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『ヨッ!男だねぇ』と思わず言いたくなる男

『ヨッ!男だねぇ』と思わず言いたくなる男




■ 橋ものがたり
■ 実業之日本社
■ 藤沢周平

秋の夜長にベットに寝っ転がって好きな本を読む
少し開けた窓からは黄色い月がのぞき、虫の音が心地よく響く
こんな贅沢な時間を持てる幸せを噛みしめる

今読んでいるのは各作品に江戸の橋を挿入して話が展開される
藤沢周平の『橋ものがたり』
収録されている10篇の中でも『約束』は傑作中の傑作だと思う
この物語を読むのは多分3回目くらいかな


奉公している幸助のもとに幼なじみのお蝶がたずねてきたのは五年前のこと
お蝶は深川に引っ越すからと別れを言いに来たのだ
その時に五年たったら萬年橋で会おうという約束をした
幸助は16歳、お蝶は13歳だった

「約束」だけを心の支えに五年の歳月を送った二人に
ようやく再会の日が訪れる
しかし、お蝶は暮らしのため、家族のために身を売っていた自分を恥じ
萬年橋に行こうとしない
幸助に会えば、5年の間に汚れてしまった自分を見せることになると・・・
そんなお蝶の気持ちが哀れで私の心まで激しく揺さぶられてしまう

しかし最後には出かけて行き、ふたりが逢った時の会話がすばらしい
江戸の庶民が必死に生きていく姿の健気でまっとうな生き方はとても美しい
藤沢作品はそのへんの描写がうまいので
読み手の琴線に触れるのだ
映画化された藤沢周平の『蝉しぐれ』も切なかったけど
それを凌ぐ切なさが全編に漂っていてウルウルしてくる
幼なじみものって、泣けますねぇ・・・

一夜明けて・・・
会えただけで幸せだったと自分に言い聞かせるお蝶だが
心の中は何かがぽっきりと折れてしまった
その時「入っていいかね」と朝の光の中で幸助が微笑して立っているのである

・・・いいなあ、女としてこんなに嬉しいことはないよね
相手の過去をすべて受け入れる覚悟の幸助の愛情が感じられて
この物語の中では、この場面が一番好き♪

とにかく二人はもう離れちゃいけないんだ・・・
幸助の言葉を聞いて台所に姿を消したお蝶だが、なかなか戻ってこない
幸助が声をかけようとしたとき、お蝶が忍び泣く声がした
声は、やがてふり絞るような号泣に変った

とにかく、『約束』は最後がいいんです
幸助って、『ヨッ!男だねぇ』と思わず肩を叩きたくなるようないい男
イメージからすると、うんと若い時の高倉健かな



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コメント(2件)

  • ◆みゆママ32さん◆約束の萬年橋に行きたいけど行けないというお蝶のためらいの気持ちが切なくて、でも『それでも行いきなさいよ』と応援しながら読みすすみました。最後のシーンでは私まで嬉しくて泣いてしまったんですよ。こういう男、今の若い男性の中にもいるのかしら?

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    • 更新する

    2011/9/29 08:06

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    • 返信する

  • こんばんわ、いつも本の紹介を楽しみにしてるんですが、今回登場する幸助は女性にとっては理想の男性ですね。こういう男性に出逢いたいものです。

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    • 更新する

    2011/9/28 22:19

    0/500

    • 返信する

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