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【香水ジャーナリストが読み解く】中国フレグランスブランドのマーケット成熟と、日本進出への展望

【香水ジャーナリストが読み解く】中国フレグランスブランドのマーケット成熟と、日本進出への展望

美容・香水ジャーナリストのYUKIRINです。


日本の香水市場は、10年前の約340億円から昨年2022年は約444億円と130%拡大しており、今年2023年はさらに8%程度増えると見込まれている。「日本では香水は売れない」と海外から断定されていた時代は終わり、多くの海外ブランドが日本進出に向け殺到するフェーズに突入した。

そんな中、アジア圏からは韓国のフレグランスブランドが2020年頃より日本進出に向け前進し始め、2022年に「ノンフィクション」が伊勢丹新宿店1F 化粧品/プロモ―ションにてポップアップショップを展開。非常に売れ行き好調につき、同年サロン ド パルファン2022への出展が実現した。現段階では日本未上陸である「タンバリンズ」も日本での展開を視野に入れていると想定される他、メイクアップブランドの「ヒンス」がフレグランスの展開及び日本限定の香りの発売を行う他、@COSME TOKYOでも取り扱いのある「エイディクト」も人気で、売り切れの香りも店頭で目立つ。また、台湾からは「P.Seven 茶香水」が日本で展開し、今年の伊勢丹新宿店「サロン ド パルファン2023」への出展を決めた。

このように韓国や台湾の香水ブランドについての情報は多く、特に韓国ブランドの香水は今後も多く入って来る可能性が高いと私は考えるが、中国のフレグランスブランドについてはどうだろうか。


●中国の香水市場について


中国コスメは現在、「花西子」が日本向けECと伊勢丹新宿店での長期ポップアップショップを展開している。他にもメイクアップに関して中国コスメは増えていく傾向にある。それに対し、フレグランスブランドに関してはまだ未開拓ジャンルと言えるだろう。その原因は、中国本土ではドメスティックブランドでの香水市場がまだそれほどには成熟していないことにあると想定する。

iResearch社のレポートによると、中国の香水消費規模は、2017年が約8億6700万ドル、2020年約17.6億ドルへと急速に拡大しているものの、2019年の世界の香水消費量に占める割合はわずか2.5%に留まっていると、Perfumerの楠 尚子によるVOGUE BUSINESS記事の翻訳で伝えられている。

数年前の日本と同じく、ハイエンドでオーセンティックなブランドの香水が支持される傾向が中心で、ニッチなメゾンフレグランスへの興味も増えてきている段階だが、まだまだ海外ブランドの香水ユーザーが多い。ここ数年で中国の香水市場が温まり、よりオリジナルな中国フレグランスブランドが増加していくことが期待される。その結果、日本進出も当然視野に入れられるだろう。

●熱を帯びる香料会社のアジアマーケット視点


先日、日本上陸した韓国のフレグランスブランド「BORN TO STANDOUT」は、海外でも通用するメゾンフレグランスを目指し、名だたるヨーロッパンの調香師が手がけているが、ビューティジャーナリスト木津由美子氏取材によるFASHION SNAP記事によると、フェルミニッヒ社の協力を得るまでに非常に苦労されたことが伺えた。世界有数の香料メーカーに最初に掛け合ったときは、多額の契約料や多くのペナルティ項目をつけられる、調香師の名前を出したくないなどのハードルがあったと言う。その点はぜひ下記の記事も読んでみてもらえたらと思うが、フェルミニッヒが協力体制をとったのは、2019年に「上海パフュームクリエイティブセンター」を設立したこともあり、アジア圏の新進気鋭ブランドとの協業に意欲を持っていたからではないだろうか。
参照記事:https://www.fashionsnap.com/article/fragrance-vol4/

中国のラグジュアリ―フレグランスブランド「Documents」は、ジボダン社に協力を得て、賦香率の高いフレグランスを展開している。常州にジボダンの工場が出来たことも、ローカルブランドへの協力体制が伺える。「Documents」は上海に初の旗艦店をオープン。アートワークやボトルも非常にアーティスティックで、個人的にも試してみたいブランドだ。
※写真は公式Instagramよりお借りしています
https://www.instagram.com/documentsperfume/

世界のフレグランスの約半分を占めると言われる香料メーカー、ジボダン社、フィルメニッヒ社、インターナショナル フレーバー&フレグランス社(IFF)、シムライズの中で、特にジボダン社とフェルミニッヒ社はアジア、中国市場に興味を持って動いているように感じる。


その他にも、中国発のフレグランスブランドをいくつかピックアップする。

シンプルで美しい「To Summer」

東洋の香りをコンセプトにし、オーセンティックな中国の文化や歴史をモダンに表現している。
※写真は公式サイトおよび公式Instagramよりお借りしております
https://www.instagram.com/tosummer_official/

ユニークなビジュアルの「BEAST 野獣派」

パンダのボトルキャップが特徴的で、ファッションブランドが母体だと言う。
※写真はhttps://www.carousell.sg/よりお借りしております

2008年に創業した「BOITOWN(冰希黎)」

今年15周年を迎え、こちらはリーズナブルな価格帯で展開しており、シンプルなボトルや分かりやすいタイトルである。
※写真は公式サイトおよび公式Instagramよりお借りしております
https://www.instagram.com/boitownparfums/


来年、再来年あたりには、大手百貨店や商業施設でも、中国フレグランスのPOP UPなどが入っていくことも想定される。それほど中国のビジネススピード感は早く、日本の香水市場にも何かしらの影響を与えるだろう。今後の動向にも注視していきたいと思う。


【執筆者】

美容・香水ジャーナリスト YUKIRIN

日本で唯一の香水ジャーナリストとして、メディアで香りの情報を発信。またナチュラルオーガニック美容の専門家でもあり、コラム執筆や、記事監修を行う。これまで2,000種類以上の香水や、500ブランド以上の化粧品に触れ、新製品や国内市場の動向を網羅する他、ブランドコンサルティングとして活動中。
https://ja.wikipedia.org/wiki/YUKIRIN

★公式Instagram
毎月第一土曜日の22時からは、フレグランス専門インスタライブを配信中。
https://www.instagram.com/fabgearyukirin3/


★連載:WWD 香水ジャーナリスト連載
https://www.wwdjapan.com/author/yukirin

★連載:FASHION SNAP「WEAR PERFUME」
https://www.fashionsnap.com/article/wear-perfume-valentine/

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コメント(1件)

  • 「Documents」はボトルもビジュアルもモダンな感じですね。
    「To Summer」はラベルが感じなので香りのイメージがわきやすい感じがします。コンセプトが東洋の香りとのことなのでどんな香りなのか気になります。
    「BOITOWN」は言われなければ中国のブランドとはわからないですね。シンプルなボトルで好感持てます。
    中国のフレグランスブランドというなかなかコアな情報ありがとうございます!

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    2023/9/17 12:32

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