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「お腹の脂肪を取りたいなら、お腹を動かすのがいちばん効果的」。歩きながらお腹を出したり引っ込めたりするだけという「川村式腹ペコウォーキング」。お金も時間も努力もいらないダイエット法で、テレビや雑誌でも人気の川村昌嗣先生に40代、50代のダイエットについてお話をうかがいました。

腹囲-10㎝!『医師が教える50歳からの超簡単ダイエット』

「いつも体が重くてだるい」「好きな服が似合わなくなった」「血圧や血糖値が気になる」。40代、50代のミドルエイジがダイエットを始める理由はひとそれぞれ。でも、みなが同様に口にするのは「若い頃より痩せにくくなった」ということ。

そんな人におすすめのダイエット本が『医師が教える50歳からの超簡単ダイエット』(幻冬舎)。

本の帯には「歩きながら腹筋を動かすだけで、腹囲-10㎝!」の文字。しかも

「食べたい物を我慢したくない!」
「楽に理想の体を手に入れたい!」
「つらい運動はしたくない!」

といった気になる言葉が並んでいます。一体どんな内容なのでしょうか?

ダイエット失敗の最大の理由とは

― 40代、50代になると、ダイエットをしてもなかなか結果が出なくなるのはなぜでしょうか?

まず、「ダイエット」という言葉に惑わされないようにしてください。一口にダイエットといっても「体重を落とす」「サイズダウンをする」「内臓脂肪を減らす」「脚を細くする」など、いろんな意味合いが含まれています。

陸上選手でも100m走の選手とマラソンの選手では、鍛え方が全く違いますよね。目的が違えば、最適な方法も違ってきます。たとえば、お腹痩せのために腹筋をしたり、脚を細くしたいといってスクワットをする人がいます。

例えば、ダイエットのために腹筋を毎日50回やることに決めたとしましょう。本来は“腹筋を動かして脂肪を燃やすこと”が目的だったのに、やっているうちに、“50回を早く楽にこなすため”に、反動を使った腹筋になってしまうということがよくあります。

反動を使うことで、運動消費カロリーは極端に少なくなってしまいます。自分が取り組みたいダイエットを成功させるためには、まずどこをどうしたいのか、どうすることが効果的なのかを明確にすることが重要なんです。

「痩せる運動」と「痩せない運動」の違い

― 腹筋やスクワットでも“痩せるやり方”と“痩せないやり方”があるということですか?

筋肉の動かし方により、『より効率的に痩せるやり方』と『あまり効率的でない痩せるやり方』があるということです。

仕事や運動で、『うまくなる』、『上達する』と言うことは、無駄な動きがなくなることです。車でも燃費の良い車と、燃費の悪い車では、同じ距離を走った時のガソリンの消費量が異なりますよね。

ダイエットのためには、燃費の悪い車に乗る=無駄に筋肉を使ってエネルギー消費量を増やす運動をするとより効率的なんです。

中高年は省エネで動く?

― 中高年の動きは燃費がよくて、省エネになっているということですか?

はい。人の体は動くときになるべく楽に、省エネで動こうとするんです。熟練した動きになればなるほど、ムダなエネルギーを使わない動き方になっていきます。

たとえば赤ちゃんがヨチヨチ歩きをするときは、全身の力を使って一生懸命バランスを取りながら歩いていますよね。これはたくさんの筋肉を使った消費カロリーの多いムダな動きです。だからすぐ疲れて寝ちゃうんです。でも、上手に歩けるようになってくると、ムダな筋肉を使わないで省エネで歩けるようになります。

中高年になると、イスに座るときにドスンと座ったり、立ち上がるときにヨッコイショと反動を使って立つようになります。これは、上手に省エネする動きになっているんです。

試しに、背筋をまっすぐにして、頭の位置を前に持ってこないように注意しながら、膝だけをゆっくり曲げてスクワットをするように座ってみてください。ドスンと座るときと比べ、両足、特に腿にかなりな力を入れていることに気付かれますよね。

イスから立ち上がるときに、頭を動かさず、上半身をそのままにして足の力だけで上半身を上に持ち上げるようにして立ってみてください。かなり足に力がないと立ち上がることさえ困難であることに気付かれると思います。

実は普段、イスから立ち上がるときには、上半身をいったん後ろに引いて後に前に移動させる反動を使って立ち上がっているのです。

いつもの動作で消費カロリーをアップするコツ

― 反動を使わないようにすれば、普段の動作がエクササイズになるということですね

日々の何気ない動作で反動を使わないで動いてみたり、普段使わない筋肉を使いながら動いてみましょう。例えば歩くときに腹筋に力を入れたり、脇を締めたり、肩甲骨を寄せるようにして歩けば、腹筋や大胸筋、背筋を使う歩き方になります。

日常生活の動きの中で筋肉に負荷をかけて体を動かすことが習慣化できれば、余分な時間もお金もかけずに、消費カロリーを増やし、しかも筋肉を鍛えることができます。

早足で歩くと消費カロリーは少なくなる!?

