「とても不毛な20年ほどが過ぎた今、香水は輝きを取り戻している」
「そして採点を終えた今、これだけは言える。感涙ものの香水は、今も必ずどこかにある。お楽しみに。」
引用元:世界香水ガイドⅢ ルカ・トゥリン タニア・サンチェス著 秋谷温美訳 原書房上記の「」内は、本書のルカ・トゥリンの序文、「香りの現代史1918-2018」から引用の文章です。
今回のブログは「世界香水ガイドⅢ」の所感です。
1208種の香水レビューと、香水関連の読み物で構成されています。日本においては先月下旬に出版されました。
春頃に前著:世界香水ガイドⅡへの所感を少し書いた事があります。記事はこちら↓
ブログ:〈追記あり〉ル・ガリオン ソルティレージュ/アクアディパルマ プロフーモ【クラシカルな香り】
ⅡとⅢ。
レビュー数は前著1885→本書1208と、かなりの減で今回は厚みがかなり薄くなりました。
前著同様、香水の個々のレビューにはあちらこちらに「うーん?」と思うところはあるものの(苦笑)、やはりこれもまた前著同様、レビュー以外の読み物部分:
世界の香水市場の現況や香水に対する考え方そのものには、またもや深く、深く、ぶんぶん首を縦に振りたい箇所があまりにも多くありました。
そして、辛口すぎかつ個性的すぎて幾らなんでもこれどうよ?とと思う言葉が多いルカ・トゥリンですが、冒頭に挙げた引用部分、本当に希望を持っていいんじゃないかと思わせてくれる、素敵な言葉です。******
では以下、思い立った順にまとまりないですが所感を。これ以上はネタバレになるかもしれないので、内容を間接的にでも知りたくない方は閲覧しない事をオススメします。
(現時点で、わたしは他者の本書籍の購入者レビューは一切見ていないです。本稿を書くにあたり影響を受けたくないので。これを書き終えたら、閲覧するつもりです(出版から日が浅いので、あればだけど))。
●載っているブランドについて。
前著は(原書の初版は10年前だそうです)、前々著の改訂版(だから、Ⅱ)だったので、近代からの誰もが知る有名香水、名香(←左のふたつは=では結ばれないです。 いちいち一言居士でスミマセン)が網羅されていたので、レビュー内容の正確性は別としてわりと誰もが楽しめるものだと思いますが、今般の「Ⅲ」は、前著と被る香水は再び書かない、という事と、近年の香水業界の商品傾向・勢力図の著しい変化に伴ってでしょう、レビューされているブランドはニッチ・メゾンの割合が大変多くなっています。ずいぶん様変わりしました。
●結構期待していたあのブランドのあれやこれや・・・は、無いものが結構多かったですね。
1208種など10年間の新作のほんの一部と著者も書いてます、もう、とにかく香水のブランド数と製品数は多すぎ、今この瞬間にも新ブランドや新作が続々誕生の現状ですから。
わたし的には何を期待していたかというと、ペンハリガンのポートレートシリーズや、メゾンクリスチャンディオール、フェラガモのタスカンソウルクリエイション、無かったなぁ。んー、他にも色々あるけど2018年版ならあるかな?と思っていたものが無く残念(゜゜)☆。
それと、伝統香を名前だけ遺して全く別物の骨抜き製品に改変したここ数年の数々についてどう評価しているかも知りたかったですが、無かったです。まぁ別に事実が変わるわけじゃなし、彼らがどう書くかの好奇心だったのですが。
ただ総合して、丁度前著を出版したその後、かろうじて残っていた名香も次々処方改悪や廃番の波に攫われていったという総合的な所感は載っており、全く同意でした。
●最近各社各ブランド、香りマニアの中にはそれらしい謳い文句をつければ「特別感」に1本2~3万、躊躇せず払って購入・コレクションする層が存在する事に気づき、「通常ライン(?)」の上位としてエクスクルーシブラインを設ける事が大流行してます。また、全ラインナップがそれである、というメゾンも勿論多い。私もかなり試香しましたが正直「玉石混交の、『石』の方が多い」状況です。半額か3分の一ならまだわかるけどなぁ。というのが過半数という印象。もちろん好みの問題もあるとはいえ。
で、とある、なんちゃってエクスクルーシブ(価格は3万等ですよ)のいくつかをハッキリ、バッサリ斬っていました。(実際わたしも試香して、同じ感想のだったので)よくぞ仰って下さいましたという感じ。どのブランドなのかはもちろんここには書かないですけど。
●過去ブログで触れたんですが、私はどちらかというとタニアと所感が似ています。
(前著ではケーレックス、パリ、サムサラ、プロフーモ・・・他にもいくつかまさしくその通り!と思える所感がありそんなに一致するのは珍しいほど)
でも今回の「Ⅲ」は、ルカのレビューが多い気がします。各香水レビューの文末に、「=LT」とあるもの。前作はもっとタニアのものも多かったですが・・・。正確に数えたわけじゃないですが。
