ディオール / エスカル ア ポルトフィーノ (オードゥ トワレ) 口コミ

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doggyhonzawaさん
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4購入品

2015/12/25 00:14:35

人生という旅は、思いのほか短いものかも知れない。この年になると、無意識にいろんな「残り回数」を数えてしまう。あと何回、賞与をもらえるだろう?あと何回、燃え盛るような夏を迎えられるだろう?そして、あと何回、美しい外国の風景をこの目で見られるだろう?

そして、そんなことを考えるたび、ふと思うのだ。「ポルトフィーノに行くことはないかもな」と。

イタリアにある小さな港町、ポルトフィーノ。かつてさびれた寒村であったというその地は、今や世界中のセレブがこぞって大型クルーザーで海から乗りつけ、パパラッチの目を逃れて自由を謳歌できる、特別な滞在スポットとなっている。

小さな入り江は三方が山に囲まれ、地上交通がほとんど機能しておらず、海からだけ出入りできる点で、プライベートエリアたる条件が備わっている。しかも、「イタリアの宝石箱」と呼ばれるほど、景色は勇壮で美しい。トム・フォードの「ネロリ・ポルトフィーノ」でも書いたが、外海と湾のコントラストの美しさに、円弧状に張り出した色とりどりの建物の艶やかさが花を添えた日帰り観光の名所だ。湾内にはセレブの別荘が多く、一般客が泊まれるホテルが少ないため、プライベートでのんびりしたいセレブたちを煩わす喧騒も、夜にはほとんどないという。

そんなポルトフィーノをテーマにした香水の1つが、ディオールの「エスカル・ア・ポルトフィーノ」だ。「ポルトフィーノへの寄港」と題されたこの作品は、ディオール専属調香師であるフランソワ・ドゥマシーの、爽やかで軽い本物のサマーフレグランスを作りたいという思いから誕生した、“旅”がコンセプトの香りのクルーズ コレクション「エスカル・ドゥ・ディオール」シリーズの第一弾として、2008年に発売された。日本では限定発売だ。

エスカル・ア・ポルトフィーノは、4711系の伝統的なオーデコロンの系統を踏みつつも、かなりレモン系シトラスとウッディが強めな作品だ。

トップは、強烈なレモンとベルガモットの爽やかさから始まる。特にレモンの酸味が心地よく、ふわふわと鼻をくすぐり、唾液が出そうなほどだ。同時に、杏仁豆腐のツンとした独特の香り、アーモンドの風味がその周囲に広がる。これは一種の苦み成分とコクのような感じ。さらに周囲にネロリの甘さと柔らかさが漂う。ディオール公式で確認すると、レモンっぽく感じるのは、セドラのようだ。セドラはどちらかというとレモンよりウォータリーな雰囲気があると感じているが、ここではそれほどではない。

3分もすると、下から何かシガーのような、ほんのりスモーキーな甘さが漂ってくる。何かはよく分からないが、このウッディな雰囲気の暗い甘さは、この香水の大きな特徴だ。それはやがて、苦みを強く押し出してくるようになる。クレジットを見ると、ミドルはビターアーモンドとオレンジフラワーのようだが、シダー、ヒノキ、ジュニパーベリーといった針葉樹系のウッディベースがこの香水のボディを太くして、シトラスをマニッシュな雰囲気にしていると思う。このへんが好き嫌いの分かれるところかと。

やがて30分もすると香り立ちはかなり柔らかくなる。そして、あいまいなウッディ&ムスクのまま静かに消え入る様子。ここのところ、ヴァニラや香ばしいウッディをつけることが多かったので、とても淡泊に感じるラスト。針葉樹系のやや冷たいウッディなので、やはり夏向きかなとは思う。大体2時間くらいで消えていく。

全体的に見ると、シトラスの酸味にアーモンドノートの苦みとコクをきかせ、よりシトラスっぽい雰囲気を作りつつ、その下で涼し気なウッディを配した雰囲気。ネロリは思ったほど主張してこず、どちらかというと、レモン系の爽やかさ、スッキリ感を表現した印象だ。プチグレンの青臭さも、そうした雰囲気作りに興を添えていると思う。

クリスチャン・ディオールが愛したというポルトフィーノ。彼はそこを訪れ、どれほど心をのびやかにし、瞳を輝かせたのだろう。そんなことを想像するのはとても楽しい作業だ。このエスカル・ア・ポルトフィーノは、そんなディオール自身の思い出の旅を二次的になぞらえることができる香りだ。

人生は思ったより短いものかもしれない。なぜなら、まだまだたくさん見たい映画、読みたい本、行ってみたい場所、試したい香りがあり過ぎて、知らず知らず時を忘れてしまうからだ。世界には、美しい物があふれている。それらを追い続けているだけで、あっという間に時は後ろへ流れて消えていく。さながら船の引き波のように。

いつかポルトフィーノの小さな港へ、自分も訪れることがあるだろうか。船のノットを落とし、さらさらとした優しい引き波をたてて。デッキの上で、シトラスとアーモンドの優しい風に吹かれて。

  • ポルトフィーノへ寄港 by doggyhonzawaさん
  • エスカル・ア・ポルトフィーノ by doggyhonzawaさん
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