30650views

酸化亜鉛@日焼け止め忘備録

酸化亜鉛@日焼け止め忘備録

現在使用している「パックスベビーUVクリーム」は私にとって唯一奇跡的に肌トラブルを一切起こさないUVクリームで、MMUを重ねても完全に石鹸オフ出来、かつ30グラム630円(アマゾンなら550円くらい)と大変経済的なお助けアイテムです。やや白くなる、ムラになるなど使用感に難点があるため、色々と成分良好といわれている製品を試してみましたが、結局コレに戻りました(^^;
しかしこの製品は紫外線散乱剤が酸化チタンのみであり、PA+とUVA対策が弱いのため、これをを補うべく、UVAをカットするという酸化亜鉛投入を企みました。
ちなみに、酸化亜鉛は肌を乾燥させますが、消炎効果もあり、昔から「亜鉛華軟膏」の有効成分として使用されています。しかし酸化亜鉛が肌に合わずアレルギー反応や乾燥などのトラブルを起こし、UVケアでも酸化亜鉛フリーのものを使われる方もおられます。もしもこの記事を参考に酸化亜鉛を使用される方がおられたら、販売店の推奨する使用濃度を守り必ずパッチテストをして下さい。

国産の成分良好日焼け止めで酸化亜鉛を使っている商品は意外と少なく、私が使ってみた中ではノンケミでは岡田UVとブルークレール。両方とも肌が荒れて撃沈‥あとは使ってないけどオードヴィーヴも酸化亜鉛使用。(でもオードヴィーヴは酸化亜鉛の原料表記はあるけど乳化剤より後の表記なので、濃度は低そう?)
ノンケミではないけれど皮膚科おススメのNOVのUVシールドEX(UVローションEXには入っていません)なども酸化亜鉛使用。ただしこれは石鹸では落ちません。

無機系UVカット製品についての疑問あれこれ‥
散乱の仕組みって?ナノよりノンナノの方がSPFやPA低いのはなんで?A波予防は酸化チタンだけじゃダメなの??じゃあ酸化チタンだけでPA+++の製品などはどうなっているの??などなど‥
個人的には酸化亜鉛が合うのか合わないのか、そこのところを、肌に合うパックスベビーで実験してみたい。
というわけで、酸化亜鉛について調べてみました。


§1 酸化亜鉛の光触媒作用と表面処理の効果

酸化亜鉛の方が酸化チタンよりも光触媒として古くから知られており、セルフクリーニング加工などに使われてきました。しかし酸化チタンの方が反応が強い(酸化亜鉛の約4倍)ため、現在は光触媒としての利用は酸化チタンほど多くありません。
http://www.hakusui.co.jp/J/products/img/ganryo.pdf
上記資料中に、アセトアルデヒドを使用した酸化亜鉛の酸化分解活性の比較試験結果があります。分解率が高いということは、それだけ多くの活性酸素が発生したということです。(つまりは肌にも悪い)
表面処理していない酸化亜鉛と表面処理した酸化亜鉛を比較すると、紫外線照射時に酸化分解活性の差が顕著です。前者が照射後急激に活性が高まり約30分でほぼ100%近い分解率を示すのに対し、後者は活性の進み方が緩やかで、60分後でも分解率は前者の1/5程度です。


§2 手作り化粧品材料販売サイトの酸化亜鉛の比較

活性が強いと肌への悪影響も懸念される上、他成分の変質も招き使用感が悪くなるらしいので表面処理してある微粒子酸化亜鉛を探しました。しかし意外と手作り化粧品材料では種類が少ないのです。

・ぴのあ
酸化亜鉛 100nm以下 表面処理なし  
微粒子酸化亜鉛 25nm前後 シリコンコーティング(処理剤:ジメチコン・メチコン)

・ビーエスコスメ
微粒子酸化亜鉛 15~35nm 表面処理なし

・PEACH-PG
酸化亜鉛 1000nm~1400nm 表面処理に関する記述なし(アメリカ産)
超微粒子酸化亜鉛 200nm以下 表面処理なし(アメリカ産)

