
記憶から薄れゆきそうな東日本大震災の裏にはまだ...放射線被爆を小説に学ぶ
2011/12/13 05:47
もっと知らなければいけないから...
まだ終わってない、終わることがないから...
本日ご紹介したい本は、先に別のカテゴリーにてご紹介した『進々堂世界一周 追憶のカシュガル』の著者、島田荘司氏ご自身のあとがき最後の一文につながる小説です。
≪同書あとがきより≫
「...千年に一度の大災害、そのさなかに完成したこの本は、雪の舞う季節、冷たい濁流に呑まれた彼(猪俣氏)と、無数の犠牲者たちに、捧げずにはいられない。」2011年3月22日 著者 島田荘司
すでに同小説で涙し、考えた方々はきっと、今回のご紹介本も読んでみたくなると思います。ここにご紹介いたします。小説を愛する方々の読み終わった後の涙と笑顔、そして沈思熟考を想像します。
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≪書かれた年号が非常にじゅうようとなることから、ご紹介本の最後に記載された同書の説明を抜粋≫
本書は、NHK総合テレビで2011年8月5日に放送された番組「探偵Xからの挑戦状!夏休み・島田荘司スペシャル『ゴーグル男の怪』」のために執筆された作品をもとに大幅加筆、改稿を経て単行本化されたものである。
『ゴーグル男の怪』
著者 島田荘司
発行 2011年10月30日
発行者 佐藤孝信
発行所 株式会社新潮社
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116ページより
“男の生涯の仕事は、生活費のためだけじゃない。仕事に誇りを持ちたいし、夢も持ちたい。自分の仕事が、この社会をよりよく改善していると思いたい。原子力という新エネルギーに関わっているのならば、なおのことだ。”
“原子力という未来エネルギーの燃料ウランは、無尽蔵というまでの埋蔵量があり、将来は電気も、都市型文明を営むあらゆるエネルギーも、これひとつでまかなえる、そう信じていた。たとえば原子力を自家用車に用いれば、所有者の一生分、燃料補給の必要もなく動き続けると思った。これは、米ソの原子力潜水艦のありようなどから来る、誤ったイメージだった。”
“現実には、ウランという鉱物自体、地球上にたいした埋蔵量はない。石油と比較すれば十分の一、石炭と比較すれば数十分の一程度しか地球にはないのだ。だからもしもこれからのエネルギーをすべて原子力に依存すれば、今後四十年と持たない計算になる。どうしてこんな貧弱なものが、今まであんなにも騒がれ、期待されてきたのか不思議だった。なにより日本が、国をあげてこれに期待している理由が解らない。”(登場人物の言より)
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一つの命の大切さを、将来を担う子供たちに伝えながら、国は常に国力と比較するんじゃないかな。政治はその言い訳としてよく聞く国力=国民の幸せ?んなわけないよね。今のギリシャは別として、スウェーデン、デンマーク、ヨーロッパの国々の中には、やはり幸せ度数が高い国がしっかりある。そしてそれらの国々は決して裕福ではなくとも、国民の多くは幸せを感じている現実があるんだよね。すでに多くの方々がテレビその他の報道で聞き知っていることだけど、次のページでは非常に簡潔に、且つ的確に述べられています。
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117ページより:
“さらにこのエネルギーが出す廃棄物、放射性核種の毒性、危険性は、眩暈がするほどだ。量も莫大だ。広島の原爆は、ペットボトル一本分ぐらいのウラン235を燃焼させて都市広島を壊滅させたが(著者は広島出身者)、原発は、爆弾より純度の低いウラン238が九十パーセント、235が三パーセントという割合の燃料棒を、制御棒で調整しながらじわじわと燃やし、水を蒸気に変える。そして長いものはどこかに埋めて、気長に監視する以外にないが、埋める場所もまだ決まっていない。未来の子孫たちに何とかしてもらおうという無責任な産業だ。
