのスカーフを使ったりして面白いことをやっている方がたくさんいるんですよ。帯留も昔のアクセサリーに自分でパーツをつけてアレンジして作ったり。自由な感覚でいろいろと遊びたいですね」

この日はボンボンストアの白い日傘に味わいあるナンタケットバスケットを合わせて。足元はちらりとのぞく紅い前坪(まえつぼ)が女性らしいパナマ草履。小物のコーディネートにも山崎さんらしい着こなし術が見えてくる

愛用のヘアグッズとビューティブラシ

「長年ショートヘアだったんですが、着物の結い髪に憧れて伸ばしたんです。簡単にまとめられるように、クリップやシュシュなどはaccaのものをよく使っています。今日、合わせているのはインスタグラムを通して知り合った京空間mayukoさんの簪。櫛(下写真)は以前に取材でおじゃました際に購入したよのや櫛舗のつげ製のものです。髪をまとめる際にはブラシを使っていますが、最後に上から整える時には櫛が便利。美しいつげ櫛だと和装気分も盛り上がりますよね(笑)。ヘアケアは一年ほど前からAesopのカーミング シャンプーで洗っていて、頭皮と髪が以前より健康になった気がします。ビューティブラシはファンデーションを塗るために使う資生堂のもの。知り合いのメイクさんに、シミやシワ、小鼻の際もこれでポンポンポンとのせていくだけで綺麗に仕上がるよと教えてもらいました」

左から、資生堂のビューティブラシ、Aesopのカーミング シャンプー、よのや櫛舗のつげの櫛

日常に楽しむ“ふだん着”の着物

「成人式の振り袖が苦しくて大変な思いをしたので、あとは夏の花火大会に浴衣を着るぐらいといった若い方が多いですよね。着物というと、どうしてもフォーマルが入り口になってしまう。友達とご飯を食べるとか、お出かけするとかの“ふだん着”で着物を楽しむ方がなかなかいないんです。だからそんな“中間の経験”の良さを広めていけるといいなと思います。私はお出かけの時はもちろんですが、家で仕事をしていて鬱々となると『よし、気分転換しよう!』と突然着物に着替えたりしてみるんです。そうすると姿勢も良くなって、シャキッとスイッチが入る。家でお客さまをお迎えするときは着物に割烹着で、唐揚げを出したりして居酒屋風に。コスプレ感覚ですね(笑)。ふだん着の着物の魅力については本にも書いてますが、おきもの5年目にして今思うのは、着物に着替えるといつもの何気ない景色ですら違って見えるということ。来年にはオリンピックもあります。大人の日本人女性がキリッと藍の浴衣でも着て観戦してたら素敵じゃないですか? ぜひ皆さんにもそんな日常の着物の楽しみを知ってもらいたいです」

7月のおきもの”い・ろ・は”

い:藍色とは。世界最古の染料と言われる“アイ”はタデ科の一年草。日本の天然藍は蓼藍(たであい)が主。葉を刻んで発酵させた染料を藍瓶に保存し、糸や布を浸し乾かす作業を繰り返して染めていきます。その過程で深さも増していくため、バリエーション豊かな“藍”が誕生。古来より広く愛されてきました。

ろ:夏着物とは。夏用の素材を使った着物。透け感のない縮緬(ちりめん)や紬は6月と9月に、涼しげな絽や紗、透け感のある織物や麻などは盛夏に着ます。この盛夏の着物が一般に“薄物(うすもの)”と呼ばれます。

は:上布(じょうふ)とは。細い麻糸で織られた“シボ”(シワ、凹凸)の少ないものが“上布”、シボのあるものが“縮(ちぢみ)”と呼ばれる麻布です。上布はその名の通り“上等な麻布”。越後上布や宮古上布の伝統技法は、国の重要無形文化財に指定されています。他にも能登上布や近江上布、八重山上布など。

撮影 西田香織
取材・文 石井愛子

山崎陽子さん

山崎陽子さん

マガジンハウスで雑誌『クロワッサン』『オリーブ』『anan』の編集に携わり、フリーランスとして独立。『クウネル』(マガジンハウス)『エクラ』(集英社)『つるとはな』では創刊より編集・ライティングに参加し、女性誌やムック本、書籍の編集を手がけるなど幅広く活躍。その傍ら、スタイリストの佐伯敦子さんと一緒に洋服ブランド、yunahica(ユナヒカ)を手がける。日々のおきものライフを公開したインスタグラムではアイデアに溢れるセンスの良い着こなしが話題に。

著書『きものが着たくなったなら』。ハレの日だけでなく、日常にきものを着る楽しみを教えてくれる、山崎さんの5年の遍歴と知恵が詰まった1冊。技術評論社より発売中

##▼おきものはじめ バックナンバーはこちら▼#{{https://www.cosme.net/a-beauty/tag/%E3%81%8A%E3%81%8D%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%AF%E3%81%98%E3%82%81}}

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