マニア記事シリーズ:食中毒あれこれ
2012/10/8 19:29
またもマニア記事を書いてみます。
3つめは、食中毒について。
テーマが大きすぎて何をどう書けばいいかよく分からないので、主によく誤解されていることや最低限知っておいて欲しいことを中心に書き、そこでちょこちょこ解説しようと思います。
まず、簡単に概説です。
詳しい個々の説明はネットで検索していただければたくさん情報が手に入ります。
厚労省HP(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/index.html)
でも毎年の発生状況など色んな情報を掲載しています。
<分類>
・細菌性食中毒:腸管出血性大腸菌(O157など)、カンピロバクター、サルモネラ、黄色ブドウ球菌等。
・ウイルス性食中毒:ノロウイルス、肝炎ウイルス等。
・動物性自然毒:フグ毒、貝毒等。
・植物性自然毒:毒キノコ、アジサイの葉、ドクゼリ、ジャガイモの新芽等。
・化学物質:ヒスタミン等。
・寄生虫:クドア、アニサキス等。
様々な食中毒の形態がありますが、今まで何度も他の記事にも書いている通り、「100%安全な食品」というものはありません!
「これさえ守ればOK」という食中毒の予防方法もありません。
一つ一つ注意して食材を選び、扱うことが大事なのです。
では、テーマごとに解説をします。
○食中毒=嘔吐、下痢?
食中毒と言えば、胃腸炎症状が一般的ですが、そうでないものもあります。
フグ毒に代表されるように、神経や筋肉に作用するものがいくつかあります。
また、化学物質で挙げた「ヒスタミン」というのは、人間の体内にも存在するアレルギー物質で、摂取すると蕁麻疹、頭痛、発熱などのアレルギー様症状を起こします。
ヒスタミンはもともと食品に存在するわけではなく、赤味の魚には「ヒスチジン」というヒスタミンの元となる物質が多く含まれており、温度管理が悪いと、海中や環境中にいる微生物がヒスタミンを産生してしまうのです。
この他、毒キノコなどはそれぞれ多様な症状があるようです。
キノコのついては私もあまり詳しくないのですが、東京都HPで分かりやすく書かれています→http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/kinoko/tyudoku.html
○腹痛の原因は「さっき食べたモノ?」
例えば、今下痢をしたとして、この食事内容の何を疑うでしょう?
・3日前:鶏肉タタキ、サラダ
・2日前:フグ料理
・2時間前:生ガキ
「生ガキ」と思った方、どれぐらいいらっしゃるでしょう…。
もちろん、食事以外が原因の可能性も高いですし、同じ食事を食べた人の症状(ここ大事。何人も同じもの食べて、1人だけ発症だと他の原因の可能性は大いにある)等総合的な判断が必要ですが私は鶏肉タタキが一番気になります。
食中毒と言うのは、細菌やウイルスの微生物性の場合、侵入した微生物が体内で毒素を産生したり、細胞を破壊することにより起こります。
フグやキノコの毒は数時間で症状が出ますが、症状に特徴があるので原因は分かりやすい。
「食べている時や直後から気分が悪くなった」という場合、だいたいは他の原因です。
その食事の風味で気分を害した、それよりも前の食事で食中毒を起こした、感染性の胃腸炎を起こしている、等。
嘔吐をした、というなら胃の問題なので数時間程度で起こってもおかしくありません。
しかし下痢をした、という場合、食べ物が胃を通り、腸にまで到達してから起こるはずなので、数時間で起こることはまず考えられません。5~6時間以降が多いです。
一部、クドア(4~8時間で嘔吐下痢)、黄色ブドウ球菌(1~3時間で嘔吐下痢)等かなり早く症状が出るものがありますが、多くのメジャーな食中毒は時間では起こりません。
個人差があるので一概には言えませんが、加熱不足の鶏肉でよく発生するカンピロバクターは2日~7日、O157は長いもので2週間近く、ノロウイルスは1~2日ぐらいです。
O157の患者が発生すると2週間前までさかのぼり、食べたものや行った場所などの調査をすることになります。
ついつい、先ほど食べたものなどを連想しがちですが、むしろそれより以前に食べたものが原因である可能性が高いです。
○臭いや見た目が大丈夫なら食中毒にはならない?
食中毒の原因菌は、食べ物を腐らせる腐敗菌とは違うため、味、臭い、色などに変化を起こすことはありません。
ですので食中毒菌がついていても五感では判別はできないのです。
もちろん、腐った食品を口にすればお腹を壊すことがありますが、見た目や味に問題がないからといって安心してはいけません。
○新鮮だからいい?
以前の記事にも書きましたが、食材が新鮮=ついている菌が新鮮です。
鶏肉のカンピロバクターなどは乾燥に弱いため、徐々に死んでいきます。新鮮な鶏肉には多量の元気なカンピロが付着している可能性が高いため、生食などはしてはいけません。
○火を通せば大丈夫?
