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無知がリップモンスターを塗るまでの話

無知がリップモンスターを塗るまでの話

この記事は、大学4年生にしてメイクを始めた、超絶ダメ女の心の記録です。
人様にお見せするようなものではありませんが、もしも誰かの心の支えになれたなら幸いです。





「変わらないね~、安心した」

大学三年生。小学校からの親友と一年ぶりに会う約束をした。
笑ってそう言われたとき、心がズキッと痛んだ。
その子は、垢ぬけていた。

その頃、すごく気になっていた。
私は中学生から何も変わってない。

私はオシャレに本当に興味が無かった。
だけど年を重ねるにつれて少しずつ、ようやく、可愛くなりたいとか、綺麗になりたいと思うようになっていた。
それでも。

「えぇっ!? ごめんなさい、中学生かと思って!!」

遠出した先で「15歳以下の子に焼き芋プレゼント」というバナーがあった。
親が買い物をしたら、私に焼き芋が渡された。当時21歳。
若々しいのはいいこと……そう励まされた。

多分そうじゃないんだ。
にゃんこ先生のトレーナー、七分丈パンツ、ファットキャットのついた斜め掛けカバン…
ワンレンの黒髪、色黒、赤眼鏡…ガチのすっぴん。
それが、そこにいた私。
焼き芋を貰うのに相応しい、芋女……。

その日はとびきり手抜きだった。っていうのは言い訳。
大学生になるからと、一度、少しだけ明るくなるように髪を染めたことがあった。
洋服にもこだわってみた。スカートも履いた。
Curelのスキンケアを買った。でも、メイクにまでは手を伸ばせなかった。
そんなに変わらなかった。
当時は、本当に「可愛くなりたい」と思っていなかったのかも。
「もう大人になるんだから、メイクも出来ないといけないんだけどなぁ」…。
そんなことばっかりで、本気で「可愛くなりたい」なんて思ってなかったんじゃ?





ある日、大学の駅前でチラシが配られていた。
明るい茶髪を綺麗にストレートにした、スカートを履いた女子大生に対して配られる、明らかに美容系のチラシは……私には配られなかった。
一瞥すると、チラシには鼻セレブのティッシュが付いていた。

焼き芋と、友達に言われた言葉と、その出来事が、ついに火を付けた。
大人びたい。垢ぬけたい。綺麗になりたい。

その夜、YouTubeで、初心者向けメイク動画を見た。
えっ? こんしーらー……? ファンデーションは知ってる。でもパウダーってなに?
パウダーファンデーションとパウダーはちがうの?
母親はメイクをしない人だったので、教えてくれなかった。
なにせ女友達が少ない。しかもほとんどみんなメイクしない。
とにかく動画を見漁った。えーと。垢ぬけるには、眉毛が大事らしい。
まずは眉毛を書けと、母親が言った。動画もそう言ってる。
とにかく、見習ってメイクしたら、私も少しは大人びるよね?

突如湧いた意欲。だけど、今までがおかしかったんだと思う。
二十歳になってから、体質が変わった。
それまではずっとお腹の調子が優れなくて、本当に出不精でゲーム以外に意欲がなかった。
それなのに、突然健康になって、ご飯も大好きになって、お出かけも楽しくなった。
就職試験のための勉強を始めて、どんどんいろんな知識を吸収するようになった。
社会の仕組みも、それまで全く気にならなかった言葉や景色も、急に光り出した。
行動力と意欲が、まるで何かを取り戻すかのように、底が抜けたかのように湧き始めた。
私の人生は、二十歳から始まったかのようだった。

母はメイク無知なので、叔母さんとドラッグストアに行った。わぁ、なんて恥ずかしい。
YouTubeで学んだ拙い知識で、とりあえずメイク道具を揃えることにした。
何も持っていなかった。なーんにも。
そして、初めて買ったメイク一式(?)がこちら。