― 日常生活の中でといえば、私も駅まで歩くときに、大股で歩いたり早足で歩くように意識しています。

それは全くの逆効果かもしれません。大股で歩いたり、早足で歩いたりすると、普通よりも消費カロリーが少なくなってしまいます。それよりもゆっくりぶらぶらと歩いた方が、より多くのカロリーを消費することができます。

― どういうことですか?

下の表を見てください。確かに1分当たりの消費カロリーは速足になるほど大きくなります。しかし、家から駅までといったように、一定の距離を移動するときは、早く歩くと早く到達してしまい、運動時間が短くなります。

1kmの移動をする際の消費カロリーは、ぶらぶら歩きが54kcalで大股でサッサと速歩の歩きの47kcalよりも大きくなってしまうのです。

中野昭一、竹宮隆編『運動とエネルギーの科学』杏林書院 1996を参考にして作成

― ちょっとショックです。かなり筋力を使う階段の一段飛ばしも同じですか?

もちろんです。消費カロリー=「運動の強度×運動した時間」です。一段飛ばしをすると、一段ずつ登る半分ぐらいしか時間がかかりません。でも、一段飛ばしは反動を使った動きになるので、運動強度は一段ずつ登るときとさほど変わりません。

一段飛ばしでは、普段使わない筋肉を使ったことによる筋肉疲労が出てくるので、一段ずつ登った時よりも運動した気になります。でも実際の消費カロリーは、時間がかからなくなった分、かえって減ってしまうことになるのです。

早足、大股のウォーキングは危険

― ウォーキングでは「早足」「大股」が効果的だと思っていました。

消費カロリーが減ってしまうだけでなく、早足や大股歩きには、様々な弊害があります。

中高年になると若い頃とは違って、体重が増えているうえに、筋肉や骨も衰えています。これまで運動習慣がなかった人が急にウォーキングを始めると、はりきり過ぎて脚や関節を痛めることがよくあります。

大股で歩くとバランスを崩して転倒しやすくなる危険があります。バランスがとりやすい歩幅で歩きましょう。また、つま先でけってカカトから着地する大股の歩き方は、すり足で歩くときに比べ、着地の際にカカトに数十倍の負担がかかって、カカトを痛めてしまう方が少なからずいます。

歩くときにはクッション性の良い靴を履いたり、勢いをつけすぎないように心がけ、カカトにダメージを与えないように気を付けてください。今の自分の筋肉の強さや身体の状態に合わせた歩き方をすることが大切です。

ダイエットを成功させる二つのテーマ

― 川村先生ご自身も、ダイエット経験者ということですね

下の写真を見てください。自分は48歳までは、いろいろなダイエットに挑戦しましたが、すぐに元に戻って失敗していました。その理由を考えてみると、根性のない私が『我慢と努力』をしてダイエットを行ったからだということに気づいたのです。

そこで、『医師が教える50歳からの超簡単ダイエット』の内容を実践して、三カ月ほどで真ん中の写真のようになりました。その後、少し通勤時の歩き方を変えて、現在は右端のようなからだになっています。この時の詳細は『医師がすすめる48歳からの腹凹(はらぺこ)ウォーキングダイエット』毎日新聞出版で紹介しています。


― ダイエット中もその後も、運動はしていないのですか?

時間を割いて運動することは一切行っていませんし、『食べてはいけない・我慢をしなければいけない』という努力をしていません。『我慢と努力』をしていないので、現在でもリバウンドはしていません。本に書いている『腹凹ウォーキング』+『味わって食べなければ損』という二つのテーマを習慣化しただけです。

― ダイエットでいちばん難しいのが“習慣化”です。どうすれば習慣化することができますか?

