
これまでの連載の中で「漢方薬で体のバランスを整えることが、冷えを改善する第一歩」ということを学んできました。ここでは、実際に漢方を生活に取り入れるために知っておきたい疑問を探っていきます。株式会社ツムラのヘルスケア部・光永亨洋さんに、一問一答形式で伺っていきましょう。
どこで買えるの?副作用はないの?漢方初心者Q&A

Q1.「漢方」は一般的な薬と何が違うのですか?
A. 一般的な薬(合成薬)は、例えば発熱には解熱剤などひとつの症状に対して1剤を投与するといった単一成分です。一方、「漢方薬」は、自然界にある動植物や鉱物など「生薬」と呼ばれるものを複数組み合わせることで、からだ全体のひずみを整え、調和を図ることで症状を取り除きます。漢方薬の特徴として最も重要なのが、この組み合わせです。生薬の組み合わせを変えることによって、薬効が高まったり、複数の症状にひとつの漢方薬で対応できるのです。
Q2.漢方薬はどこで買えるのですか?
Q3.市販の漢方薬と医療用の漢方薬はどう違うのですか?
A.多くの処方で生薬の構成比は同じですが、一日の服用量が違います。医療用は患者さんに合った漢方薬を医師の診察に基づいて処方するのに対し、ドラッグストアなどで購入できる市販のものは、薬剤師や登録販売者へ相談しながら個人の判断で選んで購入するので、安全性をより高めることを考慮し、1日の服用量を調整しています。

Q4.漢方薬に副作用はありますか?
A.漢方薬にも副作用はあります。「証」(体質やタイプ)や症状に合わない薬を使ったり、大量に使い過ぎたり、薬の組み合わせが悪かったりすると、さまざまな症状が起こる場合があります。漢方薬は薬ですので、服用中に気になる症状が現れた時には医師や薬剤師に相談してください。
Q5.漢方薬は長く飲み続けないと効果はないのですか?
A.「漢方薬はゆっくりと時間をかけて効くもの」と思っている人が多いようですが、風邪などの急性の病気に対しては即効性があり、数時間〜数日で効く漢方薬(風邪に効く「葛根湯(かっこんとう)」や、二日酔いに効く「五苓散(ごれいさん)」など)もあります。慢性の症状や病気でも 2週間から1か月くらいで徐々に効果が出始めます。
ツムラ漢方
【効能・効果】
体力中等度以上のものの次の諸症:
感冒の初期(汗をかいていないもの)、鼻かぜ、鼻炎、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や肩の痛み
ツムラ漢方
【効能・効果】
体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う次の諸症:
水様性下痢、急性胃腸炎(しぶり腹(※))のものには使用しないこと)、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔
(※)しぶり腹とは、残便感があり、くり返し腹痛を伴う便意を催すもののことである。
Q6. ツムラの漢方薬の品質管理について教えてください
漢方薬のもととなる生薬は自然のものですから、産地や管理体制によって成分にも違いが出てきます。ツムラの場合、漢方薬の有効性や品質が一定となるよう、自社で契約している産地から原料となる生薬を仕入れ、栽培などの記録を収集・保管しています。また、製造工程においても品質管理を徹底し、残留農薬や放射性物質などについて測定しています。特に残留農薬については国で定められた基準以上の測定をすることで、お客様に漢方薬を安心して飲んでいただけるように取り組んでいます。

Q7.漢方薬はどのように飲めばいいですか?
A.一般的には水またはお湯と一緒に飲みますが、症状によって、水の温度を調整することが推奨されます。体を温める処方の薬を飲む場合や冷えがある・発熱がある場合は熱いお湯で、吐き気や出血のある人は冷たい水で服用するとよいでしょう。
Q8. 漢方薬を2種類以上飲んでも良いでしょうか?
A.漢方薬の組み合わせには注意しましょう。副作用が出る可能性もありますが、たとえば体を温める漢方薬と、体の熱を逃がす漢方薬を一緒に飲むと、それぞれの薬効が相殺してしまいます。組み合わせるなら多くて2種類までとされていますが、いずれにせよ医師や薬剤師に相談して服用しましょう。
漢方薬は見慣れない名前のものも多く、さまざまな種類があるため、これまで「私には難しいかも…」と距離を置いてしまっていた人もいるかもしれません。しかし、正しい知識を身に着ければ、決して難しいものではないことに気づくはず。むしろ日本人の体質や生活様式に合わせて進化してきた医学なので、西洋医学では病気と診断されないような不調にも効果を発揮できる場合もあるのです。
もちろん、漢方薬が体のすべての問題を解決できるわけではありませんが、西洋医学とは異なるアプローチのひとつとして、体調の改善に役立ててみる価値はありそうです。「もしかして、これって冷えが原因かも?」と思う不調があれば、まずはお近くの医療機関や漢方薬局に相談し、自分の症状に合った漢方薬を処方されてみてはいかがでしょうか。
お話を伺ったのは…

光永亨洋さん
2008年4月株式会社ツムラ入社。薬剤師資格取得。医薬営業として活動後、ヘルスケア学術担当として、漢方勉強会の講師等をおこなう。
取材・文/芳賀直美
出典:ツムラ ツムラ漢方 総合情報 −@cosme(アットコスメ)−