放射線核種のうちの半減期の長いものをいうと、プルトニウム239が二万四千年。カリウム40、十三億年。要素129、千五百七十万年。トリウム232、百四十億年。これらはこの年数によって、放射線の放出が半分になるというだけで、ゼロになるには、さらにこの二、三倍の時間がかかるとみた方がよい。このような得体のしれない危険を生み出す技術には、軽々に手を出すべきではない。原子力は、人間の心身を弱らせ、現在と未来への不安だけを果てしなく増大させ、恩恵などさしてもたらさない。”
“これらが人間の心身に与える悪影響は、実のところまだよく解っていない。心身にガンを作ると言われるばかりだ。そればかりではない。この核種の毒は、人間の精神をこそ破壊し、DNAの分裂コピーの瞬間を襲ってコピーエラーを誘導し、じわじわと別の生き物に変えてしまうおぞましいものだ。そして世界に、悪魔を呼び戻す。この社会を、悪霊蠢(うごめ)く黄泉の国に変える。≪中略≫
この特殊な原子炉を、高速増殖炉と呼ぶ。”
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神が与えたもう、私たちが生存できる唯一の場所“地球”への冒涜にもなりうるかも。いや神への冒涜か...。考えちゃうよね~。なぜかって?だってこの恐怖の技術で恩恵を受けられるのは、今生きている人たちだけかもしれないかね。私たちの子孫が、今の子供たちが大人になって、“確実に、絶対に”より一層の恩恵をうけられると、誰が証明し責任をとってくれるのだろうね。責任者も人間だから100年も生きないよ。
西日本の著名な工場の年配の技術者の人たちなら、15年ほど前の外資系企業からのセミナー講師がそのセミナーの中で“チェルノブイリだって大元の原因は【漏れ】なんです”と明確に伝えていたことを記憶のどこかに残しているかな?大手最先端の技術者たちだってあの頃は、まったく現実味のない顔をしていたことを覚えている。今はもう違うよね。
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119ページより:
“≪中略≫ 放射線は、妊娠中の胎児、出産時の胎児にもっとも危険性が高い。幼児とは、外界から多くの物質をさかんに取り込み、目ざましく増体する生き物だからだ。この時、たとえば甲状腺には安定ヨウ素が必須だが、もしも付近に放射性のヨウ素131があれば、代わりにこれを取り込んでしまい、近い将来甲状腺ガンを作る。いわゆるチェルノブイリ・ネックレスだ。ネックレスとは、現在はもう技術が進んで見えなくなったようだが、このガンの摘出時についたメス痕のことだ。
増体を完了し、五十歳を超えれば、放射線の影響は飛躍的に低減する。だがぼくはまだ二十代だ。非常に危険といえる。母は四十代になっていたが、それでも体調不良に悩まされるようになっていた。たびたび鼻血を出していた。おそらく、流産もそのせいだ。”
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母乳は母親の血液から造られます。元石油化学業界の人間(化学製品のテクニカル・マネージャー)だったから、石油化学物質の危険性はよくわかる。こんどブログでその危険性も、アロマテラピーの経皮吸収についてで延べようね。
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120ページより:
“これには意図的なものも疑える。手作業は危険だが、コストがずっと安いからだ。社の方針で、自動化完成までは、濾過、沈殿の工程に、外部の出向作業員を動員していた。危険は承知だが、少量ずつそろそろとやれば問題ない、というのが上層部の考えだった。
≪中略≫ 作業には、毎回下請け作業員を二名ずつ使った。原子力や放射線の知識のない彼らに、臨界、つまり核分裂と暴走が始まってしまうことがいかに危険であるかを前もって説明する。作業員は来るたびに新顔だったから、この説明は毎度行うことになって、確かに飽きるような種類のものだった。
安全性の見地から、この講義を徹底して行うことが社の方針だったが、何度も説明するうちに住吉(会社)の社員も飽きてきて、新人のぼくに、説明の仕事を押し付けるようになった。臨界を警告する側が、その危険性に麻痺してしまったのだ。当然作業員の方も、学校のような退屈な講義を出先で長々聞くよりも、早く作業を終えて家に帰りたがっていた。だからぼくの説明をちゃんと聞いてくれているかどうかは疑問だった。”
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なんか現実の世界でも“聞いたことあるような”内容だよね...
