ゲラン エクラン キャトル クルール #500 トゥーランドット
クリスマスコフレですが、普段使いもできる、本当に使いやすいパレット。
なのでお仕事の日にも、このアイシャドウ。使いやすいなあとばかり思っていましたが、休憩中に鏡をふと見ると、なんだかブラウンの奥に、きらり、と光る何かが。これは、ただものではないぞ。
このシャドウは、ヒロイン・リウをイメージしたとのことでしたが、冷たい心を持った姫君とは思えない暖かで柔らかな色合い…と思っていたのですが、こちら、使えば使うほどそれだけではないな、と思えてきました。
それまでは、普段、横割りで塗っているので、そのまま横割りで使用しておりました。
アイホールに左ゴールド→中央上ローズ、二重幅に中央下プラム、目尻に右ブラウン。こちらは落ち着いた印象。
それが縦割りだと印象が変わってくるのです。
縦割りの、目頭からアイホール真ん中まで入れた、左のゴールドが効いてくるんです。
ギラギラしないのに華やか。目元が明るく、上品に輝きます。そして真ん中上のローズの驚くほど柔らかな粉をアイホール真ん中から目尻まで入れると、陰影がついて、更にゴールドを引き立てる。
普段、横割りで塗るためか、縦割りで塗ると、こんな目だったの?! と、びっくりして鏡を覗きこんでしまいました 笑。
冷たい心を持った姫君が真の愛を知る。彼女の内に、彼女自身も知らない情熱を秘めていたのでしょう。
このパレットはまさにそれ。ふた通り、こんなふうに楽しめるなんて驚きました。
そんなふたつの心をお持ちだったのでは、と思っているのが、大好きな小説家、岡本かの子さん。
不思議な魅力のあるお顔をされていますよね。
真っ赤なリップをつけてるように想像しますが、よくお似合いだと思います。
岡本かの子女史について。
歌人であり、小説家であり、仏教研究にも熱心で随筆も多く残されています。
そして『太陽の塔』で知られる芸術家 岡本太郎さんのお母様でもあります。
太郎氏の父 岡本一平氏も、当時は「宰相の名は知らなくとも、岡本一平の名を知らぬ者はいない」というほど一世を風靡した漫画家でした。
そうして、驚くほどの美男子であったとか。一平氏のお姉様方もそれはそれは美しい方ばかりだったそうです。
瀬戸内寂聴さんの、かの子女史の伝記を読んで、とても印象的であったのは、
かの子女史の後年のこと。編集者の方が岡本家に来ていた。来客をもてなすのは必ず一平氏であった。一平氏が、真剣な顔をして「今度の かの子の小説、読んでくれましたか」と訊く。編集者は読んでいなかったので、正直に答えた。「では、読んでください」と、一平氏は真剣な面持ちで、かの子女史の『老妓抄』を手渡した。あの一平氏の頼みである。編集者はしぶしぶ読みはじめた。素晴らしい内容だったが、一平氏に「どうですか」と息を呑むように訊かれ「まあまあですな」と答えた。一平氏は落胆の色を隠せず、「そうですか」と言った。
そこへかの子女史が来て、歯ブラシを持った手をぷらぷらさせて、「パパァ、歯磨き粉がないの」と言った。一平氏はすぐに立ち上がって、台所へ行った。
ーという内容でした。引用ではありません。
わたしの記憶ですので、へえ~っという程度にお聞きくださると幸いです。
かの子女史、40代の頃のお話ですが、なんとも小さな娘のようで、ぎょっとする驚きとともに、ふっと笑ってしまうエピソードだと思います。
失礼ですが、こんな幼稚な一面とは程遠い彼女の文学。
大人だけが読むことを許されるような、けっして難しいという意味ではなく、高い感性で描かれた、清らかな川のように美しい物語。ひとのいのち、という普遍的なテーマをもった作品です。
岡本かの子女史も、一平氏との大恋愛など、純粋すぎるゆえに何事にもすべてを傾ける情熱を持ちながら、小説では冴え渡るような冷ややかな静けさを持ちあわせていたように思われます。静かながら、内に秘めた情熱を感じさせてくれる作品も数多くあります。
内面も外見も、一面だけではない、多面体での美しさを求めていきたいものですね。
のうまさん
美々姫さん