個人的な好みになってしまいますが・・・
こんにちは。
質問されてから１ヵ月も経ってしまったので、もう満足いく回答が得られたかもしれませんが・・・。
サクサク読めるエンタメ小説から、まったく別のものを、となると、重厚な純文学になってしまいますかね。
でも、三島とか太宰とかドストエフスキーを薦めてもアレなので、純文の要素が強いけれど、グングン読めてしまう近現代の作品をおススメしたいと思います。

わたしが最近読んだ作品で、一番「もっていかれた」のは、町田康の「告白」です。
これは大阪の河内地方で明治時代に実際に起こった「河内十人斬り」という事件を、犯人を主人公に新しい解釈で書いた物語です。
「人はなぜ分かり合えないのか」「なぜ人が人を殺すのか」という普遍のテーマが、洒脱なユーモアの下に蠢く、けっこう重い小説なんですが、辛気臭さを感じさせない町田康さんのリズミカルな文章で一気に読めてしまいます。

あと、もっと短いものだと、今村夏子さんの「こちらあみ子」などどうでしょう。
周囲と折り合えない少女の物語ですが、古いテーマを扱っていながら、とても新しい小説だと思いました。
夏になると必ず読んでしまうのは、車谷長吉「赤目四十八瀧心中未遂」です。
これは、風通しの悪い男女が、風通しの悪い人生を抱えて、心中するために瀧に行くという、世捨て人の場末ロードムービー(映画じゃないけど)のような趣。

恋愛小説なら、古い作品になりますが、田辺聖子さん「言い寄る」など、どうでしょう。
風俗に時代を感じますが、自立的で魅力的な女の子たちが奮闘する、立派な「ガールズ文学」です。とは言え、決して薄っぺらくはありません。
現代女子にも通じる恋のきらめきが瑞々しく散りばめられていて、大好きな作品です。(ちなみに「苺をつぶしながら」「私的生活」と続く三部作)

宮本輝さん「幻の光」は、夫に先立たれた未亡人が、能登(だったと思う)の優しい漁師の後家になるのですが、心のなかではずっと死んだ夫のことを想っているという。これも女性の描き方がとても魅力的で、切ない小説です。


変わり種だと、舞城王太郎「好き好き大好き超愛してる」。好みはかなり分かれると思いますが、ポップかつ深遠です。

好きな小説を長々と並べただけになってしまいましたが(つい白熱してしまいました)、どの作品完成度が高く、読みやすい作品です。(舞城さんはやや異端ですが)
参考になればと思います。