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シャネル ルージュ ココ #49 リエゾン(画像上)#48 サンティマン(画像下)

ルージュ ココをつけるたびに思うのが、大人の色気だな、ということ。ムンムン、みたいなことではなくて、しっとりとした色香という印象です。


先週ひさしぶりに映画を二本、はしごして観ました。

午前中に観たのが、『ヒッチコック』。わたしの大好きな爆笑問題の太田光さん、太田光代さんご夫妻(もちろん相方の田中さんもいました)が、PRされていたので、ちょっといいな、観てみようかな、という程度に思っていたのですが、これが、わたしにとっては本当に良い映画でした。

ヒッチコック監督が映画『サイコ』を完成させるまでを軸に、ヒッチコック監督と、巨匠であり、その夫を支えた妻アルマのお話。

「夫を支えた妻のお話」とか「武将よりも実権をにぎっていたのはその妻だった」とか、あるいは「武将は実は女性だった」とか、そういった類のものはあまり好きではなかったんです。ひねくれたことを言うようですが、女性からの視聴率が欲しいのかな、と思えてしまって。すみません。

そんなひねくれたわたしにも、ヒッチコック夫妻のお話は、すとんと胸におりてきて、うっかり何度も涙してしまいました。

夫婦のことですので、映画に描かれていることがすべて実話だとは思いません。
けれど、登場人物としてのヒッチコック夫妻の「人間らしさ」は真実だと思えました。

何十年も連れ添った夫婦に、「愛」とか「恋」とかのドラマ的な大袈裟な言葉ではない、なにか別の、でもその言葉よりもとてつもなく大きなちからを持った、それもとてつもなく複雑な心情があること。そして、ふたりがとっても純粋であったこと!


女性なら、わかるなあ、と思ってしまう、一場面をご紹介いたしますね。


配給会社から、映画『サイコ』を撮るなら援助はしない、と言われたヒッチコック監督。
自宅のプールで水浴をしていた妻アルマが「もう新しい水着を買わなくちゃ」と言うと、ヒッチコックは「今のうちに好きなだけ泳いでおけ」と答える。驚くアルマ。「どういう意味?」監督は、配給会社の意向を話し、『サイコ』の制作費を自腹で払うと言う。『サイコ』じゃなきゃだめなの?という妻の問いに、どうしても撮りたいんだと答えるヒッチコック。アルマは少し考えて答える。「売るのはプールだけ?それともこの家全部?」


記憶が少し曖昧なのですが、たしかヒッチコック監督が主演女優と楽しそうに話しているのを見た妻アルマが、その後、水着を買いに行くシーンに移ります。

はじめは紺色の、スクール水着のようなデザインのものを見ていたアルマが、マネキンが着ている真っ赤な水着をちらりと見てから、ハンガーラックにかかっているマネキンと同じ水着を探して「ああ、これね」なんて興味のない顔をしてから、その水着の大胆なデザインに「さすがに、こんなの、ちょっとね」と苦笑した顔をして画面から消えたアルマが、川魚を狙って獲る鳥のように、さっと真っ赤な水着を持ち去ったとき、それはもう、あっぱれ!と思いました。

自宅のプールで、ショーウィンドウのマネキンと同じ水着を身につけた女性が一人。
大胆に肌が露出したデザインに、鮮やかな赤の色。シワの刻まれた顔、すこしずれた、ゆるやかな曲線の体。
この時間はもう戻ってこないかもしれない、わたしは夫と共にすべてを失うかもしれない、という思いを、まっすぐに泳ぎきるアルマ。


映画監督の夫の側に、何十年も妻として、また仕事のパートナーとしていて、その夫の映画で一切を失う覚悟はあっても、ひとりの女性として失いたくないものってあるんじゃないかな、と思いました。それが年甲斐のない水着を着てプールを泳ぎきるということだったとしても。


シャネルの新作リップのコンセプトは、映画の主役のようになれるリップ、ということですが、だれもが、わたしが、わたしの人生の主役なんだって思える一瞬があるべきで、それは、年甲斐もないと思われるような真っ赤な水着でもいいし、ちょっと似合ってないリップでもいいんじゃないかと思うんです。

先述の、わたしの大好きな爆笑問題の太田光さんの「人生はアドリブだ」という言葉が好きです。台本なんてなくて、人生はいつでも一発撮り。失敗してもいいじゃん、アドリブなんだもん、という心強い言葉に思っています。

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コメント(17件)

  • いつもながら、のうま様の記事には、何か心を打たれます。
    水着を着てプールを泳ぎきる妻の姿、同じ女として、何か胸に迫る感慨がありますね。もちろん、私はその心意気の足元にも及びませんが。。。

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    2013/5/10 16:41

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  • 美々姫様、コメントありがとうございます。とてもうれしいです。わたしも生意気なようですが…美々姫様のおっしゃること、わかります。何度も頷いてしまいました 笑。なんというか、なんでしょうね、失いたくないって思います。そしてそれは悪いことではないと思っています。ココ、愛用するのにぴったりのルージュですね。

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    2013/5/7 14:37

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  • 続きです)本当にそうですよね。自分自身の物語だということ、忘れてしまいがちです。解き放たれたいですよね。すぱっと。いくつになっても、その気持ちを忘れずにいたいと思います。

