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美容ジャーナリスト齋藤薫さん特別寄稿。 じつはブラウンほど奥が深く難しい色はない。
ちょっとでもズレたら、その人がキレイに見えない不思議な色。

今のアイシャドウ市場には、ブラウンがあふれている。色をのせて、メイクを遊ぶことより、正しくメリハリをつけて顔立ちそのものを美しくすること自体がテーマになったから。いやアイメイクの本質は昔からそこにあって、だから私はずっと自分のブラウンを探し続けてきた。以前はブラウンが極端に少なかったから。
でも正直を言えば、今なお自分のブラウン探しは終わっていない。なぜならブラウンほど奥が深く難しい色はなく、自分にとって理想のブラウンはそうそう簡単には見つからないから。一見同じように見えるブラウンでも、ほんのちょっと赤みが強すぎたり、黄みに寄りすぎたり、また微妙な質感や濃度のズレだけでも、人はキレイに見えないのだ。
ちなみに腫れまぶたの私の場合、そうしたブラウンのちょっとしたズレだけで、たちまちむくんだように見えてしまう。極端な話、ブルー等のほうがよほど簡単。どんなブルーでも失敗にはならないが、ブラウンの失敗はとてもよくあることなのだ。それも、顔の影、肌色の影を厳密に再現しなければならない色だから。厳密に言えば、顔の影は純粋なブラウンでは無い。もっともっと複雑な色だからこそ、一色でその影を表現するのは無理なのかもしれない。
そういうことを踏まえた上で、ブラウンの色設計を徹底して極めたブランドでなければ、私は信じない。そこにしか、自分のブラウンはきっと無いだろうから。

齋藤 薫さん

女性誌編集者を経て、美容ジャーナリスト・エッセイストに。各メディアで多数の連載を持つ他、公認＠ビューティストとしても活躍中。