ほとんどの食中毒の原因となる微生物は加熱で死滅します。
しかし雪印の牛乳で問題となった黄色ブドウ球菌の毒素は加熱をしてもそのまま残ります。
食物中で一度菌が毒を産生してしまうと、その後加熱しても無駄。毒を産生しないように、汚染させない、菌を増やさない事が不可欠です。
またフグ毒やヒスタミンなども加熱しても不活化しませんのでご注意を。
もちろん加熱は大事ですが、過信は禁物です。
そして「加熱したつもり」というのも非常に危険です。
先日生レバーが禁止されましたが、その理由として、肉とは違い、レバーの内部まで細菌が存在するため、生肉のように表面を加熱し、内部を食べるという方法がとれないことが挙げられます。
食中毒を防ぐためには、75℃1分以上の加熱が必要とされています。
ノロウイルスは熱に強いため、85℃1分以上とされています。
「炙り」は一瞬なので、菌を完全に殺しているとは言い難いですね。
表面に付着している菌を殺すのは比較的容易ですが、「内部まで」というのがなかなか難しい。
ハンバーグなどは一度こねているので、全部が「表面」のような状態。レアハンバーグを食べるなんて、もってのほか。
表面はアツアツでも、中身はまだレア、なんて経験あるのではないでしょうか。
内部までしっかり火を通すって出来てるようで、実際は非常に難しいです。電子レンジやオーブンなどを上手く活用したいですね。
学校給食等、大きな調理施設では中心温度計という針状の温度計があり、食材に突き刺してしっかり中心部の温度が上がっているか、工程ごとに確かめています。
ちなみに最近学校給食では万全を期すためデザート類以外ほとんどの食事は加熱物のみ、というところが多いみたいです。サラダや和え物を作る際にもしっかり野菜を一度茹でてから作るとか。
○ノロウイルスは牡蠣だけが原因?
牡蠣=ノロというイメージをお持ちの方、多いかもしれません。確かに、牡蠣によるノロ食中毒は毎年起こっています。
冬場に起こる胃腸風邪と、ノロの関係について、よく報道もされていますが、簡単に書きたいと思います。
細菌と違い、ウイルスという奴らは、生きた細胞の中でしか増えることが出来ません。ノロは人の腸の中でしか増えません。ですので牡蠣の中や海中等の環境中ではウイルスは生存し続けることは出来ないのです。
ノロは冬場に流行しますが、夏場でも人から人へ感染を繰り返すことにより、ウイルスを維持しています。
人が嘔吐や下痢をして排出されたウイルスが下水、河川を通じ、やがて海に流れ込みます。このウイルスを吸い込んだ牡蠣が食中毒の原因になることがあるのです。
牡蠣などの2枚貝はプランクトンを食べるために海水をたくさん吸い込み、その時に一緒にウイルスを吸ってしまうのです。
しかし実際、ほとんどのノロ食中毒というのは、弁当や普通の食事であって、決して牡蠣だけが危ないという事ではありません。
感染者からは糞便1g中に億単位のウイルスが排出されます。ノロは10~100個程度の生存ウイルス粒子が体に入れば発症すると言われており、1人患者が出ればものすごい人数を感染させることが出来るのです。
このように排出されたウイルスが食品に付着したり、また直接的に感染し、胃腸炎を起こす事例がほとんどです。(食中毒だけでなく、感染症もかなり多いことに注意)
また、ノロに感染しても症状が出ない人が4割ほどいると言われ、知らない間にウイルスを排出していることも広がる原因の1つです。
ノロは食品中では増えることがないため、ノロ食中毒を防ぐには、何より「つけない」こと、しっかり加熱することが大事です。
○温度管理さえすれば大丈夫?
常温保存品以外の食品は冷蔵庫へ。これは当たり前のことです。
もともと食品に食中毒菌がついている場合があるため、それを増やさないことはとても大切です。
しかし、冷蔵したからと言って、過信はいけません。
前述したノロは食品中では増えないので少し違いますが、0157、カンピロバクターなどは非常に少量の菌量でも発症します。
増やさないことは大事ですが、さらに付着させないこと、またしっかり加熱することを忘れないように。
また、冷凍したからと言って、菌やウイルスは死滅しません。解凍すればまた復活することがあります。死滅には、加熱しかありません。
○アルコールって万能?
最近はスーパーの入り口等至る所でアルコールが設置されています。
アルコールは確かに人体に害がほとんどなく、ウイルスや細菌の多くを殺すことが出来ます。
ただし、ノロには効きません。ノロは塩素系の消毒剤(ハイタ-とか)は有効ですが、アルコールでは死滅しません。
また、手に汚れがあると、消毒剤の効果は半減しますので、まずはしっかり手を洗い、汚れを落とした後に消毒薬を使うのが一番効果的です。
まだまだ、ネタがありそうなのですが、思いついたことだけ列挙してみました。
ネタが増えたら追記しようかなと思います。
食中毒と言っても多種多様で、一概に言えないのでとても難しいです。
お腹の調子が悪くなったからと言って、必ずしも食事が原因とは限りません。
広い視野と知識を持ちたいものです。
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