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    2013/5/7 14:34

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  • ★ぱちこ★様、コメントありがとうございます。とってもうれしいです。お気持ち、とってもよくわかります!わたしも昨年の秋から赤リップの流れに乗っていて、もしも似合うようならいいかな、という気持ちでタッチアップしたサンティマンが新鮮に思え、なんとなく落ち着いたので、購入してしまいました^^;笑。(続きます

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    2013/5/7 14:32

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  • (続きです)わたしも恋愛とはいえませんが、あの曲を聴くと、苦い、なんというか、なんとも言えない気持ちがして、好きなアーティストの歌なのに以来聴いていない、という曲があります^^;笑。映画や曲や場所や、そういったもので呼び起こされてしまうものがありますよね。不思議ですね。

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    2013/5/7 14:28

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  • いちじく小町様、コメントありがとうございます。とってもうれしいです。『めまい』は観たことがなくって…!観なくては、ですね^^ 『裏窓』は、後ろからひたひたと忍び寄られるような緊張感と、グレース・ケリーの信じられない(!)美しさが印象的でした。封印していらっしゃったのですね。(続きます)

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    2013/5/7 14:25

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  • 続きです)それが、共有できるものというか、そういったものなのかなと思います。不思議ですね。ココ、わたしも最近デビューしたばかりなのですが、素晴らしいですよね。お好きな方がたくさんいらっしゃるのを納得いたしました^^わたしはシャインにはいつも撃沈してしまうので、シャネルはココ一筋になりそうです 笑。

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    2013/5/7 14:20

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  • tifoone様、コメントありがとうございます。とってもうれしいです。わお!チェックされていらっしゃったのですね。ぜひご覧になってみて下さいね。実体験からの感想、素晴らしいと思います。わたしは、夫婦というのは、個々人なのに、なぜか「夫婦」というひとつの生き物のようだと感じております。(続きます)

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    2013/5/7 14:17

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  • i.neco様、コメントありがとうございます。とってもうれしいです。そうですね。『ヒッチコック』は、映画館の大きなスクリーンで是非、というよりは、心が欲した時に、いつものソファやベッドで、リラックスして観るのが似合う映画かもしれません^^ でも、おすすめ致しますよ♪ぜひぜひご覧になってみて下さいね。

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    2013/5/7 14:14

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  • Nakanecco様、コメントありがとうございます。とってもうれしいです。お優しいお言葉、ありがとうございます。もったいないです^^; Nakanecco様のリップ記事、いつもたのしみに拝読させて頂いております。そして素敵なリップ写真!本当に、かわいらしくって、うらやましく思います…♪

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    2013/5/7 14:11

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  • 763様、コメントありがとうございます。とってもうれしいです。何度も読んで頂けたなんて、本当に、うれしいです。誰でも主役なのだということ、忘れてしまいがちですよね。それを思い出させてくれた映画でした。そしてまた、それを思い出させてくれるのが、わたしにとってはリップかな、と思ったりしております^^

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    2013/5/7 14:09

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  • 何だか読んでてジーンと切なくなるエピソードですね・・そのヒッチコックの妻のアルマの水着の話。。分かるなぁって言うと偉そうな生意気な意見ですが・・女性なら一瞬の煌きみたいな人生を大切にしたい、失うかも知れない今を、女である瞬間を生ききりたい想いがありますよね。ルージュ・ココ私もかなり愛用してますよ♪

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    2013/4/27 11:09

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  • ヒッチコック作品を初めてみたのがめまいでしたが衝撃でした。トップのまばたきの映像も。彼のミステリーは最高ですね。裏窓もみましたがめまいが一番好きです。が、ヒッチコックには過去の苦い恋愛の思い出もあり封印してましたが再びみたくなりました。ご夫婦の話とは!この映画チェックしたいと思います。

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    2013/4/24 22:59

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  • 画像のルージュココ、いいお色ですね。私も先日ココとアリュールを購入しました。しっとりとした色香とは、シャネルにぴったりの表現だと思います。ココをつけてみて、もうココシャインは買わない!と思わずひとりごちました(笑)

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    2013/4/24 16:17

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  • ヒッチコック、観たいな、と思っていましたがのうま様のレビューを拝読して、一層観たくなりました。映画館苦手なので、DVDでゆっくり観ます。言葉を超える大きな力、は確かに存在すると思います。実体験から得た感想で恐縮ですが、そこには、通じ合う気持ちというか、共有できるものが確かにありました。(続きます

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    2013/4/24 16:17

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  • 久々にとても良い記事を目にした気がします。とても記事の構成がよくて最後の読みいってしまいました。偉そうにすみません。エッセイのようでおもしろかったです。

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    2013/4/24 10:17

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  • とってもすばらしい記事でゆっくり何度も読んでしまいました。ヒッチコックはどんな映画かも解らないですが、無声映画の白黒画面で赤い水着だけがカラーの映像が頭に浮かびました。誰でも主役。人生アドリブ。
    忘れないように過ごしていきたいです☆心が温まりました。ありがとうございました。

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    2013/4/24 09:19

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