【初めて買ったメイク一式(?)】
・ちふれ UVリキッドファンデーション
・キス マットシフォン フィニッシングルースパウダー
・キャンメイク パーフェクトエアリーアイブロウ 02
・キャンメイク ミックスアイブロウ 02
・キャンメイク パーフェクトスタイリストアイズ 19
・キャンメイク クリーミータッチライナー 02
・セザンヌ ナチュラル チークN 10
・ニベア リッチケア&カラーリップ スモーキーローズ

【持っていたスキンケアアイテム】

・キュレル 化粧水 I ややしっとり
・キュレル 潤浸保湿 乳液


あれれ~? おっかしいぞ~?
下地はどこにいったのかな~?
他のものは無くてもまぁ何とかなるかもしれないけど
下地は~~~???????

なんと、当時の私は、スキンケア=下地だと思っていたのである!!!!!
買い物中の驚異のセリフを聞いてみよう。

「ね~、パウダーってなに?」
「パウダーファンデーションとなにがちがうの?」
「ん……?フィニッシュパウダーっていうのが別にあるはず……んん?」
「リキッドファンデーションが下地?」
「べーすめいく……?」
「下地→ファンデってことは乳液が下地なんじゃないの?」

お、おお、おおおおお!! カオス!!!
無知は罪である。

マスカラは?ビューラーは?
と思っているそこのあなた。
ビューラーが怖くてマスカラだけ塗ったら前が見づらくていやになった高校生の私がいたので、まつげは後回しになったのである!!!

眉マスカラは?
そんなもの知らない!!!!!!!

コンシーラー・シェーディング・ハイライトは?
もうちょっと上級者になってからにする!!!!!!!!!

といった具合で。
その後、リキッドファンデーションを塗った私は、頭の中が「?」。
なんか、ちがうなー。やめとこ……。(え?)

とりあえず。眉毛を書いた。垢ぬけるって聞いたから。
キャンメイク ミックスアイブロウ 02を使って、付属ブラシで書いてみる。
乗らない。よくわからない。
塗る。塗る。
お。なんか……濃くなった。かけた!
この……ペンシルは、眉尻に使うんでしょ?
動画を見ながら書いてみる。
……? できた。
え? 左右非対称でワロタ。大草原。
そりゃそうですよ、眉毛一切整えてないんだもん。(え?)

せっかく買ったので、アイシャドウも書いてみる。
んぁ? 肌が黒いから、なんかよくわからん。
動画の通りに塗れた。はずなのに。
肌が黒いから、全く動画の通りじゃない。
あははははは。

アイライナー……かけない。よくわかんない!ポイ!
チーク……はまだいいや。

なんかやっぱりよくわかんない。
もう一度動画を見る。そして、全てを知る。

追加購入。

・キス マットシフォン UVホワイトニングベースN

たまたま、何の基準か知らないけど、気に入って買ったパウダーがキスだったから。
合うものを買おうと思って購入。
ファンデが「よくわかんない!」と感じていた私は、YouTubeで得た知識と、キスの売り場に書いてあった「ノーファンデメイク」という言葉に影響を受けた。

下地を塗って、パウダーをはたいてみる。
なんと、肌が綺麗になった。
あ……なるほど。これが、正しいのね……。

ちょっとしばらく、下地とパウダー、眉毛を整えて書いて、アイシャドウだけやってみよう。
ちゃんと知識が付くまでは。
そこからようやく、正常な道を歩み出した。

無知を思い知った21歳女子大生は、勉強に勉強を重ねた……。





メイク(?)して、少しオシャレをして、スカートを履いて、大学に行った。

駅前。チラシを配っているのが見えた。
何気なく歩いて、すっと、目の前に差し出されたのは。
チラシと、鼻セレブ。

あ……。

たまたまかもしれない。
マスクでメイクなんかほとんど見えないんだから、服装のせいかもしれない。
だけど。
うれしかった。





その時点では、勉強は劇的に進んだわけじゃなかった。
昔の私だったら、「よくわかんない!今度!」そう言ってまた数年経っただろう。
だけど、「可愛くなりたい」という意志が、私を留まらせた。
どれだけ無知だったのかという焦りと共に。

