119views

抱一庵の「曇天」想高く気秀いで

抱一庵の「曇天」想高く気秀いで

 抱一庵の「曇天」想高く気秀いで、一世を驚かすに足るべき小説なりしも、世は遂に左程に歓迎する事なかりし。其故如何となれば、彼は暗々裡に仏国想を担ひ入れて、奇抜は以て人を驚かすに足りしかども、遂に純然たる日本想の「一口剣」に及ばざるを奈何せむ。「辻浄瑠璃」巧緻を極めたりしも遂に「風流仏」に較す可き様もなし。外国想が日本想の純全なるに如かず、一片相が少くとも円満相に如かざることを是なりと認め得ば、余は緑雨が社界の諸共に認めて妖魔とし魅窟とする処の一片相を取り来つて、以て社界全躰を刺すの材料とせるを惜まずんばある可からず。奇想却つて平凡の如くに見え、妙刺却つて痴言の如くに聞え、快罵却つて不平の如くに感ぜらる、斯の如きもの、緑雨が撰みたる材料の不自然にして顕著に過ぎたるものなりしことより起るなり。何が故に不自然なりと云ふ、曰く、社界の魔毒は、緑雨が撰みたる材料の上には商標の如くに見はるれば、之を罵倒するは鴉の黒きを笑ひ、鷺の白きを罵るが如く感ぜらるればなり、罵倒する材料すでに如此なれば、其痛罵も的を外れ、諷刺も神に入らざるこそ道理なれ、又た惜しむべし。
http://www.hamada-dc.com/


このブログに関連付けられたワード

このブログを通報する

カテゴリなし カテゴリの最新ブログ

カテゴリなしのブログをもっとみる

投稿ブログランキング

投稿ブログランキングをみる

編集部イチオシ!

HOTタグ

ブランドファンクラブ限定プレゼント

【毎月 1・9・17・24日 開催!】

(応募受付:5/24~5/31)

プレゼントをもっとみる