トム フォード ビューティ / ヴェール ボエム オード パルファム スプレィ 口コミ

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doggyhonzawaさん
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2019/9/21 19:06:50

季節の変わり目は、なぜか心がトーンダウンしやすいもの。トム・フォードのヴェール・ボエムは、そんなときに静かに心に寄り添ってくれそうなフローラル・グリーンのオーデパルファムだ。

ヴェールボエム、直訳すると「緑のボヘミアン」。ボヘミアンと言えば、昨今クイーンブームリバイバルでよく聞いたワードだが、これは北インドからヨーロッパに向かって移動生活をしている者たちを若干揶揄した言い方だ。そういえば映画でも根底に人種のテーマが流れていた。

ヴェールボエムは、2016年にプライベートブレンドシリーズ(PB)の新ラインとして登場したレ・エクストレ・ヴェール・コレクションのうちの1本。このシリーズはこれまでPBになかったグリーン系の香りのラインナップが特徴。調香師はディオールのハイヤーやPBのタバコヴァニラなどを手がけたオリヴィエ・ギロチン。では、緑のボヘミアンと題した作品、いったいどんな香りだろうか?

ヴェールボエムをスプレーする。その瞬間感じられるのは、ほのかに甘くジューシーなマンダリンの香りだ。だが、5秒もせずに強烈なグリーンノートが広がってくる。「お、ガルバナムだ」と分かるほどの青臭いグリーン。シャネルの19番やクリスタルのイントロを思わせる香り。

ほどなく、クリーミーなファセットがグリーンノートの周りを包んで広がってくる。ガルバナムの青さはすぐに消え、人工的なグリーンノートが一直線に伸びてくるイメージ。あまり鼻を近づけてずっと嗅いでいると少し頭がクラクラしてくるような香りだ。このミドルは、どこか車用芳香剤やガラス用洗剤の匂いを彷彿させるような香りで、正直最初はあまり好きになれなかった。理由は明白。グリーンノートの名香に必ず含まれているオークモスのキリッとした苦味がないせいだ。

天然のオークモスは香料規制の波を受けてほぼ使えなくなった香料だが、香り全体のエッジを引き締め、ビターグリーン感と森の香りを彷彿させるにはなくてはならない香料だった。19番にもクリスタルにもかなり入っており、ガルバナムのグリーンとの相性はすばらしいものがある。だが、ヴェールボエムはオークモスを使えない。ではどうしたか?だったら最初からまろやかなグリーンのシングルノートを出す。それがこの作品の提案なのだろう。

ヴェールボエムのグリーンにかかるクリーミーな香り、その正体は同じくらいのの出力で出ているホワイトフローラルの香りだ。構成を見ると、マグノリア、ハニーサックル、ヒヤシンスあたりのようだ。確かにジャスミンの香りを軽く甘く低音で響かせたような白い花の香りがずっとグリーンとハーモニーを奏でている。しっとりとしていて落ち着いたホワイトフローラルだ。そしてこのミドルのグリーン&フローラルがそのまま減衰していく。持続時間は体温高めの自分の肌で4〜5時間ほど。

全体的に見ると、トップでマンダリンがスッと出た以外は香りが変わらず、青くてじんわりしたグリーンとやや低めの白いフローラルがずっと同じ音量で流れていく展開。単品使いよりもやはり重ね付け用アイテムとしての使用がベターかと。おすすめはジャスミンルージュやチャンパカとのレイヤー。白いフローラルが強調されてグリーンがいいアクセントになる。季節の変わりめなどに他の香りにのせて使うといい。

季節の変わり目、それは気温と湿度、気圧が刻々と変化する狭間のときだ。暑さに慣れた身体が不意に肌寒さを覚え、虫の声も秋のそれに変わったことを知る。空にわきあがっていた入道雲が、きれぎれのいわし雲に変わったのを見て、人は季節の移ろいに気づく。日々変わりゆくこの季節の合間は、恒常性を維持しようとする人間にとって、身体を慣れさせるのにとても辛い「魔の刻」だ。だから心にも知らず知らず澱がたまっていくのだろう。何かと何かの間に挟まってどっちつかずのとき、人の心は特に疲れやすくなるものだ。(←部長と部下の間とか、夫と子どもの間とかね)

故郷を捨て、欧州への道をひたすら旅するボヘミアンたち。野原でキャンプし、音楽を奏で、国から国へ渡り歩く流浪の民の彼らもまた、常に狭間にいる人たちかもしれない。青い空へと続く緑の草原の一本道。行くか戻るかとどまるか。自由な生活であるがゆえに、彼らも常に落ちそうな心と戦っている日々であろうことは想像に難くない。

ボヘミアンの緑と名付けられたこの作品も、言い換えればシトラスとフローラルの狭間にあるグリーンな香りだ。だから季節の合間のこの時期、この香りはどちらにも振り切れずうつむいた心に、やさしい草原の風を吹かせるのだろう。

ヴェールボエム。それは道なき道をゆく者たちの自由な緑の調べ。未知の世界を夢見て今を戦う者に寄り添う、グリーンとフローラルの柔らかなユニゾン。

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