ペンハリガン / ブラステッドブルーム 口コミ

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doggyhonzawaさん
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4購入品

2018/8/25 17:42:02

ブラステッドブルーム、直訳「吹き飛ばされた花」。ブラストは爆破という意味をもつから、それほどの強風に飛ばされた花々という名を冠したフレグランス。

ブラステッドブルーム・オードパルファムは、2015年にブラステッドヒースと共にリリースされたペアフレグランスだ。ブラステッドヒースがメンズ用で透明ボトルにライトブルーのリボン、こちらのブルームはすりガラスボトルでライムグリーンのリボンという対比。どちらもペンハリガンには珍しくボトルに直接印字され、透明な液体色をさらに強調するかのような仕様となっている。50mlボトルで約1.6万円の定価だが、ネットでは8千円前後で販売しているショップも見られる。

「吹き飛ばされた花」「吹き飛ばされたヒース」とくれば、英国グレートブリテン島の荒涼とした大地を思い浮かべる人もいるだろう。世界三大悲劇の一つとも称されたエミリー・ブロンテの「嵐が丘」の舞台が、風の強いヒースの丘にそびえる一軒の古い屋敷だった。ただし「嵐が丘」の舞台は島の中部、ヨークシャー地方であるに対し、こちらは島の北側、スコットランド北部に広がる荒れ地と空と大西洋の風景からインスパイアされた作品のよう。

夏でも涼しい風が海から強く吹きつける西岸海洋性気候の大地。断崖絶壁が続き、植物や作物が育ちにくい荒野(ヒース・ムーア)がどこまでも続く。それでも真夏になると、ヒースの花が咲き乱れ、荒れ地を一面赤紫色に染めるという。吹きすさぶ潮風、揺れるヒースの花々、大地と海を照らす北大西洋の冷たい日の光。そんなイメージが調香師アルベルト・モリヤスに託され、このEDPは誕生した。

ブラステッドブルームをスプレーする。一瞬、ベチバーのような土っぽいアーシーな香りが鼻をくすぐる。すぐさま、グリーンでアクアティックな風が吹いてくる。かなり人工香料が強いオープニング。柔らかなグリーンノートは自然な甘さを伴い、苦みなどはない。また、マリンノートも瓜っぽさはなく、透明感が感じられて柔らかい。荒々しい風というよりも、穏やかな春のそよ風といった印象。クレジットを見ると、ワイルドベリーのフルーティーな甘さが出ているようだ。このフルーティーが全体の印象を柔らかく丸くしているように思う。

5分後、わずかに清涼感あるローズ香が時折感じられるようになる。グリーン&アクアティックな香料は続いていて、その中から不意にやや甘めのフローラルが出ているような程度。ベリーの甘さにほんのり薔薇の香りが混じるかなというくらい。全体の印象はマリンノートが支配しているように思う。それでも今まであまり感じたことのない涼しげなマリンだ。さすが人工香料づかいのプロフェッショナル、アルベルト・モリヤス。潮風に感じる海の冷たい雰囲気、風になびくほのかなグリーン香、そして冷たいフローラルをバランスよくミックスして、人工香料ながら自然っぽく仕上げている。

一般に香水は、天然の花や植物等から抽出した天然香料と、石油等からケミカルで作られた人工香料を巧みに調合して作られているが、天然香料が200前後であるのに対し、人が作った香料は軽く6000種を超えると言われている。抽出に手間暇がかかり、コストが割高になる上に安定供給が難しい天然香料は、近年アレルゲンの問題も含めて本当に使いにくい時代になっている。そのうえ、天然香料だけでは香りがとても地味になり、香水のもつ芸術的な華やかさが出しにくい。つまり、優秀な調香師ほど人工香料を魔法のように使いこなす技と知見を有しているものだ。

ブラステッドブルームはグリーン系とマリン系を絶妙にブレンドしたEDP。調香師というよりも、香料会社フィルメニッヒの社員として優秀なモリヤス氏は、この作品でも自社の新香料を惜しみなく投入して、心地よいグリーン&マリンノートの創造に挑んでいる。それにより他の調香師に対して自社の調合香料をアピールしてもいるわけだ。草と海と花の香り、そしてそれらを届ける強い風、それこそがこのクリエイションで彼が表現したかったブラストなのだろう。

系統的にはリラグゼーション系の香り。オフに心を解放するために使いたい香りだ。瓜系が苦手な自分でも使いやすく感じるので、見かけたらぜひ付けて試してみてほしい。海や山、自然の中で過ごすひとときにこんなナチュラルな香りを連れていけば、ひと夏の思い出は香りと共に、より一層深く心に刻まれることだろう。

冷たい海風が断崖をこえて、ヒースの丘をわたってゆく。岩に苔むした荒れ地にひときわ強く風が吹きすさぶ。そのとき風に舞い上がる赤紫の花びら、ブラステッドブルーム。

短い夏が終わる。ヒース・ムーアの丘にただ強く風が吹いている。

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