・マンディムーン
超微粒子酸化亜鉛 120nm アメリカ製 コーティングあり(詳細不明)
酸化亜鉛USP(米国薬局方)グレード 240nm アメリカ製 表面処理なし
※コーティング有という記述があるが何でコートしているのか不明だったため問い合わせましたが、詳細は不明との返答でした。

このように、私が調べた中では表面処理してあり処理剤が明記されているものはぴのあの微粒子酸化亜鉛だけでした。

微粒子酸化チタンや酸化亜鉛は凝集性が高い粉末です。紫外線散乱能が充分発揮されるには、一次・二次粒子径が小さい事、分散性が高い事が要求されます。このため出来るだけ粒子の凝集を防いで一次粒子レベルで表面に処理剤を被覆することで分散性の向上をはかります。
それでは実際に原料メーカーでは粒子の凝集を防止すると同時に活性を抑制する表面処理はどのように行っているのでしょう?
超微粒子酸化亜鉛(および酸化チタン)のシリカ被覆処理技術についてテイカ(株)の特許技術がhttp://patent.astamuse.com/ja/granted/JP/No/4836232/に紹介されています。
(ただしテイカの化粧品用の微粒子酸化亜鉛商品にはシリカのみで表面処理したものはありません。)
この資料によると粒子の凝集を防ぐため、濾過、洗浄、減圧、加熱、撹拌(分散)など特殊な装置を用い、複雑な工程を経て表面処理されていることがわかります。
自分でシリカなりステアリン酸なりを酸化亜鉛と混ぜ合わせることでこのような一次粒子レベルのコーティングが出来るかというと、それは無理なのです。
というわけで、今回は選択の余地なし。ぴのあの微粒子酸化亜鉛に決定です。
表面処理なしの方の酸化亜鉛(100nm以下)も、吹き出物の消炎剤として購入してみました。


§3 ぴのあ微粒子酸化亜鉛の表面処理剤について

気になるポイント・石鹸で落とせるのかどうか問題
ぴのあ微粒子酸化亜鉛 全成分
・低温焼成酸化亜鉛
・メチルポリシロキサン(ジメチコン)
【代表的なシリコーンオイルです。撥水性・潤滑性に優れていますが、他の化粧品素材との溶解性に劣ります。】
・メチルハイドロジエンポリシロキサン(メチコン)
【化粧品に使用される 白色及び有色顔料の表面処理に使用されるシリコーン。顔料表面に焼き付け 定着させることにより 撥水性を付与することができ、化粧持ちが改善されます。また粉体同士の凝集も防止することができます。】

【】内はサイト「かのんの美容情報」さんより引用
http://kanoninfo.client.jp/knowledge.html

シリコーンによる光触媒粉末の表面処理は、活性抑制の他、撥水性を持たせて化粧崩れを防ぐ、分散性を高めて紫外線散乱効果を高める、製品の伸びを良くするなどの効果があります。原料メーカーのサイトを見ても酸化亜鉛の場合表面処理剤はシリコーンが汎用されています。(一部シリカのみの製品もあり)
微粒子化された酸化チタンや酸化亜鉛は分散性が良く、二次粒子サイズが小さければ小さいほど紫外線散乱効果は高い反面、活性も高まります。しかし表面処理していないものよりは活性は低いので直接紫外線を浴びるよりはダメージが少ないというのが一般的な解釈です。
このほか有効な表面処理剤としては、シリカ、アルミナなどの鉱物や、ステアリン酸などがあります。
気になったのはクレンジング無しで落とせるかどうか。上のサイトの解説だとこの2つのシリコーンはいずれも「落としやすさ‥×」ですが粉末のコーティング剤として使われているなら肌方向への密着性はないのかと思い、ぴのあさんに問い合わせたところ、クレンジングは不要との返答でした。
実際届いた商品をパックスベビーのUVクリームに混ぜて塗り、石鹸で落としたところ、ちゃんと取れていました。それなら無問題♪


