悲しみという重々しくも美しい名前をつけるのを、わたしはためらう。」
一瞬にして引き込まれるこのワンセンテンス。
台風が心配な日々ですが、待ちに待った梅雨明けも、もうすぐです。
みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
そう、本日ご紹介いたしますのは、20世紀仏文学界が生んだ少女小説の聖典、
「悲しみよ こんにちは」(フランソワーズ・サガン著 河野万里子 訳/新潮社)

父と2人暮らしの少女セシル。
南仏の別荘で父レイモンと若い愛人エルザの3人で幸せに暮らしていました。
彼女は海辺で学生フィリップと出会い、恋に落ちてゆきます。
そんなある日、現れた中年女性アンヌが父レイモンと親密になり、結婚を決めて我が物顔にはびこりだします。
蚊帳の外に追い出されたセシルとエルザは、ある計画を思い立ち……。
美しい少女の残酷な所業を描くストーリーではありますが、
登場人物の洒脱な居方、優雅なライフスタイルなどがとてもファッショナブルで、
読んでいて、とても豊かな気持ちになれるのです。
また、わたしが個人的にとても好きなシーンは…
朝食に、オレンジとコーヒーのみを、交互に口にするセシルの描写です。
若干17歳の少女にして、なんと大人びた仕草。
まさに、当時裕福なフランスのハイティーンであった著者の等身大であり、
その後社会現象となったサガン・スタイルの象徴であると思います。
甘いだけではなく、どこかビターな小説を、今年の夏はいかがでしょうか。
コメント(0件)
※ログインすると、コメント投稿や編集ができます