
ルタンスの資生堂インウイの最初のCMでしょうか。
豊穣の果実の冠をかぶるこの女性、手にヨハネ(ヨカナーン)の首を持っていたならサロメのよう。ビアズリーがオスカー・ワイルドの「サロメ」の挿絵を描いたアールデコの世界に似ています。
「美術館からブラウンが盗まれました どうしても欲しかったブラウンです」
このCM作品はセルジュ・ルタンスのはじまりかどうかが定かではありません。このあとの「配色遊戯」は騎士が登場するバロック調。「遊び心を刺激する、セルジュ・ルタンスの配色遊戯」とナレーション。
「ゆらゆらとセルジュ・ルタンスの夢見心地」では、「風とともに去りぬ」で有名なベラ・バルトーク(Béla Bartók )の「楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」が使われています。
■https://www.youtube.com/watch?v=Bd-2Yfhy-LE

このあと「86年春夏のインウイミュージックカラー」では音楽は、ベニー・グッドマンのシング・シング・シングが使われています。
そうして「サスペンスカラー バイ セルジュ・ルタンス。色と光が語りかける、秋冬のインウイ」、「夜は歌っている、色づいている。ナイトブルー バイ セルジュ・ルタンス」、「森は微妙な色使いの見本帳です。セルジュ・ルタンスの新色、インウイ」とつづきます。
セルジュ・ルタンスの「サスペンスカラー」、「ナイトブルー」、「森は微妙な色使い」の映像からは、未来派のピカビア、オルフィスムのドローネーからは、生物や金属、色と光を取り入れて、ピカソのキュビスム、マティスのフォーヴィズムを想像させ、彼らがそうだったように、アフリカの彫刻からの影響も見ることができます。
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「美術館からブラウンが盗まれました」INOUI - Shiseido Co., Ltd.
CMの音楽はキャスリーン・フェリアー(カスリーン・フェリアー)の歌声です。動く彫像、豊穣の女神のようなヒロイン。
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ルタンスの関わったインウイのCMでは、普遍的な「美術館からブラウンが盗まれました」以外は興味がありません。
果たしてセルジュ・ルタンスの芸術性がこれらの映像に現れているかといいますと、製品そのものに芸術性を感じ、これらのCMは遅れたファッションの代表である「分厚い肩パッドのジャケット」という感じで受け取りました。
セルジュ・ルタンスは、1981年から1986年までインウイのディレクターを務めます。ケヴィン・オークイン、ディック・ページがそのあとを継いで、現在のパッケージはディック・ページ。
ほとんど廃番になりました。本当に盗まれちゃったのですね。
配色遊戯
夢見心地
1986 INOUI 春夏 ミュージックカラー
サスペンスカラー
ナイトブルー
森は微妙な色使いの見本帳です