§4 光散乱と粒子径

酸化亜鉛や酸化チタンは半導体としての価電子帯から伝導帯への励起エネルギーとして紫外線を吸収すると同時に、粒子サイズが光の波長に近い場合には光散乱によっても紫外線をカットします。UVA 波長350nm での透過率は、二次粒子の解砕と共に急速に低下します。すなわち、分散の進行と共に紫外線カット能が増大するということです。(出典:ハクスイテック株式会社 機能性顔料としての酸化亜鉛と今後の動向 http://www.hakusui.co.jp/J/products/img/ganryo.pdf)

また、可視領域での光散乱の小さな微粒子粉末は、通常の場合紫外領域での散乱能も小さいのですが、光の波長と粒子径の関係性で一定の条件、具体的には粒子径が波長の1/2付近で光散乱能が最大となります(Mie散乱・ただし二次粒子が球形かそれに近い場合)。資生堂はこの性質を利用して、微粒子酸化亜鉛の二次粒子径を制御し、更に特定の分散状況を作り出すことで紫外線散乱能を最大限に引き出す特許技術を持っており、この場合の二次粒子径はUVB280~320nmの短波長域に対しもっとも有効な70~140nmです。この技術の最大の要は二次粒子径の制御にありますので手作りする場合これは参考にできませんが一応出典を‥
(出典:微粒子酸化亜鉛分散物及びそれを含む化粧料 http://www.patentjp.com/19/D/D100010/DA10090.html)

ここで言う光散乱とは紫外領域でのミー散乱の事であって、粒子径が大きい場合に生じるいわゆる「白浮き」=可視光線の散乱とは別です。白くなるわけではありません。
光散乱の度合を計算する方法は光の波長と粒子径の関係性の違い(粒子径>波長、粒子径≒波長、粒子径<波長)により3通りに分かれていますが、この辺の理論と計算は恐怖の物理学なので私にはこれ以上は掘り下げて説明出来ません(^^;
http://www.nikkiso.co.jp/products/particle/technical/principle/theory05.html
↑に詳しい解説がありますので物理学の心得のある方はどうぞ。

と、色々調べてみると、いわゆるノンナノ(100nm以上)のサイズやマイクロ粒子(1000nm以上)を使用した商品は、いくら肌に優しくてもUVカット製品として必ずしも優れているとは言えないのではないかという疑問が湧いてきます。
確かにノンナノやマイクロサイズなら経皮吸収の可能性は0に近くなりますし、粒子が大きければ質量あたりの表面積は小さくなり発生する活性酸素も少なく、肌に優しいと言えるかもしれません。しかし粒子が大きければ当然同じ質量配合しても分散性は下がりますので高いUVカット効果は期待できないという事になるのではないでしょうか?現在多くのメーカーが35~50nmの酸化チタン、酸化亜鉛を使用しているのは、白浮きを抑えるほかにも、このあたりに理由があるのではないかと思います。
いまいちその差がピンと来ないので計算してみました。たとえばどちらも球形の50nmと1000nmの粒子を比べた場合、直径の差が20倍ですから体積の差は8000倍です。これがどんな差かというと、パチンコ玉(d11mm)とサッカーボール(d220mm)の大きさの差と同じです。パチンコ玉8万個とサッカーボール10個、同じ広さのプールに放り込んだ時の分散の違いを想像すれば簡単です。
実際マイクロ粒子使用タイプの日焼け止めで「日焼けした」というクチコミを見る事が結構あります。「日焼け止め」という本来の目的を果たしてくれなければ肌に優しくても仕方ないのでは?
ただ、マイクロ粒子といっても形状は色々あるようです。棒状であったり、大変薄い切片になっている場合など、単純に粒子径で大きさを比較できない場合もあります。
経皮吸収問題に関しては§6に記載します。


