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ナントに雨が降る

ナントに雨が降る

大昔からずっとショートカットである。何回か伸ばしたことはあるが、だいたい肩についたところでバッサリ切ってます。

もうショートヘア歴も20年以上いや、たぶん30年くらいはそういう頭をしている。

なんでかはわからないがずっとそう。似合うと思ってやっているのと、なんというかずっとそうしていたいという気持ちがあってやっている。

ハナシは飛びますが、青いかぼちゃの父という人はちょっと変わっている人で、なんというかオラオラのガテン系肉体労働者ですが、なぜかインテリの女性が大好きで、好んで聞いていた歌手に金子由香利という人や岸洋子がいました。二人とも、シャンソンというフランスの昔の流行歌を主にレパートリーにしている歌手です。
フランス語や英語、スペイン語の歌も歌っていました。
たまーにそういう歌手のテープをかけてドライブに連れて行ったりしてくれました。

ので、私はお小遣いが自由に使えるようになって、自分でステレオを買って部屋につけたときに買い求めたのはシャンソン歌手のCDでした。ジュリエット・グレコやイブモンタン、ピアフなどしぶーい歌手のCDを集めては聴いていました。
その中でも私の中では別格だったのは、ユダヤ系フランス人の「バルバラ」という方のCDでした。岸洋子さんも、彼女の代表曲「黒いワシ」をカバーしております。

バルバラさんはいつも黒ずくめの恰好をして、黒髪のショートカットの茶色の瞳の女性でした。美人というよりは凄みのある顔をしており、アイラインのかなりきつい化粧をしていました。
歌もうまいんだけど、暗い歌が多かった。でも私は彼女の「ゲッティンゲン」という歌と「黒いワシ」が大好きでよく聞いていたもんでした。

が、だんだんシャンソンからロックやジャズを聴くようになっていつの間にかバルバラは忘れてました。が、東京にいたときにとある有名なDJの方と知り合いになり、その方と世間話をしてたときに急に「そういやあなた顔は全然違うけど、雰囲気や髪型はバルバラの若いころにそっくりだよね。」と言われたことがあります。
嬉しかったですね。だって意識してましたからね。髪型だって彼女のショートヘアが恰好よくってずっとそうしてましたから。

その彼がなんか発火点になってまたバルバラに帰ってみました。
で、私はその時にバルバラさんの背後にあるものすごい思いストーリーを知りました。

「黒いワシ」という歌はうとうとしてまどろんでいたら、黒いワシが自分にかぶさるように出てきて、そっとふれて飛び立っていったという歌です。
アレンジはプログレッシブロックのようなちょっとシンフォニックな曲で、なかなか壮大なナンバーですが、歌詞を読んでも「?」ということが多かった曲です。黒いワシはなんなのか全然わかりませんで。

で、これ、彼女の死後に彼女が書いたという自伝が発表されたのですが、彼女は子供のころ、父親に性的虐待を受けていたと記しております。
黒いワシは夜に自分のベッドにやってくる、お父さんのたとえだったようです。
私はこの歌詞の意味がようやくわかって愕然としました。

彼女は子供のころはナチスドイツの目を逃れるために過酷な生活をしたと言われます。戦争が終わって思春期に入ったら今度はろくでもない父親に苦労させられてたんですね。

で、もう一曲フランスの歌謡曲史上名作の一つと呼ばれているバルバラの曲に「ナントに雨が降る」という曲があります。
これはバルバラがティーンのころに、家出をしたろくでもない父親について歌った歌です。
ある日、バルバラの元に知らない人から電話がかかってきて、その電話は「あなたのおとうさんはナントで病みついていて、危篤です」という内容のもの。
バルバラは恩讐を超えて、お父さんの最後を看取るためにナントへ行くという歌です。
その日は雨が降っていた。で、危篤のお父さんに会いにいくために電車やバスを乗り継ぎ、ナントへ行く。

お父さんと話したのかどうか全くわかりません。でも歌の締めは「モンペールモンペール」
と私のお父さんと2回繰り返してます。

私はこのエピソードを知らないでこの曲を聴いていたときは「つらい歌だ」と思って聴いていましたが、今はもうとてもじゃないけど「聴けない曲」になってしまって私の中では封印している曲です。それくらいとてもつらい「お父さん」という呼びかけの曲なんです。

で、ま、あるときぽっこり暇ができて、私はナントへ行ってみました。
どうしても行ってみたかったのです。
今バルバラがお父さんを看取った家のある通りは「バルバラ通り」になっていて、バルバラの広場までこさえてあると聞いていて、「そこへ行ってみたい」という気分になったからです。


ナントの中心地から外れており、場所がよくわからなかったため、私は市内観光案内所で英語のできる人を探して地図を書いてもらって行ってみました。おねえさんは「たまにあんたみたいなのが来るけど、言っておくけどかなり遠いわよ。バスでここから40分だよ」というハナシでした。
「日本人でバルバラ好きな人っているのね、へえ」
とかかなり変な風に感動されてちょっと「?」という感じでしたが、おねえさんの地図はものすごい丁寧で正確でした。言われた通り、バスはなかなか来ない、そしてかなり鈍行の時間のかかるバスでちょうど40分、地図の通りにバルバラ通りと広場はありました。

で、広場には彼女の全盛期を模した彫刻がありました。


素晴らしい歌手だったと思います。そして大人の歌手だったと思います。「我が麗しの恋物語」という歌は日本のクミコさんという歌手がレパートリーにしてますが、やっぱりバルバラにはかないません。
で、ちょっと世の中をハスに構えてみているようなアンニュイな、でも絶対的な強さも秘めていて手ごわい大人の女性、黒づくめの細い肢体が神秘的な女性に見えました。
私の憧れのプロトタイプの女性と言っても過言でないくらい、憧れてます。
で、彼女はなんだろう、歌うことがセラピーだったのか自傷行為だったのかよくわかりませんが、ものすごい重い歌をたくさん残してこの世を去りました。

本日は小雨が降っておりまして、なんだか私がナントを訪れたときも雨が降っていたのですが、ナントを思い出してこんなことを書いてみました。

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コメント(1件)

  • sayingさま、「それは黒いピアノからはじまった」とかいう自伝があってそこから背景がわかったようです。本買ってみたけど、フランス語なんでまだ読んでません。いつか読みたいとおもいつつもう1年たってしまいました。バルバラ聴くとしんみりします。彼女のラストダンスは明るい面が出て楽しい曲ですよね。

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    2012/10/21 17:50

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