ミルコ ブッフィーニ フィレンツェ(MIRKO BUFFINI FIRENZE) / オードパルファム HAIKU ハイク 口コミ

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doggyhonzawaさん
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2017/7/29 01:56:28

「古池や 蛙飛び込む 水の音」。言わずと知れた芭蕉の句。その俳句にインスパイアされてできたのが、イタリアの新進気鋭のメゾン、ミルコ・ブッフィーニのオーデ・パルファン、「HAIKU」だ。ブランドの作品中、最も人気の高い香りの一つとされるこのフレグランスの魅力とは一体なんだろうか?

ミルコ・ブッフィーニ・フィレンツェは、ピッティ・ウォモ(メンズブランドの大展示会)で2013年に華々しくデビューしたイタリアの高級香水メゾン。日本フレグランス協会の方のお話によると、全作品ともミルコ・ブッティーニが惚れこんだ3人の調香師に依頼して作っているようだ。その一人は日本人女性調香師だそうで、このHAIKUはおそらくその方の作品ではないかとのこと。2015年に日本フレグランス協会の主催する「フレグランス・オブ・ザ・イヤー ラグジュアリー・メンズ」部門を受賞した同ブランドの作品「MU/無」も、日本人が好みそうな作品だったので、両作品ともそうかも知れない。ちなみにいずれも調香師名は明らかにされていないようだ。

ミルコ・ブッフィーニのフレグランスの特徴は、原材料のほとんどを自然の物から抽出し、芳醇なウィスキーのように75日間寝かせたエッセンスをブレンドするというもの。この製法が実際にどのように香料の良さを引き立てるのかは分からないが、小さなファクトリーで丁寧に1本1本作られた香りは、これまでのイタリアのメンズフレグランスにありがちな陽気なシトラス、男っぽいフゼアとは一線を画しているように思う。中でもHAIKUは、これまでのイタリア系フレグランスには見られなかったタイプだと思う。では、その香りの特徴はというと。

かなりメンズ系なデザインのスクウェアボトルからHAIKUをプッシュする。すぐに感じられるのは、クリーミーなヴァニラの香り、そして乾いたお香のようなウッディ系アロマ。そして奥にささやかなグリーン系の花も香り、それは少しほこりっぽい風に連れられて、パウダリーに傾いたムスクと交わる。このブレンドの妙にとても「和」の雰囲気を感じる。それがHAIKUの香りだ。シンプルでとても静か。はかなげで優しく丸い。そんな香りが時間の経過とともにゆっくり薄らいでいく。

付けたてこそヴァニラの甘さとふんわりした丸みが際立つけれど、次第に草や木を淡くスモークしたようなインセンス香に収束していくイメージ。かつての3段階ピラミッド的な変化ではなく、トップの段階から、通常ミドルかラストに香る香料が主張する印象。早めにヴァニラが出て、その後に木や樹脂の香り、ムスクなどがじんわりフェードアウトする展開。持続時間は長めで、大体5〜6時間。その後もうっすらとヴァニラとホワイトムスクが香り続ける。

一言で言えば、ヴァニラ+ドライなお香といった感じだけれど、お香のような香りは、ホワイトムスクのやや冷たい感じと、粉っぽい雰囲気のアンバーのミックスのようだ。ヴァニラの甘さは控えめで繊細。ちょっとした物音にさえ、空気の変化を感じるかのような静謐でストイックな香り立ちだと思う。男女問わず楽しめる「和のモダン」といった印象。

このようなヴァニラ系ともいうべき香りは秋〜冬にかけて人気が高い傾向にあるが、HAIKUに関しては、季節に依らず夕方からナイトタイムにかけて使いやすい部類だと思う。それは、どこか暗く穏やかな水面を思わせるスッキリした感じがあるからだ。漆黒の闇。濁りが入って月光を鈍く反射させた古池のほとり。その静寂のような。

古池や 蛙飛びこむ 水の音

たった17音のこの短い文学が見せる世界は無限、そして多様だ。蛙は春の季語。この句に表された感動は切れ字の「や」からするに、古池の静寂に心を動かされたものと推察される。では春の静寂の時間とはいつだったのか?諸説あるものの、それは夜ではなかったかとする評論家が多い。夜であったからこそ、詠み人の聴覚もまた研ぎ澄まされていたのだろう。蛙が飛び込んだ音に驚かされた不安は、夜の闇の中、心にも波紋を投げかけた。あの音は何だろう?波は同心円状に広がりながら、また穏やかに収束もしてゆく。きっと大きな蛙が飛び込んだのだろう。しかし、その鳴き声はしない。開け放した窓の外、暗い柳の葉が揺れる。その下にたたずむのは古池、それは動かぬ水、忘れ去られたもの、死の象徴。黒く動かぬ死へ、生あるものが飛び込んだことで新たな命が吹き込まれたように感じられた。その対比。そのわびさび。死生観。まさに芭蕉が傾倒した禅の思想を表したかのような俳句。

HAIKUの香りがもつ白いまろやかさ、それでいてよどんだような暗さに包まれていると、そんなそこはかとないよしなし事に思いを巡らせてしまうのだ。窓の外にぬるびた気配が漂う、無言の夜の岸辺で。

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