やっぱり、ルカの所感が多い方が売れるからかなぁ。今回は、多くの人の目を惹くような有名香水に関する言及は殆ど無いですからね。
載せているものは2人の意見が一致したもの、という建前ですがなんだか寂しいなぁ。
●で、どちらにしろ香水個々のレビューは、単に個人的感想とは思っています、が、
彼らが定めた香調のカテゴリー12種の、それぞれの
「TOP10」が載っているのですが。
カテゴリーは以下↓
女性用/男性用/内省的/外交的/アニマリック/フローラル/シトラス/レザー/スモーク/新しい/レトロ/ウード
中には複数カテゴリに跨ってかぶっているものもあるので、12×10=120種よりは少ないです。
その中に、私の手持ちフレグランスあるかな~って調べてみましたら、
ひとつだけありました^^☆
ソルティレージュ(ル・ガリオン)
です。カテゴリー:レトロ(笑)☆。まぁ、だからなんだ?と言えばそれまでですが(笑。)大好きな香りです(^ω^)。
わたしのクチコミはこちら
●私が数年前からずっと、陰ながら心で応援していた日本の香水ブランド「パルファンサトリ」が今回から載り、概ね高評価だったのはファンとして本当に嬉しい限りです。
序盤の読み物の中でも好感度の高いブランドとして登場しますし、
いくつかの香水のレビューも概ね高評価。「織部」と「ハナヒラク」が特に評価高いです。
この二つは私はサンプル試香はしました。
(11/17追記:上ふたつに加えて、桜・さとり・シルクイリスの計5種が星4(五段階評価)で高評価です。レビュー文の温度感が特に高く感じたのが、最初に挙げたふたつということで。なおこれらも私はサンプル試香した事あり。追記ここまで)
「ハナヒラク」は「新しい香水」のTOP10に入っていました^^。
残念ながら私の持っている「紫の上」と「合歓」は載っていないんですが。
個々の香水のなかには、スゴイ辛口評価されているものもありましたが、もうルカには言わせておいてですね・・・(笑)。日本のメゾンがこれだけ高評価を勝ち取っただけでも◎ですね。逆に好きなブランドや香りをルカがけなそうと星1だろうと全然気にしませんが、そりゃあ好きなメゾンは褒められている方が嬉しいです。
手持ちのパルファンサトリの香りたち
「紫の上」のクチコミはこちら
●ルカのデイリー愛用香のふたつの中のひとつは「ミツコ」(もちろんゲラン) だそうで、『お揃い嬉しいです。』の世界(笑!!)たったふたつ挙げた香りが私の数少ない手持ちと被るなんて。ただ、私はデイリーではなく特別な日用ですから、お国柄と財力の差でしょうか(笑☆)。
ミツコのクチコミはこちら
(ミツコは今年が丁度生誕100周年で何かイベントが銀座で行われてる最中でしょうか。)
●なんだかんだ言って、著者の二人は香水に詳しいし業界の動き等への所感も極めて鋭いし、視点も含めて総論では共感共感の連続で、お二方、やっぱり香水好きなんだろうなぁ(当たり前すぎるか 笑)とつくづく感じます。
かなりの香水好きでも、ブランドのプロモーション用文言をそのまま金科玉条のように受け取って疑いもしないという人は結構多いので、こういった視点の評論は貴重です。
※もちろん看板に偽りなしのブランドもいくつも存在します。
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喜んだり、ある種醒めた目で眺めたりと結局はやっぱり気になる書籍、気になる二人、というところですね。
でも私は、本書で両者が褒めている香水をたとえ星5であっても、すわ、早速試しに行こう!!とは思わない人間です。私は今後も自分のぺースと鼻と判断力で香りを選びます。
けれども冒頭に挙げたルカの言葉。「感涙ものの香水は、今も必ずどこかにある。」
私は、一度はもう、香水の世界は終わった、新規の香りは探さず「思い出に殉じる」かあるいは古典香探訪でいいかと思いましたが、確かに丹念に探せばいくつかの素晴らしい香りにここ数年、実際出会えました。2000年以降の〈嘆きの20年〉が終わろうとしている、才能ある、意欲的な新しい勢力が現在台頭しつつあるという話を信じて、マイペースで香りとの出会いを楽しんでいきたいです。
そしてやっぱり、たとえば誰かとの話題に、ある香水の名前を挙げただけでその香りが流行っていた頃を瞬時に一緒に思い出し盛り上がれる(ヒットソングのように)、そういう時代は終わったんだなぁと思います。マスからパーソナルへ。時代の流れですね。
また長くなってすみませんでしたが、本日はこの辺りで。
AtIiさん
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