「首が腫れてるような?」
と言われた。
「まあ、一応調べてみて下さい。何でもないことの方が多いですけどね」
へ?腫れてる?
喉を触っても自覚は全くなく、指摘されたのも初めて。
いや、待てよ。
その時突然思い出した。
去年の問診もこの人だったわ。
「腫れてませんか?うーん、まあいいか」
そう言ってカルテを書いていた光景が蘇る。
と同時に数年前知人が花粉症で耳鼻科にかかった時に首の腫脹を指摘されたことも思い出す。
甲状腺腫瘍だった。
彼女は首の傷跡を見せて「ラッキーだった」と笑っていた。
腫れてる?と回りに尋ねても「どこ?」という反応ばかり。
色々な思いが交錯し、ネットで内分泌科を探して受診。
ひと目で「腫れてますね」と。
想像するに、あの女性医師も専門医だったのかも。
エコーと血液検査を経て、甲状腺疾患の「橋本病」と診断された。
甲状腺疾患。
全身の代謝を活性化させる甲状腺ホルモン。
そのホルモンを産生する甲状腺に生じる病気。
甲状腺疾患で知られるバセドウ病は甲状腺機能が亢進するのに対し、橋本病は低下する。
つまり甲状腺ホルモンが不足して様々な症状をもたらす。
…全然意味不明。
曲者はこのイマイチよくわからない器官とホルモン。
何がどうしてどうなる病気なんだ?
原因もはっきりせず、そして症状にも個人差がある。
要するにだからどーした、良くわからない病気。
ではその症状とは。
甲状腺が腫れてきて、くびの圧迫感や違和感が生じることがあります。甲状腺機能低下症になると、全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じます。女性では月経過多になることがあります。うつ病や認知症と間違われることもあります。血液検査では、コレステロール高値や肝機能異常を認めることがあります。
この不定愁訴は更年期障害とそっくり。
そして何よりこの橋本病。
自己免疫の異常により甲状腺に慢性的な炎症が起こる疾患。甲状腺組織が破壊されるため、甲状腺ホルモンが不足した状態が続きます。甲状腺疾患の中でも特に女性に多く、その発生頻度は男性の20倍以上。年齢的には40~50代に多くみられます。エネルギーが足りず心身ともに元気が出ないのが特徴で、だるさや物忘れといった症状から、うつ病や認知症などと間違われることも。ただし、ほとんどの人は症状があまり出てこない「潜在型」です。甲状腺機能の低下によるむくみや冷え、代謝の悪化、月経異常といった症状が顕著に現れる人は少なく、多くの場合、首の腫れや血液検査などで発覚することが多いといわれています。
全てにおいてはっきりしない病気である反面、はっきりしていることは成人女性の10人に1人の高頻度で見つかる病気であること。
そして更年期の女性なら誰にでも経験のある、冷えや肌の乾燥、倦怠感や便秘、疲れやすい、太りやすい、貧血、月経異常、LDLコレステロールの上昇などが、この病気であることに気づきにくい原因にもなる。
そして疲れやすいとか目眩などは、更年期でなくとも女性あるあるだし、貧血同様に日々少しずつ症状が進行していくためにやり過ごしてしまい、自覚しにくい。
私が言いたいのは、通常人間ドックの血液検査で甲状腺ホルモンの項目はまずなく、また前述のように問診で甲状腺の腫れを指摘されることはあっても、それは素人目にはわかりづらく自覚するのははなかなか難しいこと。
そして甲状腺が腫れていても、その全てが甲状腺疾患とは限らないということ。
橋本病と診断されても一時的なものもあり、その後の検査次第では薬も使わず定期的な検査のみで済む人の方が多いらしい。
しかし私は投薬が必要となり、ホルモンを補う薬を飲んで3か月ごとに検査。
その結果次第で減薬、増薬を繰り返しているが日常生活には何ら制約はなく支障もない。
ここで私の喉の画像を。
首の窪みの上の方に腫れがあり、横から見るとわかりやすい。
が、前述の通り普段の生活で他人に指摘されたことは全くない。
よーく見たら、という感じ。
私はここ数年貧血で引っかかることが多く、貧血にのみフォーカスした食生活を送ってきた。
医師によると、貧血対策に私が好んで摂取してきた海藻類はヨウ素(ヨード)を多く含み、この過剰摂取により甲状腺機能が低下するらしい。
ん?ちょっと待って。
ヨウ素は甲状腺ホルモンを作るのに、なぜ低下させる?
何だかヨウ素の過剰摂取により、身体がホルモンを作らなくなるらしい。
ヨード、あのうがい薬のイソジンしかり。
疲れやすいとか倦怠感は筋肉痛だと思うように、肌の不調、物忘れ?はそれこそ歳のせいだと自覚していた。
が、数年前から寝ているときに痰が絡むのが気になり耳鼻科で検査を受けたこと、毎日のように海藻類を食べていたこと、冬だけでなく夏になっても手荒れに悩んだこと、思い当たるふしは多々あった気がする。
それでもあの医師に指摘されなければ、また次のドックまでなんとなく暮らしていたはず。
そしてじわじわと数値が下がり、もっと悪くなっていたかもしれない。
診断され投薬すること1年。
私は56歳となり、「更年期あるあるの不定愁訴」とはほとんど無関係の毎日を送っている。
この腫れが消失することはなかなか難しいようだけど、貧血、コレステロールの数値が基準内になった。
全てが気のせいかもしれないけど、改善した肌荒れ、抜け毛、そして冷え。
毎朝お風呂を洗ったときに、目眩しないようにゆっくり頭を上げなくても良くなった。
伸びた爪が欠けなくなり、ペコペコと柔らかかったのに1年でカッチカチに。
何よりこんな毎日でも、ヨガや瞑想の力を借り、常に笑顔で前向きにいられる。
そして、この喉の腫れ。
友人いわく、首が長い痩せ型の私でなければ見逃しそうなものだと。
首は顔や手のように年齢が出やすい。
顔ばかりケアしても首には年齢が顕著で、顔とのギャップが目立つこともある。
ものは考えようで、このよーく見ると腫れている喉のおかげで、私の体型ではありがちな、年齢から来る筋ばった首にならずにいるかもしれない。
ある意味ラッキー。
忙しく走り回る日々の中で、誰でもどこかしらに不調がある。
寝込むほどでも、我慢できないほどでもなければ、女性は特に我慢する。
だけどその不定愁訴の裏に、本当は病気が隠れていることもある。
歳だから、と諦めることは私にもあるけど、知っていることは大切だと思う。
婦人科を受診すればホルモン値は当然下降気味な更年期に、「そのうちトンネルを抜けられる」と我慢する日々は、もしかしたら更年期だけじゃないかもしれない。
甲状腺疾患は、女性にとって実はよくある病気だということ。
なんとなく怠い、横になりたい、漢方薬やホルモン補充をしてもイマイチだったり、保湿しても保湿しても乾燥する肌に悩んだり、忘れっぽくなる自分に幻滅したりするとき、甲状腺疾患かも?と。
それを「知っている」ことが、その後の自分を変えることになるかもしれません。
因みに、物忘れ。
これは本当に加齢のような気がしている56歳は、今日もメモって買い物に行きます。
☆夢二☆さん
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みおmama姫さん
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