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144ページより:
“ベッドに横になり、血を採られた。岩井さんが亡くなったことを訊いたら、医師は黙ってうなずく。そして、彼の場合の造血幹細胞が手に入らなかったので、といった。”
144~145ページより:
“≪中略≫ こんなふうに血液を提供しているのだから、無駄にはなって欲しくない、うまく行って欲しかった。彼はしばらく気重な表情をしてから、
「いっときはうまく根付いたんだけどもね」
と言う。しかしすぐに、
「放射線の事故で、うまく根付いたのははじめてで、だからみんな喜んでいたんだけど、免疫細胞がどんどん変質したり、死んでいくんだ」
と言う。
「どうしてです?」
と訊いた。
「それはおそらくね・・・・・、いや間違いない、大山さんの体内のさまざまなものが、放射線を出しているからなんだ。強い放射線をいっときに浴びたことでね、大山さんの体内にあるナトリウムとか、リン、カリウムなんていう物質が変化して、自ら放射線を出す性質に変わってしまったんだ」
聞いて、暗澹とした気分になった。
「体内の物質が、放射線を出す・・・・・」
言われてみれば、そういう話を以前に聞いた。
「そうです」
「ではぼくのこの血液も、無駄ということですか?」
すると医師は、あわてて首を横に振った。
「違う違う、もちろん無駄なんかじゃない。患者の体をしばらくの間、君のこの造血幹細胞から生じた免疫細胞が、しっかりと守ってるよ。でも免疫の兵隊が、体の中からじわじわやられるんだ。打つ手がないよ」
前川は言う。
「皮膚ができないって、言ってましたよね、前」
僕は訊いた。
「ああ」
医師は憂鬱そうに言い、うなずく。
「もう皮膚はない。まったく再生しない。筋肉や脂肪がむき出してる」
「ええっ?じゃあ、治療というのはどんなふうに・・・・・」
「看護師がガーゼとか、包帯を巻いてる。この作業だけで、毎日午前中いっぱいかかるな。全身がぬるぬるの状態だ」
「人工皮膚は」
医師は首を横に振った。
「これは根付かなかった、さんざんやったんだけどね」
≪中略≫
「咽喉を開いて、人工呼吸器を入れたから。声は失われました」
ぼくはため息をついた。話せなくなったのか。自分の身に置き換えてみて、ひどくつらい気分になった。
「じゃあもう、会話はないんですか?」
医師はまた首を横に振る。そして言う。
「ないな」”
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150~151ページ(文中の被爆者の妻の言)より:
「主人の同僚から聞きました、臨界のことも。どんなに危険な作業かも。そういうこと、作業員に少しも教えないで、会社はただ経費節約のために、下請けの主人などの命を虫けらのように扱って、それでもあなた方は人間ですか!」
≪中略≫
「あなた方にとっては虫けらでも、大山には妻も子もあるんです。私たちが、主人や私が、今どんな気持ちでいるか、主人が今どんな地獄をさまよっているか、あなたにはわかっているんですか!?」
≪中略≫
「あなたはきっとこう言いたいんじゃない?今までの作業員は無事だったのにって。主人がへまをしたんじゃないかって」
≪中略≫
「夫の同僚は、そう私に言っていた。あの会社、住吉、人間の心なんて持ってないから、きっとそう言うって。当事者のせいにするって。でもあんな危ない作業、手作業でやらせるべきじゃない、解っていたはず。主人は何も知らなかった。あなたたちにだまされた。本当に危険だと思わないのなら、自分でやればいいじゃない。何故外部の主人なんかを使うの? 安いお金で、それも素人を」
夫人の頬に、涙が伝っていた。
「こっちへ来て。見てください。自分の目で見てよ!」
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被爆被害者である患者の姿の描写は、とてもご紹介なんてできないくらいです。お考えのある方は、どうぞご本でご確認くださいね。
架空のストーリーでも今は心に響く言葉がたくさん出てきます。繰り返してほしくない。だからここに抜粋し、できれば多くの人にこの本を読んでいただきたい。そう思います。この本は、原発の本ではありません。推理小説ですから、また単なる推理小説ではなく、人間同士の思いやりの大切さや、傲慢、強欲、不当な自身の正当化、生きるための仕事というもの、その他読む人各々にそれぞれのなにかを生むように思います。少なくとも、自分は一人で生きているのではない、だから周りへの感謝の気持ちが必要なんだ、ってね。
目の前のサンマ。こえからわたしの体の中に入って、わたしの生命維持に多大なる貢献をしてくれる。この大きさ、長さならきっとどれだけの日数を、月数を、一生懸命に海の中で泳ぎ、最後にはわたしの体の中という終着駅へと来てくれた、なんてね。
養殖だったりして。(笑)
でも一生懸命に、生きてくれて、ありがとう。
そして植物の恵み、エッセンシャルオイルにも、心からありがとう。
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