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ハワイに行きたい。亜熱帯化した高温多湿の日本を脱出して、真っ白な太陽が照りつけるワイキキビーチでのんびりしたい。パームツリーの木陰、ホテルのオープンテラスで、フルーツてんこもりの金魚鉢みたいな大きなグラスにストローを何本も差して、トロピカルカクテルをゴクゴク飲みたい。バンズではさめないダイナミックなハンバーガーに悪戦苦闘しながらむしゃぶりついて、口の周りについたパイナップル混じりのソースを指で無造作に拭きとってなめたい。爽やかなオフショアにそよがれて、西の空が燃えるオレンジに染まるまでビーチでゆったりくつろぎたい。
トムフォードのソレイユブランをつけていると、いつもそう思う。心はオアフ島の白い浜辺へひとっ飛びだ。
ソレイユブラン・オードパルファム。「白い太陽」の意。まばゆい夏の陽射しを思わせる、トム・フォードによる真夏のデイタイム・フレグランス。2016年発売。ディオールのハイヤーエナジーやバーバリーのブリットなどを手掛けたナタリー・グラシア・セット調香による作品。
トム・フォードのプライヴェートブレンド唯一の真っ白なボトル。この白ボトルは通常の黒ボトルよりも中身の液量が見えにくい。照明の光を近くに当てるなどするとやっと見える感じで、チェスの駒からインスパイアされたこのボトルの美しさを上手く引き立てているように思う。これなら使っていくうちに液量が減っても、美しいボトルの外見をずっと楽しめるからだ。
そんな白ボトルからスプレーすると、まず立ち上るのはスッキリした透明感あるスパイシー。ほのかなカルダモンの清涼感と爽やかなベルガモットの香りだ。このトップがとても心地よく、ピンクペッパーの酸味と辛みも感じられて絶妙のブレンドだ。
やがて5分もすると、カルダモンとベルガモットの下からココナッツのクリーミーな香り、エキゾティックなホワイトフラワーの香りがじわじわと出てくる。一番強く感じられるのはイランイランだ。イランイランの香りは低くて濃厚だけれど、ここではココナッツのまろやかなヴェールに包まれているせいか、とても穏やか。さらに似た系統のチュベローズの妖しさ、一段階高いジャスミンの柔らかな香りが出てきて、まさに南の島の楽園を思わせる風合いになってくる。
このミドルはザ・ボディショップから以前出ていたポリネシアン・アイランド・ティアレの香りに似ている。そう思ってつけ比べしてみた。ティアレの方はかなりよくできたタヒチアン・ティアレ風のオードトワレで、現在は廃盤になっているが再販を強く希望したい逸品。何しろ3000円前後でこのトムフォードのソレイユブランに引けをとらない香りを呈している。対するソレイユブランは50mlでその10倍近い価格だ。
つけ比べると、さすがトム・フォードというべきか。かなり好きだったザ・ボディショップのティアレは、エキゾティックな白い花の香りと共にどこか殺虫剤っぽいエアゾル系の匂いが感じられるのに対し、ソレイユブランのココナッツ&イランイランの香りはとてもまろやかで温かみすら感じられて好印象。ティアレの方には少し低音のプルメリア系の花も混じっているよう。対してソレイユブランは、イランイランとチュベローズのふくよかな白い花弁の香りがそこはかとなく煽情的だ。
付けて3時間もすると香りは薄らいでくる。値段が値段なだけに持続時間が短いように感じるが、ソレイユブランは人肌に溶け込こような香り方をするので自分で気付きにくいだけかもしれない。すれちがった人は灼けた肌から香るココナッツノートのふんわりしたミルキーな匂いを本人以上に感じやすいように思う。ラストはほの甘いアンバーとトンカビーン、そしてトップからずっと続くココナッツミルクの白いナッティーな香りをキープしたままドライダウン。
これは真昼の香りと謳っているけれど、実はリゾートホテルの夜の部屋の雰囲気も感じられるセンシュアルさも秘めている。
琥珀色のベッドサイドランプ。カーテンを開け放したラナイ。その向こうに広がるダイヤモンドヘッドの黒い稜線。オレンジ色の星々を思わせる街の夜景、ほの白く浮かび上がったキングサイズベッドのシーツ。そんな情景をも想像させる誘惑の香り。
だからソレイユブランをつけているとハワイに行きたくてたまらなくなる。あのまばゆい日差しと、汗をかかない爽やかな空気が恋しくなる。ビーチウォークの人々の笑顔と、オープンエアーのホテルロビーから見渡せる青い海に心がはやる。きっとソレイユブランは完璧なオフのための香りだ。人目を気にせず、童心にかえって、自然やリゾートで過ごす極上のリラグゼーションのための。
見上げればパームツリーが揺れている。吸い込まれそうな青空にソレイユブランが微笑んでいる。
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