生涯現役で働き続けるのとある程度の年齢でリタイアして余生を楽しむのはどちらがいいと思いますか？

例えば、アニメ「サザエさん」の声優陣は生涯現役を貫いて、声優さんが亡くなってから交代というパターンが結構あります。
一方で、「ドラえもん」のケースは、2005年3月に1979年4月から25年以上担当していた大山のぶ代さんを始めとする当時の声優陣が全員降板し、翌月から新声優陣に総交代しています。

文春オンラインの記事に大山のぶ代さんと夫の砂川啓介さんとのやり取りが取り上げられました。なお、大山さんはペコというあだ名で呼ばれていたそうです。

2001年、大山さんは直腸がんの手術で長期入院されたそうです。
この時期に大山さんは砂川さんに、「もしかしたら、自分はもう元どおりの身体に戻れないかもしれないから、辞めたほうがいいのかも……」と、ドラえもん役の降板を相談したそうですが、テレビ朝日やスポンサーなどの番組関係者の幹部が大山さんを説得するために病室に来て、「大山さん、お願いですから辞めないでください！」と説得していたことを夫の砂川さんも聞いていたそうです。

大山さんの手術が成功してがんが完治したそうです。
しかし、退院して間もない頃に「あたし、もうドラえもんを辞めたほうがいいのかな……」と大山さんが夫の砂川さんに吐露したそうです。

それに対して、砂川さんは、「ペコ、突然どうしてなの？ せっかくガンを取って元気になったのに、どうしてペコにとって一番大事なドラえもんを辞めたいだなんて言うんだい？」

すると大山さんは、「でもね、啓介さん。私がまた今回のように、急に入院したり、突然倒れたりしたら、迷惑がかかっちゃうでしょ。だったら、元気なうちに自分から辞めちゃったほうがいいんじゃないかなって思い始めて……」と仰ったそうです。

それから3年後の2004年に、大山のぶ代さんが他の声優陣と共にドラえもん役を降板すること決定しました。
大山のぶ代さん以外の他の声優さん（のび太、しずか、ジャイアン、スネ夫）も大山さんが降板したタイミングに一緒に降板しましたが、このことについて大山さんは文藝春秋の2005年5月号「ドラ1組の26年」で以下の様に仰っていました。（以下、引用です。）

今回、揃って卒業することになったが、私自身は、二〇〇一年の夏に直腸がんの手術を受けた頃からなんとなく卒業を意識してきた。（中略）
このときから、誰かに何かあってから辞めるのはいやだと思ってきた。実際に「若い人に後を託したい」といった相談もしたが、テレビ局や製薬会社の方に相手にされず、簡単には辞められないんだと思っていた。それから四年近くが経ち、仲間全員で話し合い、スタッフも声優も一緒に交代することになりました。
（引用ここまで）


大山さんはドラえもんの声を降板する直前のインタビューで、「私たちが元気な間にこうしてドラえもんから卒業して、素敵な花道を5人のために用意していただいて幸せです。ありがとうございました。これからドラえもんを辞めた後の人生は、とても楽しい時間を過ごしていくことになると思います。これからもドラえもんを応援し続けて、テレビ放送や映画も見ます。ずっとドラえもんが大好きです。」と満面の笑みで仰っていました。

また、大山のぶ代さんはドラえもん役の降板から3年後の2008年に、バラエティ番組の中で以下の様に仰っていました。
「3人、のび太くん（小原乃梨子さん）としずかちゃん（野村道子さん）とドラえもんだけが女性なんですよね。で、この女3人は、いつも3人で、時間ができると海外旅行したり、いっつも国内旅行したりして、楽しく遊んでたんです。で、これで終わってくれたら、ゆっくりどっか外国行けるわね～なんて」


また、大山さんは2014年に「覚悟の瞬間」というインターネットサイトの取材に応じた際、ドラえもんの降板時の当時の心境を「ドラえもんを辞めた時に、最初の感情は本当にホッとしたが先でした。というのも、これ以上ドラえもん役を続けていたら絶対に近い将来にドラえもんという番組がゴタゴタになっていたと思う。」と仰っていました。

のび太役を務めた小原乃梨子さんはのび太役を降板して10年後の2015年にインタビューに応じた際に、「本当にのび太くんを演じていた26年間はずっと楽しかった。楽しくない日は1日もなかったです。楽しかったです。」とTVで笑顔で仰っていました。

大山さんを始めとするドラえもん声優陣が、元気なうちに仕事を退いた意図ってなんでしょうか？

降板当時のドラえもん声優陣の年齢
ドラえもん:大山のぶ代さん 72歳
のび太:小原乃梨子さん 70歳
しずか:野村道子さん 67歳
ジャイアン:たてかべ和也さん 71歳
スネ夫:肝付兼太さん 70歳