§5 酸化亜鉛の紫外線防止効果およびPA値測定法について

紫外線の波長の違い
UVB:280~320nm
UVA2(UVA短波):320~340nm
UVA1(UVA長波):340~400nm
太陽光におけるUVA波全体中のUVA2波の比率:8~20%
UVA1波は全紫外線量の75%以上であるという説があるが、詳細不明。

『UVB の作用として、曝露数時間後より皮膚に紅斑を起こし、さらに数日後には色素沈着をきたし、乾燥と鱗屑をおこす場合もある。また、UVA の作用として、曝露直後に皮膚を黒化させる作用(即時黒化)があり、大量のUVA が曝露された場合にはこの黒化が遅延黒化に移行するといわれている。
また、UVA は、UVB による反応を増強するとの報告もある。これらの急性反応に加えて、紫外線は皮膚ガンやシミ、シワで表される皮膚の老化に関与している。
UVB とUVA によるこれらの反応に対する寄与率は明らかではないが、UVA が皮膚探くまで侵入することによる影響は無視できないと考えられている。』
(出典:http://www.jcia.org/n/all_pdf/gul/pa.pdf 日本化粧品工業連合会 UVA防止効果測定法基準)

日常生活で我々が「日焼けした」と表現する、日に当たった後のいわゆるサンバーン、サンタンともに主な加害者は実はほぼUVBですが【注1】、一番波長の長いUVA1は肌の奥深くに侵入し、真皮層への影響(シミ、しわ)がより大きいと言われています。
【注1】紫斑、黒化作用は290~300nmの領域のUVB波で生じる。この作用への影響において、波長3 2 0 n mは波長3 4 0 n mよりも約1 0 0倍も強力であり、2 9 0~ 3 0 0 n mよりも約1 0 0倍弱い。

つまり、日常感じる「日焼け」についてはUVBをカットすれば良いが、後から出るシミ、皺など肌の老化予防はUVA1波をカットした方が良いのではないかという事です。
こわ~いUVA1波、これに対し酸化チタンや酸化亜鉛がどのような効果を発揮するのか?という事が書かれているのが下の論文。

紫外線防御剤としての酸化亜鉛の機能と開発
住友大阪セメント株式会社 桜井但氏 斎藤兼広氏
http://www.socnb.com/report/ptech/ultraviolet.pdf

これによると、酸化亜鉛は380nm以下の波長の光を吸収できるとあります。
これに対し酸化チタンはUVA2の領域である340nmあたりまでは透過率20%以下と効力を発揮しますが、UVA1の領域である380nmでは透過率は80%近くなってしまいます。(3ページの図3超微粒子酸化物の分光透過率を参照)
つまり、酸化チタンにはUVA1波を防止する効果はほぼ無いという事になります。
メーカーによっては酸化チタンはUVA波にも効果があるとしている場合もありますが、それはあくまでUVA2波への効果であって一番波長が長く肌の奥まで届くとされるUVA1波を防御するかどうかは疑問に思います。

それではなぜ酸化チタンのみ使用しているUVカット商品に高いPA値が表示できるのでしょう?

その答えはPA値の測定方法にあります。
日本化粧品工業連合会 UVA防止効果測定法基準
http://www.jcia.org/n/all_pdf/gul/pa.pdf
注1に書いたように紫外線照射直後の紫斑・黒化は主にUVB、うっすらUVA2によるものであり、UVA1カット効果は真皮層へのダメージや遅延黒化の有無で調べる必要があるはずですが、どういうわけか、PFA(Protection Factor of UVA)は即時黒化の最小紫外線量だけを基に算出されることになっています。
PFA=試料塗布部のMPPD/試料無塗布部のMPPD
(MPPD とは、照射後2~4 時間で、照射野のほぼ全域に微かな黒化が認められる最小の紫外線量をいう。MPPD の判定は、照射終了時から2~4 時間の範囲内の一定の時間で充分明るい部屋で行う。)
つまり現在のPA値は即時黒化のみで判定しているということです。上記したように、酸化チタンはUVA2領域である340nmの紫外線を80%吸収できます。だからこそ、酸化チタンのみでPA値を表示できるという仕組みです。そもそもPFAはUVA1の影響(遅延黒化、真皮層へのダメージ)について検査・測定していないのですから。
しかしまあ遅延黒化や皺の増加について、たとえば試験から半年後の精密な反応の違いが測れるかというと、試験後日数が経ちすぎている上に被験者は試験後も日常生活で日光を浴びているため、現実的に測定は不可能であり仕方ないとは思います。