チラシと鼻セレブを受け取った時には、まだなかった意志である。
ゲーム友達のオフ会が頻繁に開かれるようになって……ある日、ついにちょっと、気になる人ができた。
今までだってそういうことはあったけど、それまでは本当に意欲が無かった上に……諸事情で恋愛自体避けてた。
だけど、「気になっちゃってもいいかな」って思った。
「可愛くなりたい」って思った。

メキメキ伸びていく。そりゃもうびっくりするくらいに。知識だけ。技術は追い付かない。
だけど、「可愛くなりたい」という想いは、どんどん強くなっていく。

それってすごく大切なことだと、無知ながらによくわかっていた。

好きになったことへの勉強は得意。
情報収集も得意。ゲームしながらサイドモニターには、美容系YouTuber。
原神しながら、FF14しながら、マイクラしながら、卒論書きながら、とにかく動画を見る。
アットコスメに登録。ドラッグストアやロフトを徘徊。
テスターに触る。いろんなサイトを見る。いろんな人を見る。いろんな口コミを見る。

ついに、恐らく、多分、人並みの知識を得た。
流行ってるコスメ、何故それがいいのか、従来品とどう違うのか。
ドラッグストアやロフトで、何が人気なのか手に取るようにわかる。
叔母に説明できるようになった。
買いませんけどね。持ってませんけどね。使ったこともありませんけどね。

・デジャヴュ アイブロウカラー ビターブラウン

眉マスカラを買った。その大切さも理解できた。
血色感が無さすぎることに気付いた。ピンクの下地が良いよと、地黒のYouTuberさんから学んだ。

・セザンヌ UVウルトラフィットベースEX

ピンクの下地を買ってみた。これ、すき。
でもちょっとラメがきらきらして気になる。
更なる血色感を出すために、チークをちゃんと綺麗に塗ろうと思った。
セザンヌのチーク、ブラシが付いてるのはありがたい。でもこれ、ちょっと粗悪。
百均でチークブラシを買ってみた。
ふわふわ、ぜんぜんちがう。綺麗に付く……。
ちょっと、かわいくなったかも。

・キャンメイク カラーミキシングコンシーラー
・キャンメイク マシュマロフィニッシュパウダー

少しずつ、増えていく。
コンシーラーの比較動画なんか、見ちゃったりして。
大絶賛のパウダー、買っちゃったりして。

・エクセル スキニーリッチシャドウ SR06

プチプラだけど、チョット高いやつ。
動画で、自分に合いそうなもので、良いものを探した。
大成功。これ、すき。
百均で買ったアイシャドウブラシで、綺麗なグラデーションが書けて、喜んじゃったり。

実は学生なのでお金が無い。
けれども、いつの間にか22歳なので、4月から社会人になる。そしたらもっと、好きなもの買えるようになる。
だから今のうちに情報収集……。





これが、今の私。
まつげは、まだ。ビューラーこわい。(バカ)
でも、ビューラー比較の動画みた。
シェーディング、ハイライト、まだ。
知識だけは、めっちゃある。多分。
買うものは、決めてる。

あのさ、メイクってさ、きっと楽しいよね。
皆からしたら、私まだ、片足突っ込んだだけだと思うけど。

自分が綺麗になれるんだもん。
自分のこと好きになれるんだもん。

私、メイクが似合わないかもしれないんだ、肌黒いし。
それでも、自分に合ったメイク、自分に合ったスキンケア見つけて、綺麗に可愛くなりたいんだ。今よりは。
ファッションだってね、センスないわけじゃないんだよ。

これから成長するからさ、みてろよ……干からびた芋女の私!





ところで、リップモンスターの陽炎を手に入れました。(すべてを物語る言葉)

だけど、それ以外の口紅を知らないので、落ちにくいとかわかりません★(すべてを物語る言葉その2)

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