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雨の音を

雨の音を

父は、
「雨の音を聴きながら寝るのが好き」。


私は子供の頃、
店舗兼住居の古い借家に住んでいて、
雨の降る日はトタン屋根を叩く音だけでなく、
染み通ってくる雨漏りをバケツや洗面器で受け止める音が、にぎやかしい生活を送っていた。

長屋住まいで、
住居と住居の間が狭くて
窓から見えるのは空じゃなくて
隣の家と、張り巡らされた電線で
それをちっとも「貧しい」と
思わずに過ごせたのは、日常、
あふれんばかりの愛情を父と母から
受けていたからと思う。

晴れた日は西日のさす子供部屋が
薄暗くなる雨の日の午後、
お客さんもさっぱり来なくて
ひとしきり、小さな私たちと遊んだ後
「お父さん、ちょっと寝かしてくれるか。雨の音を聴きながら寝るのがすきやねん。」と父が言うので

「そーっとしよう」と弟に言い含めて
それぞれに本を読んだり、音の小さい一人遊びをした。
雨の記憶。


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