
苦しかった十数年の労働の汗のかなたに見つけた秘密の入り口
とんがりぼうしのカラオケボックスの中に隠されたあの秘密の部屋こそ
コスメの王国へ旅立つキャビン
スピルバーグの世界に一番近いのにスピルバーグも知らない不思議な空間
そこでさくらんぼの化粧ボックスのなかからアイテムを取り出し
タイムスリップとセクシャルトリップを同時にする
箱の中にはお友達がたくさん
みんなわたしの忍者たち
洗顔フォームにはじまって化粧水、化粧下地、美容液、ファンデーション・・・
コンシーラーに、アイシャドウに、チークに、アイライン・・・・そしてウイッグ
その他にもいっぱい
そして最後のつけまつげを押し込んだとき
人間が生まれる数億年前からあるもっとも自然なエネルギーに灯がともる
七色の火花がばちばち脳裏に炸裂し
現実と空想の間の38度線に巨大なサイが音なく投げられる
まぶたの大門がやっと開いた瞬間
不思議の恋人がいつのまにか鏡の向こうからほほえみかけている
つらかった悲しいさまざまな過去を一度に押し流してくれた鏡のむこうの姫
そして迷えるおっさんの今と未来を
銀色のグローブで指し示してくれた鏡のむこうの姫
さあ、ひとつになって、いまから出発だ
小豆色の阪急電車はお嬢さまのエクスプレス
ネオンをほのかに移す淀川のむこうに大きな観覧車がみえる。
そしてレトロな風貌の阪急デパート
男装の麗人の巨大な看板が女装子を迎える
そこはまるで銀河鉄道の惑星大アンドロメダステーション
そう、あの巨大な阪急梅田駅に吸い込まれて
梅田、梅田、夜の梅田
そこはパートタイムプリンセスの夢の舞台
それはあたしだけじゃない
今日もこの街で
鏡からとびだしてきたたくさんの姫たちが欣喜雀躍の輝きを放つの
でもそれはちっとも不思議ではない
プリンスが女の子の世界の中に生きているように
プリンセスは男の子の世界の中に生きている生き物なのだから
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