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乙一『花とアリス殺人事件』

乙一『花とアリス殺人事件』

花とアリス殺人事件/小学館



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石ノ森学園中学校に転校してきた有栖川徹子(通称:アリス)。しかし、転校早々クラスメイトから嫌がらせを受けるようになる。彼女の席に呪われた噂があるようだ。そんなある日、アリスは、自分の隣の家が『花屋敷』と呼ばれ、怖れられていることを知る。彼女は、ある目的をもって花屋敷に潜入するが、そこで待ち構えていたのは、不登校のクラスメイト・荒井花(通称:花)だった。


久しぶりに乙一の新刊が出てる!!と思って手に取ったら、岩井俊二監督のアニメーション映画「花とアリス殺人事件」のノベライズでした。


そしてこれ、「花とアリス」の続編なのかなと思ったのですが、「花とアリス」より前、二人の出会いの頃のことを描いた前日譚だったんですね。


ちなみに岩井俊二監督の映画は未見です。


史上最強の転校生・アリスと史上最強のひきこもり・花の出会いの物語。


転校した中学のクラスで嫌がらせを受けるアリス。
そしてその嫌がらせが4人の妻に殺されたというユダの呪いの噂が絡んでいることを知ったアリスは、ユダのことを調べ始める。


ライトノベルのような感じでさくっと読めました。
そしてアリスと花の出会いはこうだったんだーと知ることができてなんだかちょっぴり嬉しい気分だったりも。


ストーリー自体は岩井俊二監督の「花とアリス殺人事件」に沿って描かれているので乙一の作品らしい感じというより、「花とアリス」の世界感の方が断然強く、むしろ岩井俊二の世界観を壊さないようにノベライズされていました。小説を読みながらきちんと画が浮かんでくるのはさすがです。


そしてタイトルに「殺人事件」とはあるものの、残虐なシーンは全くなくて、中学生の青春物語的な雰囲気の方が強く、タイトルと内容とのそのギャップがまたよかったりもしました。


それにしてもアリスは強い。
そしてすごく客観的に物事を見ることができる冷静さがカッコイイかと思えば、ヌケてるところもあって、そこがまたアリスらしくて良かったです。


正直ユダの呪いとか、睦奥睦美の魔界から蘇った話とか、実際私がそのクラスの生徒だったとしたら信じるかなーと思っちゃうぐらいのファンタジー要素満載だったりするのですが、アリスの軽快な会話が心地よいんですよね。


また、「湯田」だとそんなに謎めいた感じはないのに「ユダ」となると一気に印象が変わったり、アナフィラキシーを「穴開き」だと思って聞いていたりするのは小説ならではの楽しさだったりしました。


最初の方は怪しげで怪奇っぽい雰囲気もあった「ユダ」や花屋敷の少女、花の存在。
そこに堂々と飛び込んで行ったアリスの勇気に脱帽です。


二人がユダを探す旅に出た中で強烈に印象に残ったのは、暖を取る為にトラックの下にもぐるシーン。若い、弾けるぐらいに若い!そしてユダに言われた言葉を愛の告白だと勘違いして幸せに浸っちゃうところなんか、まさに「花」で可愛かったな。


アリスはアリスで、花は花で、蒼井優と鈴木杏を想像しながら最後まで読めたのでとても楽しかったです。


ちなみにあとがきによると、映画に採用されなかったシーンが入っていたり、脚本からひろい集めたシーンがあったりするようで、そのちょっとした違いを楽しみたく、映画も観てみたいです。


★★★

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