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長岡弘樹 『教場』

長岡弘樹 『教場』

¥1,620
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君には、警察学校を辞めてもらう。この教官に睨まれたら、終わりだ。全部見抜かれる。誰も逃げられない。前代未聞の警察小説!




警察学校を舞台にした連作短編集。
今まで警察小説は沢山読んだことがありますが、「警察学校」に焦点を当てた小説は初めて読みました。
そういう意味で新鮮でとても新鮮で面白かったです。


ただこのミス2位ということですが、確かにミステリー仕立てにはなっていますが、ミステリー小説として読むとちょっと物足りないかな。


物語は第一章から第六章まで、警察学校の六人の生徒が主人公ですが、全編を通して本当の主人公は風間という教官です。


警察学校というところがこの小説に描かれているような場所なのだとしたら、警察官になるって本当にすごく大変なんだな、と思うと同時に、警察という組織の怖さを感じました。
そしてこういう学校を卒業してなるのが警察官なのだとしたら、警察官が傲慢で陰険な負のイメージがついてしまうのも致し方ないのかな、とも。


そもそもこの本で描かれている警察学校の生活ははっきりいっていつの時代の話?戦時の日本の軍隊か?というぐらい上から下への圧力や暴力は当たり前。厳しいという言い方もできるかもしれないけれど、こんな風にしないと警察官を育てられないのだとしたら、それはちょっと違うよな、と思ってしまうようような学校なんですよね。


でもそんな中、風間教官の鋭い洞察力、そして彼の教えは素晴らしかったです。
隠し事は一切できない、彼のような洞察力を持った人間こそ、警察官という仕事に向いている人間で、他の教官とは違って物静かで何を考えているかわからない分、怖い。怖いけれども彼のような教官こそ、警察官を育てるのにふさわしい人物なんだろうな、と。


そしてここに登場する生徒達は未熟な人たちばかりです。
警察官を目指しているのに犯罪に手を染める者もいれば、陰険ないじめや裏切りがあったりもする。
こんな人たちが警察官を目指しているのかと思うとがっかりな感じだったりもしますが、警察官と言えども普通の”人間”で、警察官だから特殊な人間なわけではなく、そんな普通の人たちがなるのが警察官、なのかもしれません。


そして風間が言う、修羅場や挫折、胃が縮むぐらい追い詰められた経験をしたことがない者、ぎりぎりでの戦いを経験できなかった人間には警察官という仕事に必要な”度胸”がないというのには妙に納得しました。


ただ風間以外の教官たちからは、正直警察官になろうとしている生徒達を警察官にさえたくないのか、ただいじめたいだけなのか、なんだかなぁとがっかりな気持ちになってしまったのは事実。
正直、実際はこの物語とはかけ離れたもっと立派な学校であることを祈りたい感じです。


絶賛するような面白さはなかったし、後味もよくなかったりはするのですが、個人的にはエピローグに出てきた風間教官が遭った「憂き目」が気になるので、続編が出てくれたらいいな、と思ってます。


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