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【小説】 「星たちの距離」 - 第2話

【小説】 「星たちの距離」 - 第2話



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ご訪問ありがとうございます(*^-^*)
コスメへのオマージュを小説に綴っています。
アナタにも、彼や彼女たちのような、素敵なコスメとの出会いがありますように☆

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 麻央は、この夏までイギリス東部の海辺の観光地・ブライトンにある大学院に通っていた。

 長年付き合った末に婚約までした彼氏と別れてしまい、まるで糸がプツンと切れてしまったように何も感じない日々を変えたかったのと、もはや意味のなくなった結婚資金を使い切ってしまうための苦肉の策だった。

 同じく海辺の街である湘南育ちの麻央にとって、ブライトンの街を吹き抜ける潮風は故郷と似て心地よいものだったが、短い夏が終わると観光客も少なくなり、ただ広大な海や自然に圧倒されてさみしく感じられる。

 教授陣からのプレッシャーや海辺の街ならではの夏のイベントの誘惑に耐え、膨大な枚数の修士論文を書き上げた友人たちは、とにかく解放された気分を味わいたくてたまらず、大好きな場所だけど今だけはこの街にいたくないとみんな他の国々に旅行に出かけてしまった。

 慣れない外国での寮生活で苦労を共にした友人たち、次に彼らに会えるのは卒業式の頃だろうか。

 論文を執筆し終わった解放感よりも、友人たちとの別れが迫っていることへのさみしさを忘れたくて、麻央は再びフランス・パリにやってきた。

 ブライトンとパリは、ロンドン経由で約3時間の距離。

 週末や短い休みを利用してのパリ滞在も、気がつくと長期休暇の半分以上を費やすようになっていた。

 友人に紹介してもらったオペラ地区にあるフランス語学学校はアジア人も多く、英語はもちろん、久しぶりの日本語も使えるので、麻央のホームシックはずいぶんここで緩和されていた。
 

 そして、今回のパリ滞在の初日に瀬尾京平と出会った。

 「日本で俳優さんだったらしいよ。映画好きな麻央ちゃんなら知ってるんじゃないの?」

 よく学生を集めて学校のとなりにある寿司屋に連れて行ってくれる学長の小林、彼から初めて紹介された京平は苦笑いしながら少しうつむいた。

 なめらかな褐色の肌の中につり目ぎみの大きく見開いた瞳は、初対面の麻央を前にして緊張しているのか少しうるんでいて、彼の完全に均整のとれた美しい顔をさらに魅き立たせていた。

 22歳のわりには顔も体つきも精悍で、背も180センチくらいあるのではないだろうか。

 彼が羽織った薄手のジャケットは彼を余計に大人っぽく見せていたが、その淡いデニム色は一方で彼の若さを象徴していた。
 

 ああ、この人は本当に俳優だ。

 たくさんの人の目に触れさせるために、神様から二物も三物も与えられた人だ。

 初めて芸能人を目の前にした麻央でさえも、彼がまとった雰囲気の異質さや際立った美しさが稀有であるということを瞬間に悟った。

 ふと、うつむいていた京平が顔を上げ、その視線が麻央の目をとらえた。

 軽く会釈しながら、人見知りの中でしぼり出したような微笑みの口元から見える、美しい白い歯と歯並び。

 ありがちな芸能人スマイルではなく、京平自身の素の部分からの笑顔。

 そんな、見た目よりも幼い笑顔を見て、麻央はやっと思い出したのだった。

 私、この俳優さんを知っている。


(つづく)






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