私自身、最初はなかなか習慣化できませんでした、でも、同じ時間を過ごすのに、やったら効果が出る行動をやっていない自分がすごく損をしている、やっていない自分がバカだ、と思い込むようにしたことで、この二つのテーマを習慣化することができました。

リバウンドの原因は“努力と我慢”

― @cosmeダイエットにも、いろいろなダイエット法が紹介されています。どれも続けることができれば痩せられそうですが、実際はなかなか長続きしないし、ちょっと痩せてもすぐリバウンドしてしまいます。

リバウンドの原因は「努力と我慢」です。短期間だったら食べたいものを我慢したり、頑張って運動したりできても、「努力と我慢」が必要な状況においては、それが生活習慣として定着していないことを意味しています。

「痩せること」を目的にしてしまうと、いったん目標の体重やサイズを達成してしまうと、今までやっていた「努力と我慢」をやめてしまい元の生活に戻るため、必ずリバウンドしてしまうのです。

人間、やらなきゃいけないと思うことは、まずできない。絶対に長続きしない。でも、価値観を変えれば、自然に生活が変わっていきます。特に人間は、損をしている行動は続けないのです。損をしていることに気付いた時点で違う行動をとるようになります。

現在太っている原因となっている自分の習慣に対して、「自分がいかに損をしているのか」「いかにバカなことをしているのか」を自覚すること、価値観を変えることができれば、その習慣は自然に変わっていくものなのです。

価値観を変えれば行動が変わる

― 価値観を変えるって、具体的にはどういうことですか?

物の見方を変えてみましょう。
例えば下の写真のようにボールペンの尖った方を目の近くで見ていると嫌な気持ちになりますが、このボールペンを逆の方を、同じ距離に近づけてみてみると、先ほどよりは少し嫌な気持ちが減りますよね。

それを、今度は横にしてみてみると、ストレスはほとんど感じなくなりますよね。ボールペンがこういう構造であることは知っているのですから、先端を見続けるのをやめて、横になっている状況を見ていると思い込めば、気持ちはかなり変わってくるのです。

考え方を変えてみましょう。

たとえば毎日ある自動販売機で150円のドリンクを買っていたとします。その同じ商品が裏側にある自動販売機で100円売っていたらどうでしょう? 次からは、百円で売っている自動販売機で買うようになりますよね。

50円の損が許せないから努力も我慢もしないで行動が変わるのです。「損をする」という行動は「続けたくない行動」なので、行動を変える原動力になるんです。

一切れ2万円のステーキ

― ダイエットのためにも、よく噛んでゆっくり食べることが大切だというのはわかっていますが、なかなか実践できません

ここで味わうことを少し考えてみましょう。

味は、舌にある味蕾という味を感じる感覚器に、唾液に溶けた食べ物が到達して感じることができるものです。2~3回噛むだけですぐ飲み込んでしまうと、十分に味蕾で味を感じることはできません。それは、噛んでいる感覚、口の中にある刺激を楽しんでいるだけなのです。

2万円する2㎝四方の牛肉のステーキを一切れだけ食べるとしましょう。(チョコレート、本マグロなど自分が好きな物を想像してください)いつものように食べられますか? 多くの方が、「少しずつ、しっかり味わって食べるよ」と答えられると思います。

ふだんは雑に、数回噛んだだけで胃に落としてしまっているものも、味わって食べるときには、十分に噛み続けられるサイズに小さくして口に運ぶものです。

好きな食べ物を味わわずに胃に落とすなんて、すごく損をしていると自分に言い聞かすことができれば、早食いやドカ食いを避けることができると思いませんか? 

― うまくイメージがわかない人はどうすればいいですか?

こういった想像がお好きでない方は、普段の大きさの1/4に切って食べられることをおすすめします。一口分が1/4の量になれば、普段と同じスピードで飲み込んでも、4回食べ物が口に入り4回噛むことになります。

食べ物の種類によって唾液の分泌量は異なりますが、同じものを違う量で口に運んでも唾液の分泌量はほとんど変わらないので、唾液の量も4倍相当量になります。

その上、4個に切れば、4倍味わって食べることができるのです。

人によって価値のあるもの、大切なものは違います。だから自分はどうすれば意識が変わって行動が変わるのかをよく考えることが大切なんです。

まとめ

ダイエットはまずやってみること。結果が出なかったり、続けられないときには、目的と方法を見直してみること。どこに原因があるのかを考えて、自分に合ったやり方に修正・アレンジしていくことが必要という川村先生。

次回はいよいよその第一歩となる「川村式腹ペコウォーキング」のやり方と成功する秘訣をご紹介します。

川村昌嗣先生 プロフィール

1960年高知県生まれ。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学医学部内科へ入局。けいゆう病院健診科で副部長を務め、市民講座では「リバウンドしないダイエット」をテーマにダイエット指導を行い、自らも48歳で腹囲マイナス17cmに成功。現在は川村内科診療所理事長。『医師がすすめる48歳からの腹凹(はらぺこ)ウォーキングダイエット』毎日新聞出版、『医師が教える50歳からの超簡単ダイエット』幻冬舎など著書多数