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柘榴坂の仇討 ネタバレあらすじ感想

柘榴坂の仇討 ネタバレあらすじ感想

まああらすじと言っても、桜田門外の変で井伊直弼を守れなかった近習が、切腹も許されず13年の間たった一人で逃げた水戸浪士の暗殺者5人を追う、という一本道。

最後まで書いていくのでこれから観る人は読まないでね。

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「追う」と言ってもそこにミステリもサスペンスもなく、13年の間に5人のうち4人は捕まったり死んだりしている。
たった一人であてもなく似顔絵を持って江戸や水戸を歩いても見つかるはずがない。
海の水を右から左に入れ替えるような徒労の日々。

そうしているうちに世の中は江戸から明治に替わり、廃藩置県が行われ藩も主家もなくなってしまう。
藩がなくなった時点でもうそんな命令は亡くなっているはずだけど、中井貴一演じる武士・志村金吾は愚直に捜索を続ける。
世の中の人々に二本差しや髷を馬鹿にされながらもあてどなく歩き続ける。

そんな武士を支えるのが広末涼子演じるかわいくてけなげな妻・せつ。彼女が飯屋で働いたり、仕立物をして夫を支えている。
1匹の魚を二人でわけあうような食卓(魚がでてくるだけでごちそうなのだ)。
主人公・志村は形だけでなく心も武士としてのきょうじを失っていない。

映画はほとんど静かに進むのだけど、途中で貧乏侍が公衆の面前で金貸しにいじめられているシーンがある。それを助けに入る志村。金貸しや子分たちが暴力に訴えようとすると、それまで黙ってみていた武士たちがーーー船頭や大工に身を変えた武士たちが、「元越後藩藩士」とか「元旗本」とか名乗りを上げ、ケンタッキーフライドチキンのおじさんのように恰幅のいい体をスーツにつつんだ老人が、「元柳生流剣術指南」とか言って出てきたり、駆けつけた警官に金貸しがほっとすると、その警官も「元なんとか」と言って、「武士はどこにでもいる、姿形を変えても」と一喝するシーンは楽しかった。

合間合間に追われているたった一人生き残った水戸浪士の阿部ちゃん・直吉の生活も描く。直吉は車引きをやっていて、長屋住まい。近所の小さい子に好かれている。
この子がまたかわいいんだ。
時々UPになるんだけど、これはもう監督もカメラさんもこの子好きなんだなあと。
というか、この女の子は未来の希望として描かれているのかもしれない。

水戸浪士を探し続ける友の力になりたいと、今は羅卒(警官)になっている友人が上司に頼んで最後の一人を探索してもらう。
この上司が藤竜也。じつは「柘榴坂」はおもしろそうだけどどうしようかな、と思っていたのだが、藤竜也がでているので見に行く気になった(笑)。

藤竜也はひょうひょうとした感じで江戸っ子で、ユーモラスなところも厳しいところもある。そして妻に頭があがらない。でも志村にこれからの生き方を教えてくれる。
雪の中で寒さに耐え美しく咲く椿を見て「ひたすらに生きよ」と教えてくれる。

志村は13年の間暗殺者を追い続けていたのは、汚名をそそぐことでも禄の復活でもなく、ただただ主人の井伊直弼が好きだったからだと涙する。

ここ泣ける。号泣。

ついに直吉と出会う志村。
直吉の引く車に乗って、この13年の互いの苦しみを話し合う二人。

そしてやってきた雪の降る柘榴坂。
そこはかつて井伊大老を殺めた直吉が腹を切ろうとして切れなかった場所だった。
「そなたはその垣根の前にずっとうずくまっていたのだな」
「あなたも井伊大老のお駕籠の側にずっと立っていたんですね」

決闘の末、志村は直吉をおいつめるが結局斬らない。彼の目には雪の中にひたすらに咲く椿が見えている。
自害しようとする直吉を止めて、井伊大老の最後の言葉を伝える志村。
「命をかけたものの命を粗末にするなと井伊様はおっしゃった。それがしはそのお下知に従う」と。
これからの世の中を生きてほしいという志村。それは自分自身にも言い聞かせているようだった。

やがて長屋に戻った直吉は、近所の女の子の母親に今度三人で遊びに行こうと誘う。
そして志村も働く妻を迎えに行って、二人で手をつないで歩いて帰る。

よかった、ハッピーエンドだ。

そしてエンディングで「原作・浅田次郎」。
ちくしょう、浅田次郎かよ! 涙製造メーカーかよ! またまんまと泣かされてしまった、少し悔しい。

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