結論、即時黒化や紫斑のみ防ぎたいのなら酸化チタンだけでも十分ですが、今表示されているPA値は遅延黒化や真皮層のダメージは考慮していない事は認識しておいた方が良さそうです。

少し話が脱線しますが、酸化チタンのみでUVA1領域までカバーする技術もあることはあるようです。
http://www.j-tokkyo.com/2008/C01G/JP2008-050242.shtml
これはざっくり言うと、粒子内部に金属原子又は金属イオンを注入した球状の酸化チタン(実際はもっと複雑な製造法です)をシリカでコートし、更に粒子径に幅を持たせて、最小粒径範囲でレイリー散乱、それ以上の範囲で紫外線から可視光線をミー散乱させることで広い範囲の波長の紫外線に対応するというもの‥らしいです(^^; しかも艶肌効果まで!
なかなかすごい技術らしいですが、これは二次粒子を形成しないことが条件となるようで、現実に製材過程で全く粒子の凝集が無いかどうか疑問です。また当たり前の話ですがすべての無機系UVカット商品がこのメーカーの酸化チタンを使っているわけではありません。

しかしここまで調べてみたものの、手作り材料の酸化亜鉛のUVA散乱効果に関してはどこの販売店に訊いても、実際にどの程度のPA値があるのか測定したデータは無いとの返答でしたorz 配合の目安として5%~10%以下という数字はあるものの、効果は謎って‥?しかしそれもそのはず、PA(PFA)の測定は日光ではなく特定の波長の紫外線を照射するための特殊な光源(ソーラーシミュレーター)やアナライザー等の機器を使用しますので、化粧品メーカーと違って試験装置を持たない素材屋さんでは測定出来ません。また§4で触れたように紫外線散乱効果は二次粒子の解砕と分散の程度によって全く違ってくるので単に配合率では測る事ができないのです。当然ながら、市販の石鹸乳化クリームに投入して混ぜるといった使用法の場合は二次粒子径は測れませんし、当然相当大きくなると予想出来ます。
ということでここへきて目標がいきなり『ぼやっとUV-A対策』というあやふやなものになりました(笑)

上記の住友大阪セメントの論文の 6.サンスクリーン剤への処方例で、酸化亜鉛を約12%配合したクリームでSPF15・PA++、酸化チタン5%併用でSPF20以上・PA++の紫外線遮蔽効果を得るという処方が紹介されています。これは一次粒子径35nmシリコンコーティングの酸化亜鉛使用で、合成油脂等と水をノニオン界面活性剤で乳化したクリームに配合しています。この処方で表記されている乳化剤のジPOE(10)ラウリルエ-テルリン酸ナトリウム(ラウレス-4リン酸Na)には分散性を高める働きがありますし、通常製剤の過程では高速分散機等を使用しているはずです。また製剤後の二次粒子径も不明ですし、手作りする場合は単純に比較できませんが一応参考までに‥


§6 ナノ粒子酸化亜鉛の安全性(経皮吸収)

