
伊坂幸太郎『首折り男のための協奏曲』
2015/4/7 14:25
¥1,620
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首折り男は首を折り、黒澤は物を盗み、小説家は物語を紡ぎ、あなたはこの本を貪り読む。胸元えぐる豪速球から消える魔球まで、出し惜しみなく投じられた「ネタ」の数々! 「首折り男」に驚嘆し、「恋」に惑って「怪談」に震え「合コン」では泣き笑い。黒澤を「悪意」が襲い、「クワガタ」は覗き見され、父は子のため「復讐者」になる。技巧と趣向が奇跡的に融合した七つの物語を収める、贅沢すぎる連作集。
7つの短編集。
7つのお話には繋がりがあるようでなかったり、繋がりがないようであったり。
1つ1つの話はバラバラで、タイトルにある「首折り男」がすべての話に登場するわけでもないのですが、それぞれどこか繋がっているようなそんな短編集なので、タイトルに「協奏曲」とつけているの巧い。
あとがきによるともともと1つにまとめるつもりはなく、バラバラに書いていた短編に少し手を加えて緩やかな繋がりを持たせたんだそうです。
『首折り男の周辺』
首の骨を折って殺す殺し屋”首折り男”と外見がそっくりで、その首折り男に間違えられた男・小笠原稔、小笠原を首折り男ではないかと疑う若林夫婦、いじめられている少年中島翔のお話。
『濡れ衣の話』
息子を轢き殺した女を殺してしまった男・丸岡は、田中と名乗る刑事に車の中ですべてを語る。
この最初の2つの話を読むと、首折り男(大藪)は殺し屋なわけだけど、いい人の要素があってなんだか憎めません。
『僕の舟』
夫の介護をしている老女・若林絵美が黒澤に50年前に出会った思い出の男性のことを調査してもらう。
最初の首折り男の周辺で出てくる若林夫婦のお話で、若林絵美は70歳のはずなのですが、年齢知らなければ70歳とは思えない若々しさ。そして黒澤は本業の探偵の方で出てきます。
水兵リーベのこじつけも実に伊坂さんらしい。結末は予想外すぎて、面白かったです。
『人間らしく』
クワガタのブリーダー兼小説家の男と黒澤のお話。
クワガタの多頭飼いの様子から、神様は時々見てて天罰を加える、という話が面白かったです。
本当にそうかもしれないなー、なんて。そう思うと色々救われることもある気がする!
そしてこのお話の中で出てきた「人間の攻撃性は、本能的なものだからな。後天的なものではない。うまく育てば、攻撃性がなくなった人間が生まれるなんてことはないわけだ」という台詞に、まさに子育て中の私は納得するところもあってなるほどなぁと思ったりもして。
『月曜日から逃げろ』
黒澤を嗅ぎまわるテレビ制作プロダクションの男、久喜山と黒澤のお話。
月曜日、火曜日、水曜日、と順番に7日間が描かれていますが、ここに仕掛けがあります。
最初は頭の中が「???」になってしまったのですが、ちゃんと日曜日まで読めばその仕掛けに気付け、そししてもう一度読むとスッキリ。
『相談役の話』
江戸時代の武士、山家清兵衛と、現実に起きたそれに似た呪いのお話。
「人間らしく」のクワガタのブリーダー兼小説家がここでも登場。
そして伊坂さんにしてはめずらしい怪談です。
オチがそれー?と笑ってしまいましたが。
『合コンの話』
誘ってきた井上が来られなくなった男女3人ずつの合コンの話。
これは構成というか書き方が特徴的。
こういうのもありなんだなーと思いました。
そして合コン時の心理戦みたいなものがとっても面白かったです。
ラストのこの短編で再び首折り男も登場し、最初の短編で首折り男が最後に聞いてたCDも明らかに。
伊坂さん自身が「首折り男なる人間の話であったものが、いつの間にか黒澤という泥棒の話に変化していき、それがまた首折り男につながり」といっている通り、不思議な繋がりのある本です。
まさに"協奏曲"という感じ。
人間らしく、での伊坂さんの「神様論」が個人的にはかなりよかったです。
そう思って生きてたら、いつも不公平なわけではないと思えるし、悪い奴にはいつか天罰がくだると信じられるし、だから真面目に頑張ろうって思える。
そして私はやっぱり伊坂さんの小説が好きだ。
★★★☆
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