
中学の頃はドストエフスキーやツルゲーネフなどの文学作品がとっても難しかった~。高校の頃はプルーストが難しかった~。短大の頃はユイスマンスが難しいと思った~。
でも社会人になって全然読める!(読めるようになった)と、私はそのとき以来、読んで読めないものはない!と思っていたのでしたが・・・。
ウンベルト・エーコ・・・。「薔薇の名前」で、いつも挫折する場所は同じ・・・。そこから先がどうしても読めないまま10年以上。
最近、彼の「美の歴史」、「醜の歴史」、「芸術の蒐集」は読みました。「薔薇の名前」や「フーコーの振り子」に比べると、写真や画がたくさんのってて絵本のようにスルスル読めます。
しかし、恐ろしい写真も掲載されています。人の首とか(最初はつくりものかと思いました)。
さて「薔薇の名前」ですが、キリスト教や神学、聖書のお内容を理解していた方がもちろん楽しく読めるのですが、なんといっても登場人物が多すぎです。
そして完読した友人たち曰く、「薔薇の名前」とは何か~。
Wikiにもありました。読みましたが何の解決にもなりませんでした。やはり結局はそこに行くのですね。
Il Nome della Rosa(The Name of the Rose)
Wikiで、もっとも単純には、「薔薇の名前」とは登場人物の恋人~なんですけど、ラテン語のベルナールの説教詩の「以前の薔薇は名に留まり、私たちは裸の名を手にする」という厄介な一行がこの物語をさらに難解にしています。

片岡義男の小説、「頬よせてホノルル」に「ラハイナの赤い薔薇」というのがあります。
ラハイナの赤い薔薇 by 片岡義男
http://www.aozora.gr.jp/cards/001506/files/51737_39266.html
・・・(略)・・・
グラヴ・コンパートメントから双眼鏡を出して、ぼくは彼女に言った。
「読書?」
双眼鏡を、ぼくは彼女に手渡した。
「走っている自動車の、バンパー・スティッカーを読むんだよ。ほんとは、LAのフリーウエイを走りながらのほうが面白いのだけれど、ホノルルでも充分に楽しめる」
彼女は、双眼鏡を目にあてた。ぼくがホノルルで読んだバンパー・スティッカーの文句で、いまでも記憶しているひとつは、『これはなんのメッセージもない、ただのバンパー・スティッカーです』というものだ。オレンジ色の地に白い文字で抜いた、鮮やかなバンパー・スティッカーだった。
「読めるわ」
彼女が言った。
「『今日もまた楽園におけるくだらない一日』ですって」
双眼鏡を目にあてたまま、彼女は指さした。
「あの、グリーンのクライスラー」
「あそこの、まっ赤なスポーツ・タイプは?」
彼女は、その車に双眼鏡をむけた。
「『正しい道を走ってますか』というメッセージだわ。宗教的な意味も含ませてあるのかしら」
「きっと、そうだ。最近、そういうのが多いよ」
・・・(略)・・・
マーシディーズ・ベンツのトランクの下端に、『汝イエスを愛するなら、ホーンを鳴らせ』と、スティッカーが貼ってあった。
「『血液は生命。人から人へ、手渡しなさい』というのがあるわ」
「そしてその隣りを見てごらん」
「左隣りかしら」
「そう」
「見えるわ。『人生は至難事』ですって」
かつてLAのフリーウエイを走りながら読んだバンパー・スティッカーのいくつかを、ぼくは思い出した。『回答として我々にあたえられたものがイエス・キリストであるならば、最初になされたそもそもの質問はいったいなにだったのか』というのがあったし、『私はあなたがたを愛しています。いまのとこは、そこまでで勘弁してください。イエス・キリスト』というのもあった。
なんだかこちらの方がお話しやすい。

物語はいつも主人公の運命や縁で展開していきます。縁が因縁といわれるものだった。宿命と命運。この大いなる愛という薔薇。これを運命の薔薇とも呼ぶことができる「グランデ アモーレ」は、ボサノヴァ風に囁くと「オ・グランジ・アモール」となるのですね?
ボサノヴァの名曲の詩をポルトガル語から読み解くという講座もありますが、参加しなかったことが悔やまれます。ヴィニシウス・ヂ・モライス とアントニオ・カルロス・ジョビン の「オ・グランジ・アモール」(大いなる愛)の歌詞はこんな感じ。
kafkaこと楓の訳
何が起ころうとも
いつもその女のために
その人はいる
偽りの愛は死をもたらす
何があろうとも
大いなる愛を勝ち取り
心のなかにいる
原詩はこちら
http://www.letras.com.br/#!tom-jobim/o-grande-amor
オ・グランジ・アモールはボザノヴァやサンバの歌に多いです。
そしてJ.S.バッハのカンタータ第64番「見よ 父なる神の大いなる愛を」があります。
大いなる愛とは無条件の愛、無償の愛となるのでしょうね。
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記事「マリー・アントワネットの香水 芳香ゲルマン水」です。