ナノ素材の安全性を考える上で、光触媒作用による有機物分解(=皮膚へのダメージ)と切り離して考えるべきもう一点がこの経皮吸収に関する問題。
シリコンでコーティングされている粉末は凝集しにくいということは、分散性が高く紫外線散乱効果に優れている反面、仮にこの25nmの粒子が他の紛体とくっ付かない状態で皮膚に塗布されれば経皮吸収の可能性が皆無ではないということになります。健康な肌の場合細胞間隙は40~60nm(30~90nmという説もあり)なので、単純に一次粒子径と比較すれば経皮吸収可能なサイズです。
しかしいくら一次粒子レベルで表面処理がされていようが分散剤や分散機を使おうが粒子の凝集は完全には避けられないため、多くのメーカーが「ナノ粒子原料を使用していても二次粒子サイズが大きいため皮膚には入らない」という説明をしています。
まあ、素人目にはその考えが妥当に思えますが、現在厚労省や日本化粧品工業連合会では様々なナノマテリアルに関する資料を集めて安全性について検討しています。

1.厚生労働省「ナノマテリアルの安全対策に関する検討会報告書」の公表について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/03/h0331-17.html
(参考資料2:ナノマテリアルの健康影響に関する文献調査についてより引用)
酸化チタン(TiO2)については研究も多いのですが酸化亜鉛(ZnO)については文献は少なく、「ナノマテリアルの健康影響に関する文献調査について1」によると、イギリスのポーツマス大学のシェリークロス博士による日焼け止めのナノ粒子(亜鉛)の皮膚侵入に関する論文では、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(ヤシ由来成分のエステル油・界面活性剤としても使用される:分子量464.635)にシリコンコートのナノ粒子酸化亜鉛を混入して人の皮膚で24時間暴露した結果、角質層、表皮の下にはナノ粒子は検出されなかったという結果があります(ナノマテリアルの健康影響に関する文献調査について8項、53項参照)
しかしこの文献ひとつで皮下吸収が絶対ないと言い切れるかどうかは??です。(理由は下の2を参照)
それ以外本資料中には酸化亜鉛単体でのナノ粒子の皮膚浸透に関するデータの記載はありません。細胞培養液での実験結果がありますが特殊な環境下での実験であり、生体への影響と結びつけての結論は不明です。

2.微粒子原料を配合した化粧品の安全性等について(平成17年 厚労省資料より引用)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/11/dl/s1102-8s.pdf
日本化粧品工業連合会は、化粧品に使われるナノ粒子の経皮吸収についての実験データを記した文献の調査で、参考になる臨床データが5例と少ないながら経皮吸収は認められなかったとしています。しかし文献では粒子の分散状態や、塗布した状態での皮膚上または皮下での存在状態が明らかでないため、新たな粒径測定方法(顕微鏡法、光子相関法,レーザー回折・散乱法及び超音波減衰法の計4法を組み合わせる方法等)を用いて粒子の分散状況を確認し経皮吸収の有無を検討する安全性評価システムを検討しているとのこと。

上のどちらもまだ結論は発表されていません。
つまりまだ国や業界団体が認めた確たる安全評価システムが存在しないという事です。
皮膚から入って体に悪さするのかどうか知りたかったのですが、国も化工連も、悪さ云々以前に「入る」とも「入らない」とも結論付けていないのです。
結論、今のところこの問題についてはメーカーが「入らない」というのを信じるかどうか、使う側の自己責任(^^;

私的には今回色々調べて、完全に一次粒子まで解砕しないかぎり経皮吸収はまずありえない事やノンナノがUVカット効果に劣る理由も分かってきましたし、今回は手で混ぜ合わせる程度ですからこの問題は無視することにしました。
ナノ酸化亜鉛バッチ来い、レッツぼやっとUV-A対策!
人体実験(自分)の結果は製品のクチコミページにでもまた後日書たいと思います。といってもUVA防止結果は短期間ではわからないのでいつになるやら?

中途半端ですが以上、一応あれこれ調べた忘備録として記録しておきます。

このブログに関連付けられたワード

このブログを通報する

コメント(0件)

スキンケア カテゴリの最新ブログ

スキンケアのブログをもっとみる