ゲラン / アクア アレゴリア グラナダ サルヴィア(旧) 口コミ

調香師：ティエリー・ワッサー
香調：フルーティシトラス
ヘッド：カシス、ヒノキ、ベルガモット
ハート：ザクロ、ローズ、セージ
ベース：ホワイトムスク、フォーム、パチュリ


アクアアレゴリアシリーズでは、久々の個人的大ヒット。
この夏はずっとこちらに夢中でした。

スペイン南部・アンダルシア地方に位置するグラナダは、かつて不落の王国として、硬い殻に守られたザクロの果実に喩えられた土地。
まばゆい太陽光、力強い大地、豪奢なアルハンブラ宮殿とその庭園の涼やかな噴水や咲き乱れる花々、瑞々しい果物の実り、華やかで麗しいスペイン美女達、そしてそれらをたやすく擁してきらめく青い海。
グラナダの美しいもの全てを閉じ込めて、音楽にすればアグスティン・ララの『Granada』となり、香りにすればこのグラナダサルヴィアとなるのだと思います。

つけた瞬間は甘酸っぱいカシス＆ベルガモット。
ヒノキがあくまでほんのりとスパイスとしてシャキッとキレを添えていることによって、甘ったるく子供っぽいジューシーさには転ばず、瑞々しさのみを際立てることに成功しています。
果汁の滴るような甘酸っぱさは、おおよそ10分程度で力強いミドルに移り変わります。
ザクロの果実を噛みしめた瞬間プチプチプチッと口腔内で弾けるほの苦い甘みと、真紅のフラメンコドレスに身を包んだグラナダの美女のごとく満開のバラとが絡み合い、妖艶に、それでいて軽やかに舞い始めます。

このザクロ＆ローズの華やかな饗宴だけなら、この香りは割とありがちな甘口のフルーティフローラルで終わったのかもしれません。
ところが違う。
無造作に手摘みしたせいで葉が破れたりして強く香りの立ったセージが、バラの花びらに混じってふわふわっとかくれんぼを始めます。
このセージの量が絶妙な塩梅で、何とも言えない洒脱なヒネリを加えています。
「捕まえたと思ったら羽ばたいて逃げていく」ースペインを舞台にしたビゼーのオペラ『カルメン 』のアリア『ハバネラ』の歌詞のごとく、野の鳥のように自由で蠱惑的。

ラストに向かって、ザクロもバラもセージも、ホワイトムスクのスープに煮込まれて溶け合い、ザクロとバラの真紅とホワイトムスクの白とが混ざってピンクに変化します。グラナダの燃えるような夕陽に、ひっそりと忍び寄り始めるフォームとパチュリの夜闇。

私の平均体温は36度前後で、シトラス・フルーティは消えやすく（ベリー系は他フルーツに比べてまだ残りが良い方）、ウッディ系が特に立ちやすい体質。
天候に左右される印象はほとんどなく、雨の日でも気分だけは灼熱のアンダルシアでいられました(笑)。
6〜8月にかけてしか使用しませんでしたが、今年は暑くなるのが遅かったため、20度前後〜35度前後で香り立ちがほぼ左右されないことは実証済みです。
また、比較的どんな状況下でも、最低6時間程度はほんのりと香っている印象。
EDTの割に持ちはかなり良いです（まぁゲランフレグランス全般に言えることではありますが）。

2014〜2015年頃（かな？）から一昨年辺りまでは、アクアアレゴリア＝水の寓話を意味するにもかかわらず、妙に重苦しかったり、妙にアクアティックだったりして、（特に夏場に）つけてしまえば漏れなく酔う仕上がりのものが非常に多く……
正直、もうアレゴリアはハーバフレスカとマンダリンバジリックとパンプルリューヌさえディスコンにならなければいいやと新作に期待することは諦めてすらいました。
しかし2019年のジンジャーピカンテ・ココナッツフィズで、購入にまでは至らなかったものの「あれ？結構良いかも……？」と感じ、今年は遂に見事陥落させられました。
アレゴリアのもうひとつの新作・オランジェソレイヤ、ラールエラマティエールの新作・イリストレフィエ、年末恒例シャリマー派生のフィルトルドゥパルファンと、本年のワッサー氏のクリエイトは平均点がとても高いと感じます。
彼は多作なのである程度の波は勿論仕方ないですが、来年以降もこんな感じなら嬉しい悲鳴です。

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