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家族がいる、ということ。

家族がいる、ということ。

夫が海外出張に出かけたその日、仕事で釈然としない出来事があり、どうしても納得できない私は悶々とした。
若い頃は職場でのストレスを引きずってしょっちゅう辞めたいと思っていたけど、この年になると「ま、そういうこともあるわよね」と経験で流せることがほとんど。
なので、今の私にとって流せない思いがあるのは結構な問題だった。

残業で思い身体と心を引きずって帰宅すると、玄関に革靴。
隣県に住む次男が就活で帰って来てスーツ姿でソファに寝そべっている。
あのー。私ヨガに行くつもりなんだけど。
夫がいない一週間、家事をサボるつもりが座る間もなく仕方なくキッチンに立つ。

スマホ片手の次男が話す就活の様子を背中で聞きながら食事を作るうち、あのね働くって甘くないのよ、とアドバイスどころかつい愚痴が出てしまった。

私の愚痴は食事中ももはや独り言のようになり、ヒートアップ。
ひととおり聞いたあとで次男は言った。

「ま、いろいろ大変だよね」


学生の分際でお前が言うか、と私は笑った。


たわいもない会話をし、食事を終えてヨガに。
帰ると頼んだ通り、お風呂は沸いていた。
入浴後、階下にいる次男の存在を感じながら、私は眠った。

もしあのまま誰もいない家に帰って一人で過ごしていたら、きっと何もする気になれず、残り物のご飯と納豆を食べて、入浴中も、ベッドに入っても引きずっていたかもしれない。

癒される存在だった、幼い息子はもういないけれど、彼はもう私にとって、仕事の愚痴も言える相手になった。

翌朝、説明会に行ってそのまま下宿に戻るという次男に、

「気が紛れて助かったわ。たまーにでいいから帰ってきてね。」

と言ったら、

「忙しいんだよ」

と笑った。


夫婦二人暮らしで夫が長期出張だと言うと、友人は決まって「いいなあ~」と。
それは海外に行く夫ではなく、私に対して。
世の中の主婦がいかに毎日エンドレスで続く家事から解放されたいと思っているかだろう。
自由になりたい、それはどの女性も思う。
自分だけのペースで暮らすことは確かに自由だけど、その自由の裏には「時間」がある。
その「時間」の中にいるのは自分だけで、そしてその「時間」はいつも平穏とは限らない。

家族の健康を思って食材を選び献立を考え、その全てが美味しく食べられる時間を見計らい食事を作る。
それはとても簡単そうに見えて、365日になると結構大変だ。
一方で実は家族がいて家事をするから自分が健康でいられるということもある。
そしてその家族が家に「いる」だけで、自分が楽になれることもあるのだと思う。

それは多分、一人になってみないとわからない。


仕事に行けばまた、嫌な思いは蘇る。
夫が出張から戻ったら相談しようと想っていたのに、いざ夫の顔を見たら言わなくてもよくなった。
夫はきっと、いや絶対に私を否定しない。
それがわかるからだ。

今朝も心のどこかに絆創膏を貼って出勤しようとすると、玄関先のユキヤナギに花が咲いていた。
春なんだな。花粉もあと僅か。
もう少し暖かくなったら、また夜桜見にドライブに行こう。
今の私にとって、たったひとりの家族の夫と。









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