
森鴎外といえば、なんだか無骨な印象がありました。
その鴎外に、やられた、と思った小説を、おひとつ。
明治44年に連載された『雁』より抜粋いたします。
女には欲しいとは思いつつも、買おうとまでは思わぬ品物がある。
そう云う時計だとか指環だとかが、硝子窓の裏に飾ってある店を、女はそこを通る度に覗いて見るのである。欲しいと云う望みと、それを買うことは所詮企て及ばぬと云う諦めとが一つになって、或る痛切で無い、微かな、甘い哀傷的情緒が生じている。女はそれを味わうことを楽しみにしている。
それとは違って、女が買おうと思う品物はその女に強烈な苦痛を感ぜさせる。
女は落ち着いていられぬ程その品物に悩まされる。縦(たと)い幾日か待てば容易く手に入ると知っても、それを待つ余裕が無い。
はあ、まったくその通りでございます、と、わたしのような女は納得してしまうわけなのですが^^; 春物を前に、みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
この、欲しい物、と、買いたい物、の、違いって、ありますよね。
なんなんでしょう。手に入れたい、と思うものって、強烈に、欲しい、って思えることがありますね。それとは別に、欲しいけれどあのディスプレイに置いてあるのがいい、なんて思えるものも、ありますね。
ジブリ映画『魔女の宅急便』の主人公キキが、ショーウィンドウに飾られた、赤いりぼんのついたエナメル靴を見ている気持ちは、強烈ではない、憧れの方。けれどその後に、同世代の女の子たちとすれ違って「もっとマシな服ならよかったのに」とガラスに映ったじぶんを見てつぶやく頃には、あの靴が、欲しい、ものに変わってたりするのかもしれませんね。

さて、予約して参りました。
帰宅すると、ちょうどゲランからDMが届いていて驚きました。
予約したのは、エクラン キャトル クルール 限定2種。
バイオレットが美しいパレット。
各雑誌で見ていたのと、同じ印象でした。これは買い。

カーキは玉砕覚悟です。
予約だけ済ませたので、タッチアップもなし。ばかですねえ。
おまけにクチコミもできなくてすみません。
でも、鴎外は知ってるもんね。
それが買いたかったんだよね、って。
ちなみに、この小説は買い物依存症の女の話、などではありません。恋愛小説です。
自殺まではかり人生のどん底だったお玉という女が、高利貸しの末造に望まれ妾になるが、淋しい女中との暮らしの中での楽しみは、格子窓のむこうを通る大学生の岡田を見ること。岡田との挨拶程度のものから、お玉は次第に心を寄せてゆきます。
その一節が、冒頭でご紹介したところ。そのすぐ後に、次のように続きます。
岡田はお玉のためには、これまで只欲しい物であったが、今や忽(たちま)ち変じて買いたい物になったのである。
買いたい、と思える男性と出会えるほど、素晴らしいことはないですね。
鴎外も、にくいね。
のうまさん
とめこっこさん
のうまさん
のうまさん
nm73さん
のうまさん
のうまさん
のうまさん
ママ。9817さん
のうまさん
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美容で癒されたい人。
わきんぼうやさん
ブルームーンJさん